登場人物一覧た行

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剣鉄也

生年月日 昭和31年7月16日
血液型   不明
身長    180p
体重    68s

昭和31年7月16日出生。父母は鉄也が物心つく前に死んだということである。断片的に散見される資料群を紡ぎ合わせてみて現在のところ考えられるのは、鉄也の父は、いわゆる日給制の労働者で、各地を流れ歩いていたのではないかと考えられる。そんな生活の中で母は病死し、父は貨物船の物資の運搬(人夫)として朝鮮半島に赴いたところを北朝鮮に攻撃を受けて死亡したというところではないだろうか。
両親の死後は私設の孤児院に入っていた。孤児院では仲間と仲良く過ごしていたらしいが、親子連れが前を通ると理由もなく喧嘩をしたこともあったそうである。当時から運動神経が抜群に優れていたそうで、それに目をつけた兜剣造に、昭和38年5月5日引き取られる。剣造は来たるべき危難に際して怪物マシーン・グレートマジンガーを設計しており、その操縦者に鉄也を選んだのだ。グレートマジンガーを乗りこなすには宇宙飛行士以上の技量が要求される。伊豆沖の孤島・明神島で鉄也は剣造に、来る日も来る日も過酷な特訓を受けていた。しかし、特訓の傍ら小学校にはきちんと通っていたということである。
昭和39年の春先のころと思われるエピソード。鉄也の周囲ではペットを飼うことが流行っていたそうである。鉄也はその強さに憧れ、鷹を飼っていた。しかし、その鷹が友達の三郎を襲い失明させてしまい、鉄也は責任を感じて自殺をしようとまでしたことがあったらしい。時が流れるにつれそのつらい記憶を鉄也は封印してしまうが、その事件は幼い鉄也に心理的外傷を与えたようで、以後鉄也は春になると訳のわからぬ頭痛に悩まされることがあったという。また、鬼のような特訓を課す剣造を心の底から憎んで、顔も知らない父母の絵を描いて自分を慰めていたと後に述懐している。厳しい特訓はしかし、鉄也を孤児という辛い境遇から忘れさせていった。あれほど憎かった剣造をやがて父とも思えるようになり、昭和43年、サポートロボの操縦者として炎ジュンがやはり孤児院から引き取られてくると、同じ境遇でもある二人は兄妹のようにして育っていった。また、小学校高学年ころか中学生頃のエピソードとして、学校の女性教師に憬れていたとか。その先生が結婚して退職した時にはこの世の終わりかというぐらいにショックだったと語っている。
昭和44年には科学要塞研究所が着工が開始されている。中学を卒業すると高校へは進まなかったが、剣造のもとで勉学を修め大学生並みの学力を有していたという。特に得意は科学である。しかし、昭和46・7年の頃と思われるが光子力学の勉強に嫌気が差して、流石に剣造にたてついたこともあったという。その時剣造ははじめて自分の体の秘密を鉄也に明かす。剣造がサイボーグであると知って驚愕する鉄也だったが、剣造の平和にかける強靭な意志に感銘を受けて立派なパイロットになることを誓う。戦士・剣鉄也の誕生の日である。
特訓は日に四時間、お小遣いはひと月千円であるとか。ねずみとにんじんが苦手だという。
昭和47年12月、ドクターヘルの世界征服戦争が勃発する。しかしまだ態勢が整わないことと、ミケーネ帝国の侵攻が間近に迫っていることを勘案して、兜剣造はドクターヘルとの死闘をマジンガーZに任せ情勢を見守ることとした。昭和48年には科学要塞研究所が完成して、剣造以下鉄也・ジュンたちも科学要塞研究所に移り住むようになる。そして遂に昭和49年6月24日、グレートマジンガーが完成する。同6月30日には鉄也によりグレートの試運転が行われる。しかし、戦況はミケーネの遣いと思われるゴーゴン大公の参戦により激化していた。そして、機は熟したと判断した暗黒大将軍は7月24日、全世界にむけ戦闘獣を派遣して世界を大混乱に陥れた。緒戦はなんとかこれを凌ぐマジンガーZであったが、劣勢は覆うべくもない。そして7月25日、獣魔将軍率いる第2波の攻撃を前に死を決してマジンガーZは立ち向かうが、どんどん追い詰められてゆく。その惨状を前に遂に兜剣造は英断を下す! 剣鉄也にむけ、グレートマジンガー出陣の命が下る!! 勇躍して戦場に赴く鉄也。その騎虎の勢は止まる所を知らず、瞬く間にミケーネ戦闘獣を平らげる。そしてマジンガーZとの協力により獣魔将軍をも討ち取ってグレートはその出現と同じく、疾風のように去っていった。一旦は矛を収めて静観を決め込んだミケーネを前に、グレートもまた事の成り行きを見守る。四つ巴のなか、マジンガーZとドクターヘルは最後の決戦を展開して、甲児はついにヘルを討ち果たすのだった。しかしその傷痕は大きく、マジンガーZも兜甲児も満身創痍の辛勝だった。マジンガーZが疲れ果てるのを待ち構えていたミケーネ帝国は、昭和49年9月1日時至れりと戦闘獣グラトニオスとビラニアスを派遣し、マジンガーZを完膚なきまでに敗北せしむる。しかし敵が本格的に地上侵攻に乗り出したことを知った剣造もまた、今こそ自分たちが立ち上がる時だと断じ鉄也にマジンガーZ救出を命ずる。両戦闘獣を難なく屠るグレート。そして鉄也は甲児救出を果たし、科学要塞研究所へと連れ帰る。休養を兼ねて甲児がアメリカに留学すると、鉄也は甲児の意志を継いで地上防衛の任に就くこととなった。
一方、地上征服の野望の前に突如立ちはだかったグレートマジンガーの秘密を突き止めるべく、暗黒大将軍率いるミケーネ帝国は様々に諜報を繰り広げる。折から科学要塞研究所に引き取られた兜シローを囮に、研究所の所在地を突き止めようとのゴーゴン大公の企みに危機突破のため昭和49年9月22日炎ジュンによるビューナスAが初出陣を果たす。また、兜甲児がアメリカに行って気落ちしていたボスたちも、奮起一転し科学要塞研究所近くの漁港の廃ドックに本拠を構え、鉄也を出し抜こうと張り合うようになる。
地上制覇にはグレートマジンガーと科学要塞研究所が最大の障壁と知ったミケーネ帝国は、グレートに狙いをつけて執拗に攻撃を仕掛けてくる。しかし、科学要塞研究所側も着々と戦力強化を果たしてゆく。昭和49年10月27日、アメリカより招かれた飛田博士の考案によりドリルプレッシャーパンチが完成する。また、支援ロボット・ビューナスAの強化策として11月より、弓教授の助力を得てビューナススクランダーの開発が進められる。一方、配下の将軍たちの不甲斐なさに憤慨した暗黒大将軍は自ら出撃し、ミケロスごと科学要塞研究所に体当たりを仕掛ける。その大激戦の中、飛田博士は戦死する。12月1日のことである。新たな闘志に燃える鉄也は、ミケーネの挑戦の数々を払い除けてゆく。鉄也の戦闘の特徴としては、着実に敵の戦闘力を殺いで後敵の止めを刺すというように、例え周囲からは一見無茶に見えようとも結果的には絶えず己の身を最も安全な位置に置くところにある。兵法に言う「見切り」である。彼我の戦力均衡を見極め、自己の戦闘力を可能な限り保持して敵の戦闘能力を自己の戦闘能力より減退させた上で一気に勝負をつけるといったところであろうか。但しここで、本来戦闘のプロであるならば危険を冒して僥倖を望むのは失格であると言えるのだが、しかし、古今の軍隊同士の戦争とは違い、兵士のみならず一般人をも巻き込む皆殺し戦争に於いては退いて後図を計るという戦い方はグレートには許されなかったと言える。鉄也が時として捨身の戦法に出るのも、退く事が原則的には許されないグレートの戦いにおいて、防御不可能な場合におけるそれが実は最も身の保全を守る法だからである。自己の戦闘力を減殺されることはそれだけ勝利への確率が減ることに他ならないからだ。グレートはその戦闘力に加えて、鉄也の「決闘者」としての能力に大いに与ったと言って良いだろう。そのグレートの鬼神の如き強さに、遂にミケーネ闇の帝王は前線基地の建設を暗黒大将軍とアルゴス長官に指令する。暗黒大将軍とアルゴス長官は、前線基地建設の司令官にゴーゴン大公を任命する。ドクターヘル並びにマジンガーZを倒し、科学要塞研究所発見を果たしたゴーゴン大公の手腕に期待してのことだった。陽動作戦を展開し、戦闘獣を差し向けるゴーゴン大公。まんまと引っ掛った科学要塞研究所側は、ゴーゴンに基地建設を許してしまう。しかしその陽動作戦の中、ゴーゴン大公は戦闘獣ダンダロスを庇うためグレートのサンダーブレークを全身に受け瀕死で火山島に還り着き、完成なった火山島基地で闇の帝王より火山島基地司令の辞令を受け、栄光の中に死去する・・・・・・・・。時に昭和50年2月2日、二代にわたる怨敵の死に流石に鉄也も感慨を深めた。だが、それで手をこまねいているミケーネ帝国ではなかった。新たな火山島前線基地の司令官としてヤヌス侯爵が赴任する。指令系統の統一されたミケーネの猛攻は凄まじい。その対抗策として昭和50年2月23日、待望のビューナススクランダーが完成する。また、シローの専用ロボット・ロボットジュニアも完成し、戦いに華を添える。科学要塞研究所自体にも、新兵器・サンダービームロケット砲が取り付けられ、ミケロスに大打撃を与える。数々の敗報に怒り心頭の暗黒大将軍は、不退転の決意を示し科学要塞研究所に総攻撃を仕掛けてきた。真っ先にサンダービームロケット砲を、そしてグレートマジンガーを戦闘不能に陥れる暗黒大将軍。科学要塞研究所明渡しを要求する暗黒大将軍の前に遂に屈しようとする兜剣造だが、危機一髪のところを鉄也の機転で形勢は逆転する。戦闘獣バニガンを葬るグレート。が、戦闘獣ダンザニアの攻撃にグレートは大打撃を受けるのだった。チャンス到来と暗黒大将軍は自らグレートと決着をつけるべく出撃した!! 一騎打ちとなり数十合となく刃を交える両雄。腕を、足を破壊されそれぞれに激闘を繰り広げる中、遂に辛くも鉄也は暗黒大将軍を打ち倒すのだった。昭和50年4月6日。敵ながら勇将の死を心から鉄也は悼む。そして、大将軍を欠いたミケーネ帝国は奮起して、グレートを苦しめるものの、グレートは更なる新兵器・ニーインパルスキックにバックスピンキックを携えて危機突破をしてきた。そのグレートの強さに手を焼いたヤヌス侯爵は鉄也暗殺を目論んで、小型戦闘獣キャットルー軍団を放ち鉄也を切り切りまいさせる。しかし、所詮はグレートマジンガーの前には歯が立たず、闇の帝王は、七大軍団を統べる暗黒大将軍の後釜の必要を痛切に感じとった。そして、この日のためにと回収していたドクターヘルの死体を蘇生させ、すなわち地獄大元帥として軍団の総司令官として昭和50年5月11日着任させるのだった。兜一族と怨敵マジンガー打倒に燃える地獄大元帥の怨念は凄まじかった。その卑劣な作戦に科学要塞研究所側は追い詰められてゆく。また、ドクターヘルが甦ったことを聞きつけた兜甲児は密かに日本へ帰国を果たし、鉄也にヘルのデータやその戦法の特徴、戦闘指南を行う。そして鉄也は一進一退の接戦の中万能要塞ミケロスを破壊するのだが、すぐに地獄大元帥は万能要塞ミケロスに代わる要塞・無敵戦車デモニカを完成させて実戦投入する。その地獄大元帥の実力に押され焦りを生じたミケーネ諜報軍は、独自にグレート打倒の策を展開してくるが、負傷を押して出撃してきた鉄也の前にヤヌスは徐々に追い詰められ、ついに火山島基地をも失った。続けてグレート強化計画のグレートブースターが完成。鳥類将軍バーダラを討ち取る。グレートの底力を認めた地獄大元帥は各個撃破作戦を展開、グレートを、ビューナスをそして科学要塞研究所を分断して研究所転覆寸前まで追い詰めた。その危機に弓教授は科学要塞研究所と合流し、アメリカの兜甲児を呼び戻す。参戦したマジンガーZの活躍によりデモニカを追い払うことのできた科学要塞研究所は一息つく。そして甲児帰国歓迎の席で剣造と甲児は父子の対面を果たした。その慶事に喜びつつも、己の身には何年経っても巡り会うべき肉親のないことを鉄也は悲しむ。なんとか共闘を果たす鉄也ではあったが、その心底では二人の距離は徐々に広がっていったのだった。暖かな家庭からはじき出されると感じた鉄也は戦いで自分の存在価値を示そうと躍起になり、なにかと甲児に反発する。それを受けて甲児も鉄也に対し敵愾心を剥き出しにするに至っていったのだった。最早チームワークは無きに等しかった。二人の仲が巧くいっていない事を知った地獄大元帥は、歪んだライバルたちの間に割って入るように戦闘を仕掛けた。二人を分断し、光子力研究所を攻撃しマジンガーZを釘付けにする。その危機に、シローに、剣造に諭され己の狭量を鉄也は恥じ入るのだった。甲児救出のために出撃する鉄也。しかし時はすでに失していた。戦闘獣バルカニアに奇襲され、鉄也は身に重傷を負う。そして苦しい戦いを強いられるのだった。最早戦力を完全に分断され、辛くもバルカニアを倒すグレートだったが、その爆風に巻き込まれ鉄也は意識を失ってしまう。好機到来と地獄大元帥はグレートに止めを刺すべくデモニカをグレートに差し向けてきた。その鉄也の危機に、剣造は研究所の管制室ごと出撃して体当たりを敢行した。父の危難を聞きつけ戦闘獣を葬って駆けつける甲児の腕の中、剣造は静かに息を引き取る。鉄也との和解を甲児に託して・・・・・・・・。父の最期の願いに甲児は宿怨を解く。デモニカ追討に回る甲児。しかし鉄也は重傷の身で、もはやミケーネスやキャットルーを打ち倒す力すら残っていなかった。鉄也の、甲児の危機にジュンが、さやかが、ボスが尽力を果たす。絶体絶命の危機を迎える鉄也を救いに来たのは、普段いがみ合っていたボスだった。もう既に自力で飛行する力すら失った鉄也のためにボスは空を飛ぶ手助けをする。そして七大将軍のうちの四将軍が討ち果たされ今将にデモニカに止めを刺さんとばかりの戦線に復帰し、甲児の助力を得ながら渾身のブレストバーンを放ち、ついに昭和50年9月28日、地獄大元帥以下闇の帝王の主要部下たちを滅ぼすことに成功する。自分の心の狭さから遂に実の父のようだった剣造を喪うことになってしまったことを悔やみ、涙する鉄也。重傷の中、入院を余儀なくされた鉄也だが、しかしその傍にはしっかりジュンがついていてくれた。主要戦力をほぼ喪い無力と化したミケーネ帝国はもう地上制覇に出ることはないだろう。グレートマジンガー、マジンガーZ、ビューナスA、ダイアナンAは平和のシンボルとしてロボット科学博物館に納められることになった。暫し入院の身となった鉄也は、続くベガ星連合軍の地球侵略戦争には参加できずにいた。病床の中、切歯扼腕していたことであろう。すくなくとも鉄也は昭和51年4月までは入院していたことが確認されている。野史によればその間起こったバレンドスのグレート強奪事件により、以後グレートマジンガーは再建された新科学要塞研究所に戻され、再起叶った鉄也は弓教授の後ろ盾を得て新科学要塞研究所の所長を務めたという。地球側の戦力保持と宇宙科学研究所の補給拠点として、甲児以外のマジンガー軍団はついに表立って対ベガ星連合軍戦に現れることはなかったが、それでもグレンダイザーチームの新兵器開発には少なからず関与したと思われる。その一例に、グレンダイザーのウルトラサブマリンはかつて兜剣造博士がグレートマジンガーの戦力強化の為に設計されたものであることが確認されている。弓教授などを通じて、宇宙科学研究所へ技術供与をおこなったものだろう。また、ベガとの激戦の中、ベガ星連合軍コマンダーガスカにより鉄也と剣造の思い出の島・明神島が荒らされたことがある。「父」を亡くし、「故里」を喪くした鉄也の胸に去来したものはなんであっただろうか。しかしそれでも鉄也には「思い出」が、「かけがえのないパートナー」がその手の中に残った。 

デュークフリード

生年月日 昭和30年6月16日〜10月12日頃
血液型   不明
身長    178p
体重    68s

フリード星のフリード王の子として生まれる。正式名は伝わるところによるとグレース・デューク・フリード。生母はマリアを生んで後いくばくもなくして死亡したと思われるが、継母の王妃はデューク・マリア兄妹を慈しんでくれたようで、デュークはこの継母を実の母の如く慕っていたそうである。デュークが生まれるのと前後して父・フリード王は宇宙の平和のためにと万能ロボット・グレンダイザーの建造を計画する。デュークは早くからダイザーのパイロットに内定していたらしく、何年も厳しい猛特訓に励んでいたという。なお、初恋は幼馴染の男爵家のナイーダ・バルザギックだったとか。ペットにザリガニを飼っていた。地球は日本の暦でいう昭和43年頃、ベガ星王女ルビーナがフリード星に留学してくる。ベガ大王は早くからフリード星侵略を企んでおり、フリード王を油断させるためにルビーナを送りこんできたということであるが、あわせてフリード星の情報やダイザーの機密も探る目的があったのであろう。ちょうどこの年よりダイザーの設計が終わって製造が開始されているからである。しかし、フリード王はベガの野望には気付かず、王子のデュークとルビーナ姫を結婚させてお互いの平和を保とうと考えていた。ベガ大王も、フリード王のその思惑を利用して二人の婚約を仄めかしていたようではあるが、親同士の考えはともかく、幼い二人はその婚約を肯定的に受け止めており将来を約していたのだった。昭和44年にはルビーナはベガ星に帰っていったようであり、代わってデュークはモール星へ留学する。そこでデュークはモール星王子モルスとともに学び、喧嘩して、友情を育み合ったという。昭和45年頃、デュークはフリード星に戻り、今度はモルスがフリード星に留学してくる。そして、この年グレンダイザーは完成した。フリード星でダイザーが完成したことを聞きつけたベガ大王はダイザーを奪取して宇宙征服に役立てようと考え、フリード星を強襲する。第一波としてベガトロンを注入された動物たちが各所を爆破し、続いて円盤獣軍団やミニフォー群が都市を破壊していった。そのときデュークはモルスと行動を共にしていたが、突然の円盤の来襲により城壁にふきとばされたモルスを必死に救おうとして、ミニフォーの攻撃を受け右腕に傷を負う。モルスをモール星に逃がして、デュークは王宮に向かう。王宮で父母に再会するデュークだが、ホワイター少尉率いるベガ星兵士たちが攻め寄せてきてフリード王と王妃はデュークをかばって撃たれる。崩れる王宮の瓦礫に押しつぶされ王妃はそのまま絶命した。王も既に虫の息で、グレンダイザーをベガに悪用されないよう持ち出して逃げるよう遺命し、王の印たるペンダントをデュークに授けて息を引き取っていった。父の最期の言葉を受け、一路グレンダイザーめがけてデュークは走る。途中行き逢った妹マリアをも断腸の思いで見捨てて、デュークは王宮を抜け出た。王宮にはベガトロン爆弾が投下され轟音が轟く。その放射能が右腕の傷に降りかかり苦痛を憶えるも、ダイザーの操縦席に転げ込んだデュークはかろうじてフリード星を飛び立ってゆく。爾後3年余を宇宙を彷徨っていたようであるが、追っ手の円盤部隊に発見されたダイザーは絶望的な戦いを強いられデュークも大怪我を負うが、なんとか一瞬の隙をついて逃げ延びていったのだった。偶然に地球に流れ着いて八ヶ岳に不時着したのは昭和49年2月頃のようである。半死半生で気を失っていたところを、宇門源蔵博士に救われたそうである。デュークの傷は相当に重かったようで、少なくとも一年は安静を要していたと考えられる。その昭和50年2〜3月頃より、宇門源蔵の子として「宇門大介」の名を与えられて、リハビリーテーションを兼ねて牧葉家のシラカバ牧場で働くようになったものであろうか。しかし、体調や精神面は必ずしも万全ではなかったのだろう、ミケーネ帝国との戦いには遂にダイザーが出動することはなかった。ダイザーの秘密格納基地もこのころから宇門博士と共同で建設を開始したようである。
昭和50年10月、ヘル・ミケーネ戦争の英雄、兜甲児が宇宙科学研究所の研究員として迎えられた。時を同じくしてベガ星連合軍が地球侵略を開始する。一人の地球人として平穏に暮らしてゆくことを望んでいたデュークは苦悩するが、甲児の危機を前に遂にグレンダイザーを起動させ、円盤獣ギルギルを葬ることに成功する。そして最早戦争が不可避と悟ったデュークは甲児に己が正体を明かし、共闘を約すのだった。地球にデュークが逃れて来ていると知ったベガ星連合軍銀河方面司令ガンダルは、地球征服の最も障害となるグレンダイザーを真っ先に倒すべく円盤獣たちを繰り出してくる。その挑戦を死闘の限りを尽くして、デュークは甲児とともに防いでゆく。フリード星人はもともと地球より1.4倍も強い重力の中で生活しており、従って地球人よりも体力に優れている。しかもデュークはグレンダイザーの操縦者として数年にかけて特訓をしており、デュークの驚異的なジャンプ力も、他のフリード星人が見せることがなかったことから察すると、一般のフリード星人よりはるかに量力に優れていたのだろう。地球人に比較してプロレスラー二人分の力を持っていたという。加えて、テレパシーをはじめとして超能力を数種具えており、それらの力が戦いを進めるに当って随分とプラスに作用したことと思われる。また、デュークの闘い振りは、いわゆる「戦勢に乗る」というもので、遮二無に攻め立てる中で敵の体勢の崩れを衝く処にその特徴がある。周囲の状況を利用するのにも長けており、自分を優位な立場に作り上げるよう布石を施すなど、戦略家的と云えよう。度重なる敗報にベガ大王は業を煮やして、親衛隊隊員ゴーマン大尉をはじめとして数次にわたってコマンダーたちを地球に派遣するが、それらも返り討ちに討ち果たしてゆくのだった。しかしその過程のなかで、一方の被害者でもある者たちとも刃を交えなければならない悲しみをデュークは味わってゆく。そしてそんな刺客の中には幼馴染のナイーダの姿まであった。マインドコントロールされたナイーダは、デュークがグレンダイザーで独り逃げたことを責める。裏切者の名を受けて、更には自分の闘っていた相手がフリード星人と聞かされてデュークの精神は崩壊するに至った。正気に戻ったナイーダはそんなデュークの姿を見て責任を感じ、円盤獣とミニフォー部隊に特攻をかけて命を散らしてゆく。ナイーダの最期にデュークは号泣して誓う。ベガ星連合軍を必ず滅ぼすと・・・・・・・。それは戦いを、争いを忌避していたデュークのひとつの転機でもあった。以後のデュークには戦うことへの迷いが抜けきったのだから。
折から、地球攻撃隊長ブラッキーがグレンダイザー抹殺と宇宙科学研究所撲滅を図って大攻撃を掛けてきた。激戦の末甲児のTFOは破壊されるが、デュークはマザーバーンのブラッキーを敗死させ、ガンダルにも重傷を負わす。時に昭和51年4月4日。ダイザーの底力に懸念したベガ大王は、ベガ星一の科学者と言われるズリル科学長官をガンダルの協力者として月のスカルムーンへ派遣する。ズリル長官の合理的かつ大胆な作戦にデュークは翻弄されつつも、なんとかその挑戦を払いのけてゆく。しかし、TFOを喪った甲児は参戦に向け少々焦りを生じさせ、それが原因でデュークはフリード星滅亡時に受けた古傷を悪化させてしまった。ベガトロン放射能が胸にまで達したとき、デュークの命は尽きるのだ。己の命が旦夕に迫ったことを悟ったデュークは、その最後の生の全てを地球に捧げることを誓いベガ星連合軍と刺し違える覚悟を固める。暗い出来事が続く中、敵の戦力増強に応じて宇宙科学研究所はダイザーの支援戦闘機として昭和51年5月、Wスペイザーを開発する。操縦者に兜甲児を得て、コンビネーションクロスしたグレンダイザーはまさしく宇宙の王者そのものだった。戦闘に関しては光明が見え始めたその7月、 更には牧葉ひかるのマリンスペイザーが完成する。ガンダル・ズリルの猛攻撃の前に宇宙科学研究所は壊滅するが、新たに新宇宙科学基地も完成し、三機目のドリルスペイザーを加えたダイザーチームの前には最早円盤獣は敵ではなかった。そして昭和51年9月、死んだと思っていた妹、グレース・マリア・フリードと夕陽の中で再会を果たす。マリアをドリルスペイザーの操縦者に迎え、グレンダイザーチームの完成だ。デュークはチームのリーダーとして数々の戦いを勝利へと導いてゆく。
しかし、戦局はこの時期大いに動く。ベガ星が環境汚染の為に死滅し、ベガ大王以下軍団が大挙スカルムーンへと移住してきたのだ。地球を第二の宇宙征服の根拠地とすべく、ベガ大王は配下のダントス防衛長官に地球制服軍の指揮権を与える。ダントスは、新開発のサイボーグロボ兵器・「ベガ獣」を出動させた。即ち昭和51年9月26日、第一号ベガ獣・キングゴリの実戦投入だ。ベガ獣の凶暴さは円盤獣の比ではなく、グレンダイザーすら片腕をもぎ取られるほどであった。敵幹部の不協和音により辛くも勝利を手にしたダイザーチームではあったが、ズリル長官を中心にした海底基地建設を阻止することは遂に適わなかった。しかしダイザーチームの団結は徐々にベガ星連合軍を追い詰め、昭和52年1月には新兵器・ウルトラサブマリンの力を得て海底基地爆破に成功する。そんな吉事とは裏腹に、デュークのベガトロン放射能の傷は大きく広がり、残された時間はもはや幾許もなくなっていた。自分の命のタイムリミットと秤に架け、ベガ星連合軍追討に焦りを憶えるデューク。その彼の前をかつての親友にしてモール星の王子のモルスが襲い掛かる。ベガ大王に洗脳されたモルスは、デュークを仇敵と思い込みベガ獣ジガジガを駆ってグレンダイザーに攻撃を仕掛けてきた。激戦の中にも友を気遣うデュークは、モルスをデュークもろとも爆殺しょうとするベガの姦計を見破り、モルスを爆風から庇う。そのショックで洗脳の解けたモルスは、二度に渡って自分を命掛けで救ってくれた親友デュークの大恩に感じ、ベガトロンマイナス光線でデュークの傷を治し、自らはベガと刺し違えるべくスカルムーンへと突っ込んでゆく。が、用意周到なベガ大王により、モルスはジガジガもろとも自爆させられてしまった。そして運命の女性・ベガ星王女ルビーナが地球にやって来た。デュークの生存を聞きつけて逢いに来たのだ。だが、ベガ大王に父も母も、フリード星の大勢の人を殺されたデュークには今更ルビーナと手を取り合う気にはなれなかった。頑なにルビーナを拒絶するデューク。それでも、ルビーナを信じる気持ちが棄てきれないデュークは密かにルビーナに会いに行く。その機をチャンスととらえたズリルは罠を張ってグレンダイザーを捕らえる。それを必死で助けるルビーナは、しかしデュークを庇ってズリル艦の攻撃を受けてしまった。ダイザーチームの協力でズリル専用母艦を撃退したダイザー。しかし、ルビーナはデュークの腕の中で静かに息を引き取って逝った。スカルムーンの場所を教えて・・・・・・・・・・。
ルビーナ、ズリルを喪ったベガ大王は最後の決戦を挑むべく、戦備を整えていた。一方デュークは、尚強大な武力を有するベガ星連合軍に対して、先制攻撃に拠らねば敗北は必定と想い定めて、単機スカルムーンと刺し違えすべく覚悟を固めていた。それとなく周囲のみんなに別れを告げてゆくデューク。だがその様子に不審を抱いた甲児に、命を掛けてスカルムーン特攻を止められる。甲児のその必死の懇願についに折れるデューク。しかし、止められながらもデュークの胸には甲児の篤い友情が沁み入る。だが、思わぬ時間を取ったことにより二人は逆に奇襲を受ける形となった。即ち、決戦の露払いにレディガンダルが最強のベガ獣・グラグラで決闘を挑んで来たのだった。出鼻を挫かれて大苦戦を強いられるダイザー。甲児のダブルスペイザーはグラグラにやられて宙を失速して行く。なんとか甲児を救助するデュークではあったが、光に目をやられ押されまくりだ。必死で敵の攻勢を凌ぐものの形勢の不利は明らかである。そこへ正気に戻った甲児が戦線に復帰した。甲児の連絡を受けてひかるが、マリアが援護に馳せつける。そして、甲児とのコンビネーションクロスにより力を合わせた両雄の前に、遂にグラグラは敗れ去る。グレンダイザーの前に敗退し地球の武力制圧を断念したレディガンダルは己の保身を考え、宇宙科学基地に向けベガ大王暗殺の暁には地球の一区画を貰い受けたいと交換条件を持ちかけた。デュークたちは一応それを了承するが、裏切者はその末路はやはり悲惨なものであった。ベガ暗殺の将にその時、皮肉にも別人格のガンダルによってレディガンダルは処刑されてしまう。だが、別人格とはいえ同一人の片割れを自ら始末したガンダルも、最早その命は長くはなかった。その燃え尽きる寸前の生命を、ガンダルはベガ大王への忠誠の為に総て捧げ、母艦で特攻を仕掛ける。ガンダルの捨身のその攻撃をダイザーはかわし、そして遂に地球総司令官ガンダルは果てたのだった。首尾良くガンダル指令を葬り去ったデュークは、ダイザーチームの宇宙戦用スペイザー・コズモスペシャルとともにベガ大王との最終決戦に挑むため、一路月のスカルムーンを目指す。数多のミディフォーを薙ぎ倒し、そしてついにベガ大王のキング・オブ・ベガ号に迫ったデュークは、コズモスペシャルの助力を受け、怒りのダブルハーケンで見事ベガ大王を討ち果たしたのだった。地球に、そして宇宙に平和が蘇える。宇宙の悪魔を滅ぼし、復活の兆しを見せ始めたフリード星へと還ってゆくデュークとマリア。王として、王女としてフリード再建に力を尽くすためにかけがえのない仲間たちと別れを告げ、グレンダイザーは飛び去っていった・・・

ドクター=ヘル

生年月日 明治35年9月6日
血液型   不明
身長    175p
体重    65s

1902年(明治35年)9月6日、ドイツのライン地方で生まれる。父母はごく平凡な一般市民だったという。
本名不詳。「ヘル」はファミリーネーム(姓)かと思われる。語源は「地獄」ではなく古語ドイツ語にいう「闘い」のヘルと考えられ、このような姓の命名法がヨーロッパには珍しくないことから、先祖は兵士などの軍事を事とした家系であったと類推される。また、このことはヘルの家系が古くからのドイツ人であったことを覗わせる。
幼少の頃のエピソードは一切伝わっていないが、当人が後に語るには「小さい頃から神童と呼ばれ、百年に一人出るか出ないかの天才だった」ということである。事実、ヘルの知能指数は182を記録し、アインシュタインを超える頭脳の持ち主だったことが公式に知られている。
1914年、ヘルが12歳の折に第一次世界大戦が勃発しており、ドイツ帝国が崩壊するのが1918年11月9日ーーーヘル、16歳のことである。祖国の敗戦をヘルがどのような感慨をもって迎えたかは伝えられていないが、自分の出身地にさほどのこだわりを見せない点や、ナチスへの非協力的な姿勢を鑑みるに祖国愛というものがほとんど感じられず、早くから自分の才幹に絶対的な自惚れを抱いて周囲を見下していたものと見られる。敗戦後のドイツで、ヘルは1920年、奨学金で大学に進学している。大学でヘルは原子物理学を学んだという。また、当時日本からの留学生として兜十蔵が同じ大学に来ており、ヘルとは同級生であったということである。しかし、ヘル在学中に祖国ドイツは大きなうねりを見せ始める。敗戦後のヴェルサイュ条約により多額の賠償金を負わされたドイツは経済が破綻し、街には失業者が溢れていた。その社会的な不安と混乱はやがて未来の独裁者を用意する。アドルフ=ヒトラー。彼はドイツ労働者党に身を寄せ、改名ナチスの党首となっていた。1923年11月、いわゆるビヤホールプッチと呼ばれる一揆を起こすが、武装警官隊に阻まれ一揆は挫折。ヒトラーは逮捕される。その獄中後世に悪名高い「我が闘争」を執筆している。そんな世情の中、1924年ヘルは大学を卒業する。この時、ヘルは兜十蔵と対立を迎えると記録に謂う。それがどのような種の対立であったのか、今となっては知る術もない。桜多氏によればそれは女性問題であったという。が、筆者の考えるに、二人の科学に対する考え方の相違ではなかったかと想像する。とまれ、一説に親友同志だったという二人はこの年を境に袂を分かつのである。
以後しばらくはヘルの足取りは全く掴めない。後に機械工学の権威として知られていることから、恐らく関連分野の学問研究に没頭していたものであろう。それはある種、世間の動きからは傍観していたことも意味し、その間にヒトラーは1933年首相に、1934年首相と大統領を兼ね総統に就任しており、ナチス一党による独裁体制を確立していた。しかしドクター=ヘルがこのナチスに招かれたのが1940年。既にドイツがポーランドに侵攻し、いわゆる第二次世界大戦に突入してから一年目のことである。ここで、ドクター=ヘルはナチスの科学部で様々な殺人兵器や人体実験を行ったという。その生体実験の犠牲になったのは実に数万人に上ったという。また、大学で原子物理学を学んだことからも判るように、ドイツにおいての原子爆弾の研究にも大いに預ったものと考えられる。だが、既に自己の力による世界征服を考えていたドクター=ヘルはナチスには積極的な協力はせず、専ら研究費はせしめてもその研究成果の大多数はナチスに供与しなかった。もしドクター=ヘルがその研究成果を秘匿していなければドイツは戦争に勝ったであろうとさえ云われている。そして大戦末期の1944年、戦場で首を吹き飛ばされ死亡したナチス将校ブロッケン伯爵にサイボーグ手術を施して甦らせたことが伝わっている。
1945年、第二次世界大戦が終結し、ナチスドイツが崩壊する。しかしドクター=ヘルの数々の生体実験の事実は連合国には伝わらなかったようで、逆にナチスに非協力的な態度が評価されたものか、戦後罪に問われることもなくノーベル賞候補にまで挙がったことが知れている。また、1952年には国際科学アカデミーの一員としてロードス島調査団の団長に補されるなど、国際的な信用が高かったことが窺い知れる。
 そのロードス島調査団の結成の経緯は明らかではないが、ドクター=ヘルは早くからミケーネの巨人伝説に興味を抱いており、その伝説の巨人が巨大ロボットではないかとの見解を持っていた。そして、専門の原子物理学とは別にミケーネの研究も行っていたようであり、世間には考古学者としても名を馳せていたようである。ロードス島調査団の結成当初から有力メンバーに入っていたと自身述懐していることを考え合わせると、ドクター=ヘルはミケーネの巨人伝説がロボット軍団であったとの認識を強く持っており、それを来るべき世界征服の強力な武器として役立てる機会を窺っていたと見て良さそうである。とすると、ロードス島調査団の結成も、ドクター=ヘルが国際科学アカデミーに陰で働きかけて、その結果結成されたものと考えてまず間違いなかろう。それはドクター=ヘル自らが団長に納まっている事実と、「ロードス島遺跡調査」という言わば考古学・民俗考証学の分野にも関わらず、団長以下団員たちが工学関係の者が多いことにも裏付けられる。つまり、ドクター=ヘルは最初からミケーネの遺跡に巨大ロボットが遺されていることを予見し、己の膝下に納めんと画策して調査団の結成及びメンバーの選定を行ったと見るべきであろう。そのメンバーの中に兜十蔵の姿があったのはドクター=ヘルの誤算であったようであるが、とまれ、時に1952年、世界各国から優秀な科学者が集められたロードス島遺跡調査団が、エーゲ海の孤島・ロードス島を訪れたのだ。
調査団はやがて、ミケーネの巨人ロボットの遺構を発見する。その世紀の発見に、調査団はロボットの復元を決定する。ロボットの復元が完成したのは諸書から考察するに1955年頃だったと思われる。だが、世界征服を策すドクター=ヘルは他の団員には極秘で、ミケーネの復元ロボットにリモートコントローラー装置を備え付けておいたのだ。そして、自分の野望の妨げになる他の科学者達をロボットたちに襲わせ、そのほとんどを抹殺したのだ。しかし、この惨劇から生き延びた者がただ一人いた。兜十蔵である。船で命からがら脱出した兜十蔵をドクター=ヘルは巨人ロボットに襲わせるが、間一髪、兜十蔵は地獄のロードス島を逃れ去っていった。そのただ一つの誤算に悔しがるドクター=ヘルであったが、その彼の前に謎の怪人物・ゴーゴン大公が現れる。闇の帝王の先遣隊としてロードス島の戦闘獣工場の発掘を任としていたゴーゴン大公は、先んじてロードス島のロボットを膝下に収めたドクター=ヘルに襲い掛かる。が、ゴーゴン大公の目的も世界征服にあると知り、ドクター=ヘルは世界の共同統治という好餌をもってこれを懐柔する。
ゴーゴン大公との盟約成り世界征服を進めるドクター=ヘルは、世間にはこのロードス島遺跡調査以降行方不明と報ぜられた。恐らくは各国の行方不明となった科学者達の捜索隊が各政府から派遣されたものと考えられるが、後年の地獄城の手口のように周囲に磁気周波を廻らし捜索隊をその都度壊滅させたものと見倣してまず間違いないであろう。そのうち各国も「ロードス島遺跡調査団は磁気嵐に会い、全滅」との見解を持つに至ったことであろう。1958年頃、第一号機械獣・ガラダK7を完成させる。翌1959年、元ナチス将校のブロッケン伯爵が参画してドクター=ヘルの地下帝国建設を助ける。ロードス島をバードス島と改称して、世界中から資材を集めて機械獣製造工場や兵器工場を作っていったのだった。一方、地上の人間をさらって改造手術を施し、己の命令に忠実な兵士・鉄仮面に仕立てたり、科学者達を誘拐・拘束して協力させてゆく。1960年、バードス島の更に地下深くを開発中に夫婦のミイラを発見し、改造手術を施しこれを「あしゅら男爵」として自分の片腕とした。
こうして徐々に陣容を整えていくドクター=ヘルであるが、ひとつ気がかりがあった。それは他ならぬ兜十蔵の存在であった。自分の野望を知りながらそれを世間に公表しない兜十蔵の態度は実に不可解であり、且つ又世界征服の支障と判断したドクター=ヘルは、兜十蔵暗殺指令を下す。だが、日本政府の後ろ盾を持つ兜十蔵の暗殺は一筋縄には行かず、1963年には兜十蔵は光子力研究所を開設する。ドクター=ヘルは、光子力エネルギーと超合金Zが来るべき世界征服戦争に役立つと考え、以後光子力研究所を付け狙うようになる。そして世界各国に勢力を扶植してドクター=ヘルは、アメリカ・南米・ヨーロッパ・アフリカに支部を持ち、推計兵力5〜6万人、1971年には機械獣軍団を完成させるに至る。ヘルは日本攻略をあしゅら男爵に命じ、予てからの邪魔者であった兜十蔵の行方を突き止めてこれを殺害。時に1972年(昭和47年)12月3日のことであった。また、兜十蔵の別荘爆破の際にミネルバXの設計図を入手。光子力研究所の制覇を目論み二体の機械獣を差し向ける。しかし兜十蔵の遺したマジンガーZの出現により、機械獣は打ち倒される。既に賽を振ったドクター=ヘルは、これを機に全世界に向け世界征服宣言を発す。曰く、「手始めに日本の光子力研究所を攻め落とし、一年以内には全世界を手に入れる」と。ここにドクター=ヘルの世界征服戦争が始まった。
マジンガーZの出現により無力と化した機械獣軍団にかわり、ヘルは新・機械獣軍団を編成。あしゅら男爵に命じて次々と光子力研究所並びにマジンガーZを襲わせるが、マジンガーZの強力無比の力の前に作戦は悉く失敗に帰す。弱点の海から攻め込んでも、マジンガーZは海を制覇。更には空からの猛攻も、ジェットスクランダーの実戦投入によりマジンガーZに阻まれる。遂には昭和48年8月26日、あしゅら男爵指揮下の海の要塞サルードが撃沈される。前後、あしゅら男爵の力量ではマジンガーZ撃滅は図りがたしと判断したドクター=ヘルは、ヨーロッパ担当にしてヘル帝国の陰の立役者・ブロッケン伯爵をバードス島に呼び寄せ、参謀としてマジンガーZ攻略を任せることにした。ここに新たに完成した飛行要塞グールをブロッケン伯爵に配備し、鉄十字軍団を正式に与えたのだ。一方でドクター=ヘルは新・海底要塞ブードを建設、ブロッケン伯爵が思うような戦果を挙げられぬのを見て取って再度あしゅら男爵に機会を与えブード指揮官として起用し、ブロッケン・あしゅらの両輪体制を敷いてマジンガーZ撃滅を目指す。二人の犬猿さながらの仲の悪さを利用して功名心争いをさせて戦果を挙げようというのがドクター=ヘルの目論見であったが、しかし、それはかえって作戦の齟齬をきたすようになっていった。昭和48年暮、念願の光子力研究所制圧を果たしながら、あしゅら男爵の抜け駆けから研究所を放棄してバードス島に逃げ帰ることとなってしまった。これに激怒したドクター=ヘルは、あしゅら男爵の死刑を決定するが、長年の犬馬の労を思い最後のチャンスを与えた。即ち、前線基地の建設命令である。遠いバードス島からでは充分な采配がとれないと判断するに至ったドクター=ヘルは、日本は伊豆七島の附近・地獄島と呼ばれる無人島に基地を設けるのだった。これを地獄城と呼称し、バードス島の地下帝国を引き払い本格的に本拠として構えるのだった。
前線の移動は今までより更に闘いを激化させることとなったが、それでもマジンガーZはアイアンカッターやドリルミサイルといった新兵器を引っさげてドクター=ヘルの挑戦を悉く退ける。その戦闘の長期化に伴い、ドクター=ヘルは焦りを生じるようになり、遂には独力での世界征服を断念するに至った。そして、心の底から信ずるには危険と承知していながら、鳴門海峡に力を蓄えているゴーゴン大公に援軍要請を出したのだ。ゴーゴン大公の繰り出す妖機械獣の力は凄まじく、たちまちマジンガーZのホバーパイルダーを溶かしてしまい戦闘不能に陥れる。が、光子力研究所側も巻き返しを図り、新パイルダーを繰り出し、新武器に出力増強、更にはジェットスクランダーの速度アップと戦闘力を増強して互角に渡り合ってくる。激戦の中、昭和49年5月26日、あしゅら男爵が遂に敗死する。あしゅら男爵の弔い合戦を挑んでジェットファイアーP1を派遣するが、それもマジンガーZの前に敗れ去っていった。あしゅら男爵死亡による戦力の低下の懸念と、危険な盟友・ゴーゴン大公を牽制するためにドクター=ヘルは新しくピク゜マン子爵を造り上げ、自分の手元に置いた。これは、いざというときにゴーゴン大公を抹殺出来るようにと、様々に強力な超能力を持たせた妖怪参謀であった。だが、ピグマン子爵の重用は、前任参謀だったブロッケン伯爵の反発を買い、更にはその下心はゴーゴン大公の察知するところとなり、ここに地獄城の団結は大きく崩れた。ドクター=ヘルを見限り始めたゴーゴン大公は独自の行動をとるようになり、昭和49年7月24日、ミケーネ暗黒大将軍による地上侵攻を取ることとなった。戦いはマジンガーZの死に物狂いの戦闘と、予期せぬ援軍のグレートマジンガーの出現によって阻まれ、ミケーネは再び沈黙することになったが、以後ははっきりとドクター=ヘルを捨石にする意志を固めたといえよう。そして、期待したピク゜マン子爵は慢心からドクター=ヘルに離反し、単独光子力研究所制覇を図るが、あえなく敗死。いよいよ後がなくなったドクター=ヘルは地獄城に一大決戦を挑むが、第一戦は両者痛み分けに終わった。互いに大打撃を被ったヘル・マジンガーZ。こうなっては先に立ち直って先制攻撃を掛けた方の勝利だ。そして、先んじて攻勢に出たのはマジンガーZと自衛隊の大軍隊だった。昭和49年8月25日、地獄城攻囲作戦が決行される。マジンガーZの激闘の前に切り札の二大機械獣を失って、地獄城を壊滅させられたドクター=ヘル。ゴーゴン大公もその最期には見殺しを決め込む。覚悟を決めたドクター=ヘルは、敗走するグールの機首を戻しマジンガーZと刺し違えようとするが、あえなくマジンガーZの前に敗れ去り、グールごと爆死した。享年71歳。世界の帝王を自認した野望家のこれが最期かと思えた。しかし、ドクター=ヘルの戦いと野望はまだ終わらなかった。即ち、ドクター=ヘルの死体はミケーネ闇の帝王の手に渡ったのだ。ドクター=ヘルの戦闘能力を惜しんだ闇の帝王は、密かに指揮官戦闘獣として甦らすことを決定した。爆発で上半身のみとなっていたドクター=ヘルは戦闘獣の頭に設置され、地獄大元帥として蘇える。そして、暗黒大将軍戦死後のミケーネ七大軍団の総指揮官として昭和50年5月11日、任命を受ける。マジンガーに狂的な怨念を抱くドクター=ヘル改め地獄大元帥は、巧妙な作戦でグレートマジンガーを追い詰めてゆく。かつての兜十蔵と兜甲児のマジンガーZ、そして今は兜剣造のグレートマジンガーと、兜一族への恨みを募らせ闘志を燃やす地獄大元帥は恐ろしい強敵だった。命令系統の混乱しがちなミケーネ帝国の指揮権をその手中にしっかり収め、相手の弱点を執拗に付け狙う地獄大元帥の戦法は脅威的ですらあった。また、ミケーネの科学をも取り入れた地獄大元帥は、以前に増してその天才性を発揮して様々な新兵器を作ってゆく。昭和50年6月1日、万能要塞ミケロスを失うものの、すぐに無敵要塞デモニカを建造、恐ろしいまでの性能を見せつける。また、地獄大元帥参画後の戦闘獣は以前に比べ格段にその戦闘力を増しており、両者の結びつきの前にはグレートマジンガーの運命ももはや風前の灯に見える。恐らくは南米やアフリカに残っていたと思われるヘルの残党をも吸収しての戦果だったことであろう。いわば、ドクター=ヘル軍団・ミケーネ帝国連合軍の様相であった。これを受けて、マジンガーも連合が必要とばかりに、ミケーネ緒戦で敗れ去ったマジンガーZがパワーアップを果たして戦線に復帰する。優位を保っていた戦局は一気にパワーバランスを崩して、ミケーネ軍団は総崩れをはじめるのだった。宿敵・兜甲児の出現に怒り心頭の地獄大元帥だったが、それでもダブル=マジンガーに付け入る隙を目敏く見出す。即ち、パイロットの兜甲児と剣鉄也の不和を見て取ったのだ。総力戦を挑むのは今を置いて他なしと判断した地獄大元帥は、昭和50年9月、ダブル=マジンガーを分断し、各個撃破を目論む。その卓越した戦法の前にグレートは倒れ、Zもまた大苦戦を強いられる。鉄也の危機に兜剣造は死を賭して科学要塞研究所の管制室もろともデモニカに特攻をかけ、そして亡くなった。大打撃を受けたデモニカは、それでもここが正念場とばかりに研究所に猛攻を加える。が、父・剣造の死を知った兜甲児の怒りの前に、ミケーネ最強の戦闘獣・グレートマンモスは倒れ、四将軍までが呆気なく敗れ去ってしまった。マジンガーZの、兜甲児の捨身の戦い振りにデモニカは追い詰められる。そして、マジンガーZ・グレートマジンガー・ダイアナンA・ビューナスAの合同攻撃の前についにデモニカは爆発四散、地獄大元帥もその爆発の中に消え去っていった。永きに渡るドクター=ヘルの世界征服戦争はここにようやく終焉を迎えたのだった・・・・・・・・