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 a.気 胸

 ● 鎖骨下穿刺時の最も重要な合併症。穿刺針で壁側・臓側(肺表面)胸膜を突き刺して肺実質を損傷することにより発生する。
肺実質を穿刺した場合には注射器に空気が吸引される。

 ● 予防方法:穿刺時、できるだけ胸壁に近い角度で針を進める。
極端にやせた症例や人工呼吸中の症例に対して鎖骨下穿刺はしない等も予防法になる。
試験穿刺で鎖骨下静脈に命中しない場合には絶対に本穿刺はしない。

 ● 気胸が発生すると、胸痛、咳嗽、呼吸困難の症状を呈する。
穿刺直後には発見されなくても、2〜4日後の胸部X線写真で発見されることもある。

 ● 気胸が発生しても症状がほとんどなく、虚脱肺が鎖骨上縁よりも上であれば、安静等の保存的治療で様子をみる。

 ● 症状があり、虚脱肺が鎖骨上縁よりも下になっていれば胸腔ドレナージを行う。

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 b.随伴動脈穿刺

 ● 静脈穿刺時に随伴する動脈を誤穿刺すること。

 ● 内頸静脈穿刺では総頸動脈、大腿静脈穿刺では大腿動脈、鎖骨下穿刺では鎖骨下動脈で、鎖骨上穿刺では直接大動脈を誤穿刺する場合もある。

 ● 動脈を誤穿刺した場合には5分間以上圧迫する。止血機能に異常がある場合には皮下血腫を形成したり、壁側胸膜を同時に損傷して重篤な血胸に進展したりすることがある。

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 c.血 胸

 ● 鎖骨下穿刺時、鎖骨下動脈と同時に壁側胸膜も損傷することにより胸腔内へ出血して発生する。

 ● 大量出血では呼吸不全やショック状態に至ることがあり、胸腔ドレナージをはじめ、厳重な全身管理が必要となる。

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 d.皮下血腫

 ● 動脈を誤穿刺した場合、十分な圧迫止血をしておかないと皮下血腫を形成することがある。
特に出血傾向がある症例には注意する。
大きな皮下血腫では、二次感染に注意しながら砂嚢などを用いて圧迫する。

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 e.空気塞栓

 ● 穿刺針の内針を抜いた時や、CVCを挿入する時に胸腔内の陰圧で空気が吸い込まれて発生することがある。

 ● 外套内にCVCを挿入する間、患者には息こらえをしてもらうことが重要である。

 ● 吸い込んだ空気が少量であれば無症状で経過するが、多量の空気が吸い込まれると右心室の肺動脈流出路を閉塞して突然のショック、呼吸不全を来たす可能性がある。

 ● 直ちに左側臥位にして頭側を下げ、カテーテルを右心室まで進めて空気の吸引を試みる。

 ● 効果がなければ、手術により直視下に右心室を穿刺して空気の除去を図る。

 ● 空気塞栓は致死的合併症。予防が大切で、手順を踏んでCVC挿入操作を行うことが重要。

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 f.胸管損傷

 ● きわめてまれであるが、肝硬変などで胸管が拡張している場合に起こる可能性はある。
左側の鎖骨上穿刺は、胸管の鎖骨下静脈への合流部に近い部位を穿刺するので危険性は高い。

< FONT style="color: #FF5C9E;"> ● 胸管を損傷しても、その時に気づくことは少なく、時間がたってから頸部の腫脹や、穿刺部位から乳白色の漏出やドレッシングが濡れる等の出現で発見されることが多い。

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 g.神経損傷

 ● 穿刺の方向によっては上腕神経叢、横隔神経、反回神経を損傷する可能性がある。

 ● 症状は上腕の疼痛、穿刺側横隔膜麻痺、嗄声などで、直接を損傷していなくても、血腫による圧迫症状として出現することもある。

 ● ほとんどの場合、自然治癒するといわれている。

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 h.先端位置異常

 ● CVC挿入時の合併症として最も高頻度。特に鎖骨下穿刺時の内頸静脈への誤挿あ多い。

 ● 先端位置異常となっても、低張液や血管刺激性の弱い輸液を投与するだけであれば問題はない。
高張液を投与すると、血管外漏出を生じる。右心房・右心室まで挿入すると不整脈を生じる。

 ● 先端位置異常となったCVCは抜去するしかない。ガイドワイヤーを用いて入れ換える場合には 不潔にならないよう、格別の注意を払う。

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 i.カテーテル塞栓

 ● CVCが切断されて心臓や大血管内に遺残することを意味する。

 ● 遺残カテーテルは早期摘出が原則で、X線透視下に、大腿静脈からキャッチング・ワイヤーを用いて摘出する。

 ● 放置した場合には、敗血症、細菌性心内膜炎、塞栓症などの重大な合併症に進展する可能性がある。