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症例 腹痛、下痢(潰瘍性大腸炎)
55歳 男性 会社員
【診療日】X年5月20日
【症状】腹痛、下痢
【病歴】
30年前に潰瘍性大腸炎(左下腹部)を発病。近年は寛解していたが、4日前から腹痛があり、粘液様の下痢が続いているそうです。思い当たる原因としては、その数日前に飲酒したことだそうです。「一緒に食べた刺身が良くなかったかも?」とも仰っていました。
※ 潰瘍性大腸炎
指定難病の一つで、大腸の粘膜に潰瘍ができる疾患。症状としては、腹痛、下痢、血便など。
診察所見・診たて
腹部を触診すると、全体的には冷えていたが、左下腹部の腹痛がある部分のみ軽度の熱がみられました。おそらく平素は腹部が冷えている体質なのでしょうが、飲酒をきっかけに腸に負担がかかり、軽度の炎症が起きたものと判断しました。
鍼灸治療
腹部のなかで特に冷えの強い部分に「暖める鍼」を施しました。専門用語では「補法(ほほう)」といいます。気血の巡りを改善し、冷えている部分を温める手技です。
手足にある腹部と関連するツボからも「腹部を暖める鍼」を施しました。
腰を触診すると、こちらも冷えていました。お腹の奥が腰ですから、こちらにも「暖める鍼」を施しました。
腹部の熱をもった一点には「熱をとる鍼」を施しました。専門用語では「瀉法(しゃほう)」といいます。これで炎症の改善を図りました。
経過
翌回(5月26日)
前回治療後の夜、下痢が3回出たそうですが、その後からは痛みも粘液様の便も出ていないとのことでした。一昨日にコーヒーを飲んでから、下痢が若干ぶりかえしているが、腹痛はないとのことでした。
お腹を触診してみると、前回みられた左下腹部の熱はすっかり消えていました。この日は主にお腹を暖める治療を施し、ひとまず治療終了としました。
コメント
1.瞑眩について
まず20日夜の下痢についてご説明します。これは治療後に悪化したのではなく、鍼灸によって誘発されたデトックス(解毒)であると考えられます。
東洋医学では身体の様々な不調を体内の毒によるものと考えます。治療後の夜に3回も下痢がでたというのは、鍼灸によって自然治癒力が促進し、身体が毒を排出する作用が高まった結果、下痢が起こったと考えられます。
東洋医学では、このデトックスを「瞑眩(めんげん)」と呼び、治療後の好転反応として重視しています。これによって腸に悪影響を及ぼしていた毒が排出されたために、それ以降は病状が大幅に改善されたものと思われます。
2.証に対する治療
東洋医学の診察法は、脈、舌、腹を診ます。これと患者さんが訴える症状を総合したものを「証」といい、治療方針はこの「証」に従って決められます。ですから、どのような症状・疾患の患者さんにも「証」に基づけば、治療を施すことができます。
もちろん「何でも治る」と言えるわけではありませんが、西洋医学で対処が難しい疾患であっても、改善できる可能性があるということは言えます。お悩みの疾患・症状がありましたら、ぜひご相談ください。
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