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 「留置カテーテルに関連した血栓形成」

 ● カテーテル周囲血栓

フィブリン鞘と壁在血栓に大別される。


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 a.血栓症の診断と治療

 ● 静脈の閉塞

・壁在血栓が大きくなってカテーテル周囲血栓と癒合すると、上大静脈などの太い静脈が閉塞することがある。

・大静脈が閉塞しても、側副血行路が形成されるため、臨床症状を呈することは少ないが、急に閉塞すると閉塞部より抹消の腫脹・鈍痛・チアノーゼ・側副血行路静脈の怒張などの症状を呈する。
 ● カテーテル周囲血栓

・CVC先端がフィブリン鞘で覆われて弁として作用する。
輸液は注入できるが、逆血が不能という症状が問題となる。

 ● カテーテル関連血流感染症
・CVCの周囲の血栓に細菌が付着すると、ここから持続的に細菌の発熱物質が放出される。

・CVC以外の外部に感染巣がある場合、血流中の細菌がCVC周囲の血栓に付着して感染巣を形成し、感染症が発生すると考えられている。


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 b.予防対策

 ● 現在のCVCでは、血栓形成を完全に予防することは不可能と考えておくべきである。

 ● 先端位置異常の場合には静脈炎を発生して静脈が閉塞することもあるので、CVC先端は常に適正な位置に置くことが重要である。


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 c.血栓症に対する治療

 ● CVCを抜去する。ウロキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクティベータなどの血栓溶解剤を用いる場合もあるが、CVC周囲の血栓は溶解できない。
血栓が遊離して肺塞栓症を来たす可能性もある。


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 d.先端位置異常

 ● 留置時には適正位置にあっても、先端が移動することがある。

 ● 咳嗽などにより急激に胸腔内圧が上昇して、CVC先端が移動することもある。

 ● 固定糸がはずれて抜浅したり、小児では成長に伴って先端が移動したりすることもある。
血管外漏出の症状で気づかれる。


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 e.血管外漏出

 ● 先端位置異常に伴う病態で、CVC先端が血管壁に接した状態で高張液を投与した場合に輸液が血管外に漏出することをいう。
血管壁穿孔とは異なる病態。
血管外に漏出した高張液が組織間液を引き込み、細胞外液量の減少を来たす。

 ● 血圧低下・頻脈・尿量減少・呼吸困難などが出現して重篤な状態に陥ることもある。

 ● 内頸静脈や鎖骨下静脈にCVC先端が位置している場合には、頸部や鎖骨周囲の発赤・腫脹が出現する。胸腔内に胸水が貯留することもある。

 ● 診断が確定したらCVCは抜去する。

 ● 定期的な胸部X線撮影によりCVC先端位置を確認することにより予防する。


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 f.静脈壁穿孔


 ● 先端位置異常に伴う問題。CVC先端による持続的圧迫のために静脈壁が穿孔することがある。血管外に輸液を注入することになる。
心房壁に穿孔を生じた場合には必タンポナーデとなる。

 ● 硬いCVCが外頸静脈や尺側皮静脈などから挿入されている場合首の捻転・上腕の外転により先端が働いて穿孔することがある。

 ● CVCを抜去し、全身状態を厳重に観察しながら経過をみる。


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 g.不整脈

 ● CVCが深く入りすぎて右心房や右心室を刺激して不整脈が発生することがある。

 ● セルジンガー法の場合、ガイドワイヤーで心臓壁を刺激して不整脈が発生することがある。

 ● 心室性不整脈が発生することもある。


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 h.空気塞栓

 ● 輸液ラインがはずれたり、輸液ライン交換時などに空気が血管内に入る危険がある。アラームのないポンプでインラインフィルターを用いずに輸液を投与している時、輸液が無くなったのに気づかずに放置しておくと、ポンプで空気を注入することになる。

 ● 輸液ライン交換時、輸液ラインやカテーテルが破損した場合、胸腔内陰圧のために空気が吸い込まれる可能性もある。


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 i.カテーテル遺残、カテーテル塞栓

 ● CVC抜去時、固定糸を切る際に誤って切断したり、ちぎれたりすることによって発生する。
唳れて自然に切断したことも報告されている。

 ● シリコン製の長期留置用カテーテルを鎖骨下穿刺で挿入した場合、自然断裂を来たすことがある。


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 j.事故抜去

 ● 事故抜去はさまざまな要因で起こる。
輸液ラインを無理に引っ張ったり、輸液ラインが体に巻きついたりしてCVCが抜けることがある。

 ● CVCの全長が抜けた場合には問題ないが、途中で切れた場合にはカテーテル塞栓となる。
必ず抜けたCVCの長さ、先端の形状、胸部X線写真をチェックする。


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 k.カテーテル破損

 ● CVC自体の破損、ハブのひび割れなどで輸液もれが起こることがある。
修理不能ならCVCは抜去する。

 ● ガイドワイヤーを用いて入れ換えることはできる。

 ● ブロビアック・ヒックマンカテーテルは、リペアキットを用いて修理することも可能。


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 l.カテーテル閉塞

 ● CVC内に血液が逆流・凝固して閉塞する場合が一番多い。
あまり時間が経過していなければ、生理食塩水でフラッシングして再開通できることもある。

 ● ツベルクリンジを用いる場合は、高圧がカテーテル壁にかかるため、注意深く行う。
再開通操作によりCVCが汚染することもある。