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-47- (2011.4 - 2011.5) 


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 (2011/5/28) 
人形峠ウラン残土レンガ

小出裕章氏の著書『隠される原子力・核の真実』(2010年 創史社)にウラン鉱山から出たウラン残土の話があります。岡山・鳥取の県境にある人形峠は、かつてウラン鉱山として10年にわたり採掘が試みられたものの、採算が合わずに閉山になったところですが、

 1988年になって、その土地に鉱石混じりの土砂が20万立法メートル、
ドラム缶に詰めれば100万本に達する量が、野ざらしのまま打ち捨てられ
ていることが発覚しました。残土の堆積場では、放射線作業従事者でも
許されないほどの放射線が測定され、半ば崩れた坑口からは、放射線
取扱施設から敷地外に放出が許される濃度の一万倍ものラドンという放射線
が検出されました。
 それでも、動燃は残土堆積場を柵で囲い込むなどの手段をとっただけで
残土の放置を続け、行政は安全宣言を出してそれを支えました。(80ページ)
それに対して鳥取県の方面(かたも)地区の住民は最高裁まで争って、そこの3000立方メートルの残土の撤去命令を出させます。動燃から改組された日本原子力研究開発機構は、撤去を命じられた残土のうちとくにウラン濃度が高くて捨て場所に困った290立方メートルをアメリカに「公害輸出」しました。そして残りの2710立法メートルはどうなったか?

小出氏のこの本は2010年までに行われた講演をもとにまとめられたものなので、記述はここまでなのですが、昨年5月にTBSは「報道特集」でこの残土の行方を報道していました。

報道特集「レンガの原料はウラン残土だった」2010年5月29日(土)放送YouTube 
残土をよく混ぜて放射線量を均一化して、規制を逃れるよう平均で0.22μSv/hにしているといいます。だが、これでも単純に年換算すると1.9mSvに相当。一般の被曝限度を超える。この番組放送の時点ではすでに、
国や原子力関連施設での使用 43万個
一般への販売        21万個
という数量が出荷されて、今年2011年の6月までに100万個以上を製造予定、とナレーションが伝えています。

人形峠にレンガ加工工場まで建設しているのに、一個90円とタダみたいな値付けをされたこのレンガは、日本原子力研究開発機構のホームページによると、輸送費まで半額負担するというコスト度外視の頒布作戦。

『人形峠製レンガの頒布のお知らせ』
独立行政法人がこんなことしていいのか、と素朴な疑問。放射能汚染レンガと知らされないで流通経路に紛れ込んだら、どうする。


 (2011/5/26) 
みたび『原発がどんなものか知ってほしい』

2002年9月26日に紹介した平井憲夫氏の講演会記録はリンクが切れていましたが、いまはこちらに再掲されています。

『原発がどんなものか知ってほしい』
このときは、東京電力による一連の原発の損傷隠ぺい問題を引き合いに出してのコラムだったのですが、当時はアメリカによるイラク攻撃が進行中だったこともあり、それから掘り下げることがありませんでした。再度この講演記録を取り上げたのは2007年の中越沖地震の1週間後。火災事故を起こした柏崎刈羽原発が、やはり被災の実態をひた隠しにしていたからでした。

当時、原発作業員の実態について、資料や映像が思うように集められませんでした。今ようやく、福島原発事故の終息のメドがたたない中で、現場で作業する労働者の被曝の実態が少しずつ報道されるようになりました。

『原発事故 揺れる下請け作業員』YouTube 
『被曝する労働者達:下請け・日雇いが支える原発の実態』YouTube
後者の番組の中で、「被曝要員として動員されて」、多発性骨髄腫で亡くなった長尾さんという方の話が出てきます。生きている間に労災が認められた初めての原発労働者だったといいます。その被曝量の80%は福島で浴びたものといい、その福島では 「何年か働いたうち一回も東京電力の社員に会ったことがない」。

そんな、現場も知らない、現場の作業員さえ見たことのない、東京の東電社員がマスコミ向けに戦況を「転進」のごとく広報を続けている、という構図でしょうか。

福島の現状と分析は、テレビ・マスコミよりも、ラジオの「たね蒔き」がおすすめ。

【福島原発】5/25/水★ブラックジョークとしてのチャイナシンドローム 1/2YouTube


 (2011/5/25) 
参議院行政監視委員会 人選の裏側

23日の参議院行政監視委員会「原発事故と行政監視システムのあり方に関する件」の中継はおおきな反響を呼んでいますが、昨夜の毎日放送ラジオMBSの『たね蒔きジャーナル』ではさっそく小出裕章氏に、出席した感想をインタビューしています。

【福島原発】5/24/火★小出先生の国会報告 1/2 YouTube
【福島原発】5/24/火★小出先生の国会報告 2/2 YouTube
それにしても、あの参考人4人の、まともすぎる人選がどうして参議院で可能だったのか、驚きでもあったのですが、その事情を、やはり「たね蒔き」がフォローしています。上の小出氏のインタビューのあとに、東京で委員会の取材にあたった松井記者と大阪の水野アナとの電話対談が続きます。

松井記者によると、この委員会はふだんの傍聴者が3〜4人だが、この日は4〜50人で満席。なかにはお坊さん(の装束?)の方もいたとか。ここは行政を国会立法の立場からをチェック監視する役割の委員会だが、監視される側の原子力安全・保安院の院長ほか、経産省からも15人ほどが「戦々恐々と」傍聴していた、と言います。

参考人の人選にあたった委員会の理事と委員長に取材した松井記者は、

<松井>監視委員会の理事や委員長に、今回(原発に)しがらみのない人たち
ばっかりだったので呼ぶことができた、と。そうとう保安院のほうも警戒していた
のではなかったか、と(理事が)話をしていました。
 委員長は自民党の方なんですけど、話を聞きましたら、委員会が終わってから、
自民党の執行部から「なんであんなの呼んだんだ、経済産業省側の意見がないのは
おかしいじゃないか」と言われたらしいんですね。

<水野>「なんであんなの呼んだんだ」と!

<松井>まだそんなこと言う人がいるのか、という印象を受けるんですが、
委員長はわりと毅然としていて、なぜ呼んだかというと、あの人たちは主義が一貫
している。そういう専門家を呼んで話を聞きたかったんだ、と。行政監視委員会で
しっかりと問題を提起できたんじゃないか、と話していました。

<水野>はあー、小出先生のような人を呼ぶだけでもたいへんなんですね。

【福島原発】5/24/火★昨日の参議院行政監視委員会の記者レポートYouTube
なお、23日の参議院行政監視委員会で孫正義氏が、必要とされている線量計が成田で留められていることに触れていました。その件について、同じく参議院の厚生労働委員会が5月19日に開かれ、そこで福島みずほ氏が追及しています。02:35:09という長いVODの終りに近い02:16:00からの部分ですが、そこだけYouTubeにアップされています。なんと19,000個が倉庫に眠ったままだったとか。
『厚生労働委員会「海外からの放射線線量計の行方」2011.05.19-1』YouTube


 (2011/5/23) 
参議院行政監視委員会 4人の参考人

今日午後1時からの参議院行政監視委員会の様子ががインターネット中継されました。その録画が、終了直後に参議院のホームページのVOD(ビデオオンデマンド)にアップされています。

『参議院インターネット審議中継』
参考人として出席していたのが、以下の4名の方々。この人選は参議院の良識を表しています。
小出裕章(京都大学原子炉実験所助教)
後藤政志(芝浦工業大学非常勤講師 元東芝、原子炉格納容器設計者) 
石橋克彦(神戸大学名誉教授・地震学)
孫正義(ソフトバンク社長)
私は生中継を見ようとしたのですが、アクセスが集中したようで、しばらく繋がりませんでした。やっと動画が現れたものの、携帯画面のような小さな画素数のものでした。このVODも同様のアクセスが予想されるので、このような断り書きがあります;「アクセス集中が予想されるため、多数の視聴を確保できるよう、当分の間、通常より低い画質にて配信いたします」。

なお、この日同じ時間に、文部科学省に子どもの被曝許容20ミリシーベルトを撤回させるべく、福島の親たちが立ち上がり、その要請に院内で集会が行われていました。その様子がUStreamにアップYouTubeされています。そこには、小出裕章氏が、予定より長引いた行政監視委員会の終わった後、その足で集会に駆けつけて、挨拶するシーンも含まれています。

さらに、この子どもの20mSvの許容について、5月1日の参議院予算委員会で、新潟県選出の森ゆうこ議員(民主)が質問に立って、その撤回を文部科学大臣に迫っています。その追及が、よく準備されており、法廷劇のように鋭い。

そのVODも上記の参議院のインターネット審議中継にアップされているものの、ダウンロード速度がとても遅い。7時間近い録画の、森議員のところまで早送りできない。でも、その森議員の質問部分だけYouTubeにアップしてくださった方がおられます。

『年間20mSvの基準値の撤回を求める森ゆうこ』YouTube
続いて同議員が東電社長清水参考人を追及していたシーンだけは、わたし柏崎の実家でTVで感心しながら見ておりました。
『森ゆうこ議員 参議院予算委員会質問2011年5月1日』YouTube
アップされた方のコメントに「森ゆうこ議員が質問すると、参議院予算委員会には緊張の空気が流れます。森ゆうこ議員の質問は迫力がありました」とありますが、私の印象と一致します。


 (2011/5/21) 
もうひとつのドキュメンタリー

”核”を求めた日本 昨年の10月3日に放送されたNHKスペシャル『スクープドキュメント ”核”を求めた日本 〜被爆国の知られざる真実〜』YouTubeが動画サイトにアップされています。

スクープとあるのは、そこに余命いくばくもない元外交官が、かつて政府内で核保有を模索していたこと、1969年の2月に核保有をめぐってドイツと秘密裏に会談(第一回日独政策企画協議)をもったことを言い残し、そこでの会談内容をドイツ側に確認すべく取材陣が当時のドイツ側代表の一人にインタビューしたことです。その会談では、核保有について日本側から以下のような「踏み込んだ」発言があった、といいます。

10年か15年のうちに、
核保有を検討せざるをえない非常事態が起こる
と考えている。
中国が核を持つことをアメリカが認めたり、
インドが核保有国となるような事態だ。

日本は憲法九条があることで、
平和利用の名の下に
誰にも止められることなく
原子力の技術を手にした。

日本は核弾頭を作るための核物質を
抽出することができる。
私はこの番組を見ておりましたが、その後どんな反響があったのか、知らないでいました。

ところが、この番組で報道された内容について、11月29日松本外務副大臣(当時)が記者会見YouTubeを開いていて、それがYouTubeにアップされていました。この質疑応答の中で、上の発言記録が日本側の資料にはなくて、海外には資料があったことについて、質問する記者がいないなあ、と案じていたら、やっと北海道新聞の記者が問いただしておりました(18:00あたり)。

1969年という時代背景を思うと、核開発を検討していたことは公然の秘密のようなものだったのではないかと思います。ただ、上の発言は、事実をうっかりしゃべってしまったものか、あるいは、外交的に相手の反応を見るためのブラッフだったのか、確かなことは分かりません。しかし、原発が原爆の材料メーカーであるのは事実で、その意味では「平和利用の名の下に」だれにも止められなかった、というのも事実でしょう(今でも止められない)。そして、憲法改正の策動の中心にはいつも再軍備があり、再軍備には核保有というオプションが必ずついて回ります。今は、「電気がなくていいのか!」というこだまが、いつか「核をもたないでいいのか!」というCMにすり替わるかも。



 (2011/5/20) 
うたのちから

川口悠子とアレクサンドル・スミルノフのペア 5月16日に取り上げた「ウクライナから来た歌姫」こと、ナターシャ・グジーの発音とつづりを知ろうとして、ロシア語(ほんとはウクライナ語だが)のウィキペディアを開いたら、あれ?あれ? なんとそこに「日本のバンドゥーラ奏者・歌手 ウクライナ出身」(Наталья Гудзий ― японская бандуристка и певица украинского происхождения)とありました。すでに日本国籍をお持ちのようです。つまり、日本人。

偶然ながら、日本出身のロシアのスケート選手、川口悠子、とアレクサンドル・スミルノフのペアが、世界選手権のエキシビションYouTubeで使ったのが、この同じ曲。震災と核汚染のためキャンセルされた東京に代わってモスクワで開催となった大会。川口は東北・福島で被災・被曝した人々に思いを馳せて、この歌を選んだといいます。



 (2011/5/19) 
ふたたび テレビ人の底力を見せつけたドキュメンタリー

ETV特集 5月15日の夜NHK教育で放送されたドキュメンタリー番組『ETV特集 ネットワークでつくる放射能汚染地図 〜福島原発事故から2ヶ月〜』YouTubeがYouTubeで見られます。放送を見ていなかった私は「福島原発事故」で知りました。そこに、(NHKなので)削除されるかも知れません、早めにご覧ください、というコメントがありました。早めに見ました。これは、毎日放送MBSが2008年に制作したドキュメンタリーを思い起こさせる力作。

YouTubeでは7つのクリップに分割されています。【注:5月25日 この7分割クリップは削除されました】その最後で、立ち入り禁止区域の家に置き去りにされる愛犬が、飼い主の走り去る車をいつまでも追いかけてくるシーンが、ナレーションなしで強い印象を残しています。

これで終わっていたはずのドキュメンタリーに、感動的な続きがあります。その(7)のクリップのコメントには、この犬が現在保護されている、という書き込みがあり、リンクをたどると、犬を救出した動物救済グループ『犬猫救済の輪』からこの犬を引き取っていた里親の方が、その自身のブログで報告されていたのです。 

動物救済グループがどうやって犬を保護したのか、飼い主さんにそのいきさつを伝えたときの話もそのブログに紹介されておりました。

犬猫救済の輪さんの話では 龍(パンダ)は 4月22日の制限時間ぎりぎりに パトカー巡回に
せかされている状態のところに 車を追いかけてきたので 車はまんぱんだったけれど
置いてこれず保護 その時に一緒に くろっぽい犬と猫が数匹いたけれど 逃げてしまい
龍しか保護できなかった 間違いなく 今は入れない制限区域にいる・・・・とのことでした

飼い主さんに その話をすると 涙声で
    
  3月11日から 4月21日までに11回えさをやりに行っていました
  21日連れて出ようと思ったけれど 全部は無理1匹だけ連れて行くことも出来ず
  泣く泣く置いてきたんです。でも お父さんが 俺は間違った判断をした
  犬1匹助けられないで 俺は責任を取って死ぬと言い出して・・・・・
  パンダが見つかったことで お父さんの命も助けてもらいました
   
と、何度も何度もお礼を言われました。
『猫ぽっかぽっか!プラスわん』
小出裕章氏の講演に、チェルノブイリの事故の後で強制避難させられる人々の写真が紹介されます。その中に、ほかの人が家財など持てるだけ携えているのに、ただ飼っていた猫と、おそらくその餌やりのための釜だけを抱えて、バスに向かう老婦の姿がありました。
この番組の再放送が今夜NHK総合であります。午前1:30〜と、とんでもない深夜になりますが、それでも再放送されるだけ良しとすべきでしょう。YouTubeの「視聴率」もどんどん上がっています。


 (2011/5/17) 
原町火力発電所 - 報道されない発電所の被災映像

石油コンビナートの火災の写真が、誤って福島第一原発の爆発炎上として一部の海外ニュースサイトで伝えられて、それが逆輸入されて日本のブログなどでコピーされていることを、先日お伝えしました(5月10日)。

そのコラムの追記で、問題の映像のソースを紹介しましたが、そのときちょっとためらいがありました。じつはその写真集のなかで、福島第一の爆発前の一号炉と説明のある写真2点(No.69/70)が、どう見てもフクシマではなかったのです。情報ソース自体にも間違いはあり得ることですが、ではこの発電所はどこのものかというと、それがなかなか突き止められないでいました。というのも、原発を含めて、日本の発電所の全景を空中から撮影した映像が、そもそもあまりないのです。

<写真に添えられた説明>
70. A helicopter flies past Japan's Fukushima Daiichi No.1 Nuclear 
reactor March 12, 2011. Japanese nuclear authorities said that there 
was a high possibility that nuclear fuel rods at a reactor at Tokyo 
Electric Power's Daiichi plant may be melting or have melted, Jiji 
news agency reported. REUTERS/Kim Kyung-Hoon 
"The Japan Earthquake and Tsunami Aftermath"
TotallyCoolPix.com
それが、福島県南相馬市の原町(はらまち)火力発電所(東北電力)であることをようやく確認できました。Yahoo!地図から多分これだと見当はつきましたが、その決め手になったのが、以下の、まったく個人の方の撮影した2つのビデオ映像でした。
『南相馬市原町区北泉 火力発電所を散策(3)2011.5.5』YouTube
福島・原町火力発電所が大津波に襲われる瞬間の映像YouTube
【追記 2011/5/18】震災翌日の3月12日に福島の海岸線一帯をヘリから撮影した貴重な映像がありました。原町発電所と爆発前の福島第一原発の全景が撮影されています。ひょっとしてこのヘリがロイターの写真に写っているヘリか? 映像には別のヘリの機影も。
 『東日本大地震 福島上空(2)(3/12撮影)』YouTube

ロイター提供の写真では、一見すると被災したような様子がないのですが、上のビデオを見ると、クレーン(揚炭機)が折れ曲がっているし、湾内に停泊しているように見える船(石炭船)も、じつは沈没していて、津波の凄まじさが想像できます。

で、原町火力であることを突き止めるのに手間取ったいちばんの理由が、東北電力のHPにこの発電所の被災に関するプレス報道がなにもなかったことでした。ほとんどニュースにならなかったものと見え、被災映像が報道された形跡が見つかりません。ですので、この写真の間違いに気づいた人はいなかったのではないか。

念のためWikipediaにあたると、被災について以下の短い記述がありました。

2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震で施設が津波の直撃を受け、甚大な被害を受けた。
避難時に社員1人が死亡し、油漏れによる火災が発生。揚炭機全4機が破損し、8万トン級
の石炭船も沈没した。同発電所は福島第一原子力発電所事故による屋内退避圏に当たり、
現在も復旧の見通しは立っていない。
『原町火力発電所』Wikipedia
復旧の見通しどころか、無人状態で廃墟のようです。福島第一から30キロ圏内と、かなり近いので、ロイターのカメラマン(またはパイロットか編集者か)も勘違いしたものでしょう。ここにあえてビデオを携えて踏み込んだ方は、好奇心からかも知れませんが、結果としては貴重な映像記録を提供してくれたことになります。

さて、今回の一連の映像ソース捜しで、考えさせられました。それは、映像(動画、静止画)は、単独では強い印象を与えるのに効果的だが、ときとして全体像を隠してしまうリスクもあること。けれど、まったく関係のない目的で撮られた映像でも、うまく組み合わされて関連づけられると、モザイク画のように、それまで見えなかった新しい事実が現れる、ということ。

その意味では、ロイターとTotallyCoolPix.comは、これだけの量の3月12日の映像を提供するこことで、この日、どこでなにがどうなっていたのか、その全体像に迫ることを助けています。(なお、TotallyCoolPix.com編集部にはこの写真の記述のミスについて伝えているので、そのうち訂正されるものと期待します)



 (2011/5/16) 
ことばのちから その3「ウクライナから来た歌姫」

ナターシャ・グジーYouTube


 (2011/5/13) 
よそのマンションに放置?隠匿?

3月に福岡市でNo.4'726 BROS400を盗難されたMさんから、発見のお知らせがとどきましたので、紹介します。

私のバイクが見つかりました。

5月9日に警察から見つかったので取りに来てくださいと電話がありました。
連絡が来たのは博多警察署でした。
南区で盗難に遭い、発見は博多区の某マンションの駐輪場でした。
古いバイクでしたので売る価値がなく、乗り捨てたようです。
盗んだのは若い二人組でした。(監視カメラに映っていた)

私にとっては10年所有したバイクで大変愛着があり、戻ってうれしいです。
無傷ではないので、どの程度元に戻るかはわかりませんが、大きな破損ヶ所は
外観では見られません。

大切に乗っていけたらいいと考えています。
リストにFOUND!を入れてください。

よろしく、お願いします。  
見つかって良かったですね。BROSも今ではレアなモデルと呼べるかも知れません。転売目的もあったかも知れませんが、乗り回し目的の場合、盗んだバイクの置き場所に困り、よそのマンションの駐輪場にちゃっかり紛れて置いておく、という手口が過去に何件がありました。集合住宅だと、だれのバイクだか分からずとも駐輪できてしまうことがあるからです。そのときは、たまたまマンションの管理人さんが不審なバイクに気づいて通報したら、盗難されたバイクだったとわかり、オーナーの元に帰ることができました。今ではなかなか見かけることがないBROS400、これからも大切にお乗りください。


 (2011/5/11) 
原発推進は「国策」ではない

ある会話。

ーこんな事件が起ったんですから、
 原発反対運動は黙っていても起りますよ。

ー甘いな。
 こんなことで、世界一無関心な東京都民が
 動くと思うか!
 人間は過去のことはすぐ忘れる。
 終わったことには関心がない。
福島原発事故はまだ終わっておりません。事故の発生からずっとメディア報道を追っておりますが、その中で気になった用語がふたつあります。ひとつは「想定外」、もうひとつが「国策」。

「想定外」についてはここでわたしから言うべきことはありません。もうだれもが、このことばのまやかしを理解しています。けれど、「国策」のあやうさについてはどうだろう?

原発反対の立場の人からも、国策という表現が不用意に使われているような気がしてなりません。原発推進があたかも国策であったかのような前提の議論に、ちょっとまてよ、と思うんです。それって、いつ「国策」になったの?

原発建設はたしかに、歴代政権と官僚機構が押し進めてきたことはわかります。それを今「国策」と呼ぶのは、推進派とそれに協力してきたメディアにとっては、「国」に責任転嫁する意図がないとも言えない。もちろん、反対派にとっては、国の責任を問うつもりであることは分かります。でも、両派とも「国策」を、かたや免責の、かたや非難の、キーワードにするということに違和感を感じてしまうんです。

そもそも、原発を推進するということが国策でありえるのか? 国策と呼ぶべきはむしろ「原子力基本法」じゃないのか。

原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、
民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、
進んで国際協力に資するものとする。
『原子力基本法 第2条 (基本方針)』
つまり、「民主・自主・公開」の平和利用3原則こそ国策であって、それを、「議論排除・強行推進・情報隠蔽」してきた原発村グループは、その意味では、国と国民に背いた「反国家的」行為を行ってきたんじゃないのかしら。そして、にわか反原発論者が安易に「国策」と非難するとき、そこにそれまで傍観者でいたことを免罪したい気分が潜んでいないか?

冒頭引用した会話は、じつは2011年3月11日以後に交わされたものではありません。すでにご覧になった方はお分かりですが、5月6日に紹介した7年前の映画『東京原発』YouTubeのラストに近いシーンでのせりふ。せっかくだから(ネタバレではないので)言ってしまうと、この映画はそのタイトルが示すように、原発をストーリーにしてはいますが、そのハイコンセプトはじつは原発ではありません。それは、

<豊かな生活を享受する大都市生活者が傍観者でいられるわけ>
わたしが「国策」の危うい用法に気づいたのは、この映画がきっかけでした。


 (2011/5/10) 
ファンはいらない

4月29日に明治大学で開催された講演会『終焉に向かう原子力 第11回』での小出裕章氏の講演ビデオを5月7日のコラムで紹介しました。その講演会にはもうひとり講師がいて、それが広瀬隆氏でした。その広瀬氏の講演録画もYouTubeにアップされていました。

その著書『原子炉時限爆弾』についてはすでに エッセーで取り上げましたが、わたしはこの本でいろんなことを教わると同時に、危機を訴えるその熱のこもった文章にも共感しています。

ある意味、小出氏と広瀬氏の講演スタイルは対照的で、おもしろい組み合わせと言えるかも知れません。小出氏の話には、なるほど、とうなずく知的な刺激がある一方、広瀬氏の話では、えーっ、そうなの、と新事実を突きつけられる驚きにあふれています。でも、推進派だろうと、反対派であろうと、その言説を頭から拒絶または信奉という姿勢はわたしはとりません。科学とジャーナリズムの世界ではキリストやファンは不要です。

で、広瀬氏の講演ビデオを見ていたら、右の写真を投影してこう解説していました。

こんな写真はみなさんご覧になったことないでしょ、テレビでも。
私もこれ見てびっくりしたんです。
これ、ヨーロッパで報道されていた写真なんで、
えーっ、と思いまして、ね。
でも、ここにFukushima nuclear power plant explosion in Japan
と書いてあるから、福島の爆発の写真であることは間違いない.
こんなすさまじいものをヨーロッパ人は見ていて、日本人は見ていないんですよ。
『広瀬隆氏講演 「終演に向かう原子力 第11回」 2011.4.29』YouTube
わたしも見たことない写真だったので、びっくりしました。日本の外で福島のことがどう報道されているかは、人一倍注意して見ていたつもりでしたし、3月13日にとりあげた、爆発映像の報道統制をきっかけにして、このコラムでは事故の事実とメディア報道を中心テーマにしてきました。

で、この写真ですが、こんなに放射能物質が放出されていたら汚染はチェルノブイリどころではないのではないか、と直感してしまいます。でも、この写真の煙の上がり方をよく見ると、原発の爆発事故というより、ふつうの火災事故のように見える。いったいこの写真の出所はどこなのか、と「Press TV」で捜したら、どうやらこの記事らしい。

'Japan careless about radiation dangers'
Press TV Thu Mar 24, 2011 9:4AM
イランを本拠にして、英語で発信する国際的ニュースネットワーク、と自ら謳うサイトで、記事は福島原発事故についてある教授にインタビューしているもの。インタビューではこの写真への言及はない。たしかに、Fukushima nuclear power plant explosion in Japanとあるが、ソースやクレジットの表示がない。さらに写真の海岸線が「Yahoo! 地図」で見るのとずいぶん違っている。

ということで、わたしの見るところではこれは福島第一ではない。万が一福島だったとしても、確かなソースの明示がないものは資料として意味がない。ネットで検索した限りでは、この写真を掲載していたブログがいくつかあったが、それはみな、内容をチェックもしないで、たんにコピーしているだけのもの。

このPress TVはおそらく日本人スタッフがいないために、ミスに気づかずに写真を取り違えただけでしょう。広瀬氏の講演は、この写真が福島原発のものでなかったとしても、その講演論旨が根拠を失うというものではないので、その意味では大騒ぎするほどのものではありません。ただ、わたしは小さなことであっても、こと事実の追求にあたっては、厳密すぎるということはないと考えるものです。


【追記 2011/5/14】写真は仙台市と塩釜市の境にある石油化学コンビナート火災

やっと映像のソースを突き止めることができました。ロイターが配信したもので、3月12日に撮影された93枚が掲載されている以下のサイトのNo.57の写真がそれです。

"The Japan Earthquake and Tsunami Aftermath"
TOTALLY COOL PIX.COM
写真には、ちゃんとSendaiと明示されています。でも、解像度が違うだけで全く同じ写真かというと、Press TVが掲載している写真は周囲がトリミングされていて、左上のロゴもありません。だれかがどこかの記事に軽率に貼り付けたものが独り歩きを始めたものでしょう。

この93枚の写真のなかには、この火災現場の至近距離から撮影した画像もありますが、これだけだと、あのフクシマだという画像と同じ火災とは気づきません。でも、ちょうどいい具合に、No.65の写真が同じ位置と思しき空中から、広角寄りのレンズで撮影していました。それが右の写真。これならどう見てもフクシマでないことが分かるはずでした。

で、この burning factory というのがどこなのかさがしたら、ENEOS仙台製油所でした。そのHPに掲載されているプレス報道によると

 3月11日 20:00頃 爆発炎上
 3月13日 13:00〜 七ヶ浜町長の要請により、所轄消防殿と当社所員が
          自衛隊ヘリにて状況確認
 3月15日 11:00頃 消火活動開始
           14:30  鎮火
『【重要】東北地方太平洋沖地震による仙台製油所での火災について(第4報)』
(JX日鉱日石エネルギー 3月15日)
まるまる4日間燃え続けていたようです。それなのに、空から撮影した映像が公開されないでいたのでしょうか。

地上から撮影した限られた映像が、以下のニュースと、近くの住民の方が撮影したものがYouTubeにありました。

『【地震】被災地現場リポート 仙台コンビナート火災(11/03/13)』YouTube
『20110312エネオス仙台製油所大火災.MP4』YouTube
さて、今回の件であらためて考えさせられたことがあります。それはまず、画像や動画って検索が難しくて、ソースにたどり着くのも大変ということ。たったこれだけのことなのに、私は半日以上の時間を費やしてしまいました。ネットは「容易に」情報を得られる、と思われがちですが、じっさいはそんなことありません。どんな情報が「ある」かは簡単にブラウズできるかも知れませんが、どんな情報が「ない」のか知ることも重要だと思う人には、ネットだろうと、活字だろうと、苦労は似たようなものです。

もうひとつは、今回は舞台が日本なので日本人の私はすぐに「ない」ものに気づきましたが、これが中東などのニュースであれば、場所がどこなのか、頓着しないでいるのがふつうです。ほんとは、こうした映像をすべて、日本国内にも、海外向けにも、同様に公開していれば、逆輸入された情報に振り回されることはなかったものです。

なお、Press TVの編集部宛てに、あの映像は福島原発には見えないこと、それと写真のソースはどこか、とメールを送ってあるのですが、なんにも返答がないので、そのままにしております。なんらかの反応があれば、この内容を詳しく教えてあげるのはやぶさかではありません。



 (2011/5/9) 
なにが「ない」かを問う

難解な哲学的命題を日常会話で議論した、よく知られた例のひとつにこんなものがあります。

おまえは机の上になにがあるかは、すぐに言えるだろ?
だが、机の上になにがないか、分かるか?
あるべきものがない、あったものがなくなっている、という日常の簡単なことが「ある」と「ない」の概念をペアで考える必然へと導きます。

柏崎刈羽原発でPR資料を収集したことに触れました。このところ、原発推進派の学者や電力会社などの原子力安全PR資料を渉猟していて気づいたことがあります。それは、コンテンツの基本構成がみな同じ。とくにデータや数値などは、クローン情報と呼べるほど、はみ出しがない。典型的な例が、放射線が安全だと印象づける文書には必ず自然放射線被曝量の「世界平均」が2.4mSvと記載される。

ところが、机上の議論だけならそれで閉じていられるが、こと現実に原発事故や地震津波が発生すると、それまでの膨大な安全理論の説得材料が内部で矛盾をきたすことになってしまいます。つまり、原発の事故は起きない、と主張してきたこれまでの広報文書に、なにが書かれていたかとともに、なにが書かれていなかったのか、ということまで見えてきます。

上の例をとると、世界平均の2.4mSvの記述はあるのに、日本平均の1.5mSvの数字がない。ところが、ここで4月28日に取り上げたように、推進派文書にうっかり載せてしまう失態もするし、じつはそれが1.5mSvよりも低いことを示唆する別のデータまで混在させています。これだけ広報資料を乱造すると、つじつま合わせがたいへんで、苦労が偲ばれます。

とくに福島原発事故で放射能汚染の被害が現実のものとなると、いよいよつじつまを合わせることができなくなります。すると、文書を破棄することになるでしょう。証拠隠滅。そこで、柏崎刈羽のサービスホールに残る資料の収集となったわけです。

その中にこども向けのパンフレットがありました。『こちら放射線研究所』(東京電力 立地地域部 広報グループ 2010.8 印刷)。これだけばらまいているパンフレットだから、ひょっとしてpdf にしてホームページにもあるかもしれない、と東電のホームページに行くと、見当たりません。というのも、メニューのなかでメインのページであるはずの、「くらしとソリューション」、「学ぶ・知る・楽しむ」、「社会・環境分野の取り組み」 がそろって公開中止にされていて、こんな急告があるだけ。

「同地震に伴いまして、当面の間、当コンテンツの更新を控えさせていただきます」
http://www.tepco.co.jp/life/index-j.html
削除のことを「更新未定」とは、ものは言いよう、というところか。

ところが、急にホームページを改ざんしようとするから、手抜きをしてしまうんですね。これらのパンフレットが掲載されていた「原子力」のサブディレクトリーを削除するのが忘れられています。

http://www.tepco.co.jp/nu/pamphlet/index-j.html
頭は隠しても、お尻が隠れていない。なにが「ない」のか、見えたままです。いずれ削除されるでしょうから、関心ある方は今のうちにご覧になってください。このメインのページ「原子力」は大急ぎで「更新」されたらしいが、コンテンツはこれだけ

さて、その「放射線研究所」のパンフレットを問題にしたのは、こども向けと思ってちょっと高をくくったのか、すこし変化を与えようとしたのか、そこにこんな雑学知識が挿入されていたからです。

「放射線トリビア 宇宙旅行はビールとともに!?」
空気層や磁場が天然の「傘」になる地上とちがい、宇宙では大量の
放射線が飛び交っています。このため宇宙開発の一環として、放射線を
効果的に防ぐ物質や素材の研究が進んでいます。近年では何とビールが、
 放射線の影響を抑制するすぐれた効果を発揮することが分かってきました。
将来の宇宙旅行では、飛び立つ前にビールで乾杯・・・といった光景が
普通になるかもしれませんね。
(『こちら放射線研究所』8ページ)
いったいこれは何なんだ?とソースを捜したら、この文書のようです。
「ビール成分に放射線防護効果を確認
放医研・東京理科大の研究チームがヒトの血液細胞とマウス実験で実証
放射線防護効果は最大34%にも」
(平成17年8月11日 プレス発表 独立行政法人 放射線医学総合研究所)
http://www.nirs.go.jp/information/press/2005/08_11.shtml
またもや例の佐々木康人氏が理事長を務めていた「研究所」です。なんでも、「東京理科大学薬学部放射線生命科学の研究チームと共同で」実験、実証したというが、はて、その後研究者間でどう評価されているものやら。でも、これを本気で発表したからには、佐々木氏(現 日本アイソトープ協会常任理事)はきっと福島原発の放射能汚染で避難している人々に、大量のビールを差し入れているものと想像するが、そのようなプレス発表は、ない。


 (2011/5/8) 
もうひとりの「1人」

今YouTubeでよみがえる過去の貴重な映像遺産。これはじっさいに被曝した人々の人生を変えた「1人の」医師の話。

『チェルノブイリの傷 奇跡のメス』(NHKプロジェクトX 2003年5月放送)YouTube
菅谷昭医師は現在松本市長。福島原発事故発生後の3月22日の定例記者会見YouTubeにて、内部被曝についてコメントされています。今年はチェルノブイリ事故から25年。その特集番組がNHKで近々放映されるようですが、この機会に、チェルノブイリ原発事故について、過去の報道記録や映像資料などを掘り起こすことも、意味のあることと思います。


 (2011/5/7) 
「社会を変えていくのは数ではない。1人です。」

連休に実家に戻っていた間に、東電柏崎刈羽原発のサービスホールというPR施設を見学してきました。いったい何が展示されているのか見ておきたかったのと、あわせて、配布されているPR資料を収集しておきたかったためです。印刷物としてのPR文書はすぐには改訂できないものなので、今回の福島原発事故の前と後とで広報内容がどう変わるか、証拠物件を押さえておこうというわけです。

原発敷地に隣接する場所にあるサービスホールは、車が40台ほど停められる駐車場があるのですが、連休とあって、ほぼマイカーで埋まっておりました。大方はご当地長岡ナンバーでしたが、なかには福島ナンバーも何台がありました。

行ってみたら、ゴールデンウイークのための特別企画として、通常は入れない発電所構内をバスで見学するツアーがあったので、ラッキーと喜んで乗車しました。あらためて、ここの立地条件が、地震のみか、津波に無防備であることを実感しました。

その地震と津波にたいして脆弱な原発について、昨夜、菅総理が「国民に向けて」緊急の声明を発表して、浜岡原発を全炉停止するよう、中部電力に要請した、というニュースがありました。唐突な印象を禁じえませんが、どこか菅総理お得意のパフォーマンスの匂いがします。当然ながら、会見時に記者団からの質問に、

中部電力はこれまで東海地震並みの揺れが起きても安全性に問題はないとしてきて、
国も容認をしてきたわけですけれども、なぜこの後に至って突然浜岡原発だけなのか
と問われて、
浜岡原子力発電所が所在する地域を震源とする、想定される東海地震が、この30 年
以内にマグニチュード8程度で発生する、そういう可能性が87%と文科省関係機関から
示されております。そういう浜岡原発にとって特有といいますか、その事情を勘案をして
、国民の安全、安心を考えた結果の判断、決断であります。
『菅内閣総理大臣記者会見』(首相官邸 2011年05月06日)
と、最初の声明文の内容を繰り返したものの、これを浜岡原発にとってだけの特有の事情にするのは無理がありあり。人気回復のための、場当たり的なパフォーマンスであっても、原子炉停止は歓迎しますが、それは菅総理の決断というより、反原発の運動の盛り上がりがそこまで追い込んだ結果でしょう。

このところ、テレビのニュースよりもYouTubeに代表されるネットの動画配信がジャーナリズムの中で比重を高めています。昨日気づいたのですが、4月29日に東京の明治大学で開催された小出裕明氏の講演会のようすがやはりYouTubeにアップされておりました。これも、4月10日のこのコラムで紹介した山口県柳井市で行われた講演会同様、3.11の前から企画されていたもので、はじめ少人数の会場を予定していたのを、急遽1000人以上入れるおおきなホールに変更したものの、それでも会場に入れなかった人が大勢いたとのこと。

『小出裕章氏 講演直前 満席で会場に入れなかった聴衆に語りかける』YouTube
『小出裕章氏講演 「終焉に向かう原子力」第11回 2011.4.29』YouTube
『小出裕章氏講演 配布資料「悲惨を極める原子力発電所事故」2011年4月29日』PDF
講演の基調は、上の柳井市での講演内容と共通していますが、東京という場所での講演のために 随所に変更が加えられています。なかでも印象に残るのは最後のこのエピソード。
最後にしますが、田尻宗昭さんご存知でしょうか?
昔、四日市の公害の企業を摘発して、海上保安庁にいたころですけれども、
その後東京に移って、公害企業と闘うという一生を貫いた人です。
住民運動にも積極的に関わってくれた(そんな)人がいました。
今から約20年ほど前にすでにお亡くなりになりましたけど、
たいへん優れた人だったと、私は思います。
その人が、

 「社会を変えていく力というのは数じゃない」

と。今日こんなにたくさんの人が来てくださっていることを私はありがたく思いますけれども、
でも、「数ではない」と彼が言っています。彼がなんて言ったかというと、

 「一人です」

と、言ったんですね。
一人一人が、ほんとうにこれをやりたい、これだけは止めさせたいという、
その熱意が社会を変える、というふうに田尻さんは言っています。
私はほんとにそうだと思います。
私一人、あるいは皆さん一人一人の、熱意がどれだけあるか、ということが全てを決めるのだ
と思います。ただし、田尻さんはそこで留まらなかった。そのときにこう言った。 

 「二人です、三人です」
小出さんは、講演のなかでいつも、自らを「原子力を進める国と巨大産業にたいして無力だった。ひとつも原子力を止めることができないまま来てしまった」と責任をかぶる言い方をされますが、浜岡を止めたのは、事故があったからだけでなく、菅総理の英断でもなくて、事故が起る前から、小出さんやほかの大勢の「一人」がいたからだ、とだれもが分かっています。

柏崎刈羽のサービスホールから帰るときに駐車場の車に向かうと、そこに他県ナンバーのBMWのツアラーバイクが1台、停まっておりました。



 (2011/5/6) 
こちらはテレビ・映画人がその底力を見せつけた作品

『なぜ警告を続けるのか〜京大原子炉実験所・"異端"の研究者たち』 高画質版YouTube
ひと月前の4月10日に紹介したこのテレビドキュメンタリーは「Googleビデオ」にアップされた低画質のものでしたが、もっと高画質の録画をYouTubeにアップしてくださった方がおりました。実験所でインタビューされる小出裕章さんの机の上に、亡くなられた「六人衆」のひとり瀬尾さんの写真とともに、ピカソのゲルニカが貼り付けられているのがはっきり見えて印象的です。
映画『東京原発』 予告編YouTube
映画『東京原発』 本編 01〜08YouTube
こちらは2004年に公開された映画。それをYouTubeに全編アップしてくださった方がいらっしゃいます。出演している演技派俳優陣がまたすごい。サスペンスとユーモア、白熱の原発議論、それにラスト近くのどんでん返しと、エンタテインメント作品としても楽しめる秀作。柏崎刈羽と福島第一という二つの原発事故の後で見ると、その現実感がまるで違ってきます。


 (2011/5/5) 
学者生命を賭けるということ 続き

連休を利用して29日から今朝まで、実家の柏崎に戻っておりました。田舎ではまだブロードバンドを引いていないので、ダイアルアップ接続でメールチェックはできるのですが、さすがにブラウザーの表示も遅いし、動画などを見るのは無理。

で、4月30日のコラムでは、内閣官房参与を辞任した小佐古敏荘氏について、背景や経歴などを調べることができませんでした。原発推進派というより、協力派くらいではないか、と思っていたのですが、あらためて検索すると、「2003年以降の原爆症認定集団訴訟では、国側の証人として出廷し、国の主張に沿った証言を行った」(Wikipedia)積極派であったことを非難するブログ記事が目立ちます。

でも、わたし思うんですよ、かつて原発推進派・協力派だった学者が(あるいはタレントや評論家でも同じだけど)、自らの間違いを認めたり、そうでなくても、せめて推進派の打撃になるような反旗をひるがえすことが、原発をなくす運動の動力には必要だ、と。ですから今後、小佐古氏が以前の御用学者振りをどう清算するかを見守るべきでしょう。

その意味で、小出裕章氏の懐の深さも見習うべきでしょう。以下、『たね蒔きジャーナル 5月2日放送』YouTubeより。

 ーこの辞めはった小佐古さんという方は、この原子力の専門家として、
  小出先生のご存知の方ですか?

はい、わたしのけんか相手です。

 ーあっ、あっ、そうですか!
  じゃもう、まったくその、議論で180度違うような方ですか?

そうです。

 ーはあー、これまで、どういうことを、どういうお立場で、
  お話をなさっていたような方なんでしょうか?

たとえば、静岡県には浜岡原子力発電所というのがあるのですけれども、
その浜岡原子力発電所に対する、静岡県の技術アドバイザーになりまして、
浜岡原子力発電所は絶対安全だ、というふうに言ってきた人です。

 ーあっ、そうなんですか。
  浜岡原発は地震の予想されている、ほんとその地域の真上にあるのだから、
  という話が今いろんなところで議論になっている原発ではありますよね。

そうです。

 ーこの、今回お辞めになった小佐古さんがおっしゃっていること自体は、ですね、
  小出先生がもう先週の前半からおっしゃっていたこととおんなじなんですよね。

はい、今回彼が言っていることは大変まともです。

 ーああ、そうですか。

はい、わたしは彼を評価したいと思いますけれども、
いつからどうしてこんなふうに変わってしまったのかな、
というのがわたしの疑問です。

 ーはあ、以前だったら、こういうことをおっしゃらないようなお立場の方でしたか?

そうでした。

 ーそういう方が、このように、やはり今の政府のやり方は違うんだと、
  このままであれば、自分の子供にはこんな体験をさせたくない、ともおっしゃり、
  学者としての生命を亡くしてしまうんだと、こんな事を認めたら、
  という強いこともおっしゃっています。
  ここまでおっしゃるというのは、小出先生からご覧になると
  どんなふうに見えますか?

小佐古さんがこんなことを言うのは、わたしは大変意外でした。
ただ、今回の彼の発言はわたしは正しいと思いますし、
彼を支持したいと思います。


 (2011/4/30) 
学者生命を賭けるということ

昨日29日の夜のTVニュースで、内閣官房参与の小佐古敏荘東大教授(放射線安全学)の辞任会見が短く報道されました。そこで小佐古氏は、こどもの放射線被曝許容量を年間20シーベルトと国が決めたことに抗議して、それを認めることは、自らの学者生命を終わらせことだ、と涙ぐみながら辞任の理由を明らかにしておりました。

Yahoo! News 配信の毎日新聞が伝える記事によると、

小佐古氏は、学校の放射線基準を年間1ミリシーベルトとするよう主張したのに
採用されなかったことを明かし、
 「年間20ミリシーベルト近い被ばくをする人は原子力発電所の
  放射線業務従事者でも極めて少ない。この数値を乳児、幼児、
  小学生に求めることは学問上の見地からのみならず、私の
  ヒューマニズムからしても受け入れがたい」
と主張した。【吉永康朗】
『<福島第1原発>内閣官房参与、抗議の辞任』
毎日新聞 4月29日(金) 21時9分配信
原発は安全だ、放射能は安心だ、と触れ回り、事故が起こると今度は放射能汚染の実態を小さく、小さく見せようと活躍する「揺るがない」学者たちがマスコミにはびこる中で、学問的良心を守っている学者や専門家も少しずつ表に出てきています。

毎日新聞の上の記事を引用したのは、じつはその中に、タイミングよくおととい28日に取り上げた「揺るがない」学者のひとり、佐々木康人氏からコメントをとっていたからでした。これは毎日ならではの取材力か。

ICRP主委員会委員を務めた経験がある佐々木康人・日本アイソトープ協会常務理事は
 「小佐古さんは放射線防護に極めて詳しい研究者。政府は今のところ
  厳しい側の対応をとっており、影響が出ることはない」
と政府の姿勢に理解を示す一方、
 「ICRPは同時に妊婦や子どもへの配慮も求めている。できるだけ
  被ばくを減らす努力は必要であり、政府が対策をきちんと示すこと
  が必要だ」
と指摘する。【西川拓】
同じ専門分野の「極めて詳しい研究者」から学問的良心を見せつけられて、佐々木氏のコメントは支離滅裂。自身が「貴重な実験」のまな板に乗っていることに気づいているのか、いないのか。


 (2011/4/28) 
「原発被災は替え難い貴重な実験」

わたしの実家のある柏崎の東京電力柏崎刈羽原発は、2007年7月に起きた中越沖地震で事故を起こしましたが、それを「替え難い貴重な実験」と、あくまで「揺るがない」原発推進派学者の会見がYouTubeにアップされていました。

『柏崎刈羽原発 不適切な発言-逃げるように辞任』YouTube
2007年8月3日

「千年か1万年(に一度)か分かりませんけど、言われていた地震が、
あー、10月の・・・、あっ 間違えた、7月の・・・、(隣の同席者に)
16日か、起きたということは大変なショックでした。替え難い貴重な
実験だったんですね。歴史的な実験、かも知れないですよね」
と、事故後の立ち入り調査の後に、楽しそうに会見した翌日、「一身上の都合」により辞任したのは、「新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」の宮健三座長 法政大大学院客員教授(当時)。

まだネットに残る共同通信のその記事によると、

宮教授は理由について「委員会が発足して以来(委員の職が)長くなった。他にも国の
委員会の委員などを兼務するようになった」と多忙であることを挙げた。発言には触れ
なかったという。  技術委員会は、柏崎刈羽原発の安全性に関する助言をするため
さまざまな分野の専門家で構成。宮教授は委員会が発足した2003年2月から座長を
務めていた。 
『中越沖地震「貴重な実験」 県原発技術委員が辞任』
2007/08/03 11:01 【共同通信】
とのことで、兼務する委員があって忙しい、とせっかくの千年に一度の貴重な実験の検証を、かんたんに棒に振ってしまいました。そして、また「千年に一度」の震災が、今度は東北の福島原発を襲ってくれたので、どこかで楽しそうに実験をご覧でしょう。

で、教授は今どんな役職を兼務されているかというと、ネットでヒットしただけでも、 日本保全学会の会長、(株)普遍学国際研究所の所長、NPO 法人 IOJ (日本の将来を考える会)の代表と、ほんとにご多忙そうです。けれど、この3社、住所がみな同じ。

この3つ目のNPO法人IOJは、3月18日付けで、「報道関係者各位 プレスレリース」として『福島原発の事故を理解するための基礎知識』という文書を配布しています。それはこんな書きだしから始まっています。

私達は放射性物質と共に生活しています。 大気や大地、そして、毎日食べている食料
からも放射性物質を取り込んでいます。地域にも若干の 違いがありますが、日本では、
普通の人が受ける放射性物質は年間約 2.4mSv(ミリシーベルト) になります。(中略)
今回、福島原発の事故で漏れた放射性物質量で最も多かった 3 月 15 日午前中でも、
原子炉から数 百メートルの観測地点で約 12mSv(ミリシーベルト)でした。これは、
およそ医療用 CT スキャン 2 回分の放射性物質の量です。
宮代表が監修しているでしょうに、「放射線被曝量」というべきを「放射性物質」と言ったり、「1年間の」被曝量 2.4mSv にたいして、原子炉付近の観測値 12mSv という数字の単位「1時間あたり」を抜いたりと、素人の作文なのか、専門家の作為なのか、分かりませんが、でも、わたしがずっと気になっていることがあります。それは、推進派の方々の放射線議論が、どれもこれも、かならずこの「自然放射線 2.4mSv/年」から始まっていることです。

べつに、推進派であろうと、反対派であろうと、それだけで切り捨てたり、ありがたがったりするつもりは全然ありません。問題はそこに援用されている事実とデータの信憑性と一貫性にあります。いったい、「自然放射線による被曝2.4mSv/年」とはだれが、どこで、どうやって測って、その意味するところは何なんだろう?

推進派による放射線啓蒙は、どうも文脈からすると、お前たちはただでさえ2.4mSv/年の被曝をしているんだから放射能の汚染や被曝を怖がるな、という筋書きに聞こえる。一般国民の人工放射能にたいする被曝限度 1mSv が小さく見えるのは、結果なのか目的なのか、詮索したくなります。

上で引用した文書では、2.4mSvのことを「日本」での被曝量としていますが、これは「世界平均」の間違い。『基礎知識』の基礎が揺らぎそう。けれど、考えてみるとおかしい。日本での被曝量を議論すべきなのに、なんで世界平均が出てくるの? 

自然放射線 折りよく、丸善から今回の福島原発事故を受けて、放射線にかんするパンフレットがpdfで無償公開されました。その1冊が『身近な放射線の知識』(放射線医学総合研究所編 佐々木康人著 丸善 2006年)。ついでに、著者の佐々木康人氏は当時放射線医学総合研究所の理事長、現在は(社)日本アイソトープ協会 常務理事の肩書きでつい先日も『チェルノブイリ事故との比較』(4月15日 首相官邸災害対策ページ)という、メモ書きような声明で物議をかもしています。

このパンフレットは内容からすると原発推進派の作品のようですが、そんなことは構いません。事実としてのデータを利用します。その35ページの図解にはちゃんとこうあります。

1人あたりの自然放射線(年間2.4mSv) 世界平均
1人あたりの自然放射線(年間1.5mSv) 日本平均
いつも世界平均値だけがこだましていたので、日本平均値が異様に小さく感じられます。ではその日本の平均1.5mSvって何だろう? パンフレットのテキストでは、一人当たり世界平均で年間約2.4ミリシーベルトの自然放射線を受けている、と明記していながら、日本の平均値は数字を提示しないで、そのかわり、
国内では、花崗岩の多い西日本は全般に高く、火山灰で覆われている
東日本は低い。このように自然放射線は地質による影響がある。地域別
にもう少し詳しくみると、自然放射線量が最もすくないのは神奈川県で、
最も多いのが岐阜県である。その差は年間約0.4ミリシーベルトと、世界
平均値の15パーセント近く違うことになる。 (41ページ)
日本の自然放射線量 いったいこの記述は何をいわんとしているのか。その同じページには県別の日本列島の自然放射線量の図がある。カチンして拡大して見てほしいが、4段階のそれぞれは、0.89以下、0.90〜0.99、1.00〜1.09、1.10以上。スキャン画像なのであまり鮮明ではなく拡大しても読み取りにくいが、いちばん高いという岐阜県の数値は1.18と読める。いちばん低い神奈川は0.81か。なるほど、その差は約0.4mSvではある。だが、この最高値と最低値から、どうやったら平均値1.5mSvが導きだせるものだろうか。

原発反対派の人たちも、推進派の人の言うことだからといって、はなから排除してはいけませんよ。柏崎刈羽原発と福島第一原発の事故という事実があり、かつネットでは、昔だったら失われていた発言や映像、隠されていただろう文書や資料が、どんどん公開されています。それをつなぎ合わせると、原発とそれに群がる人たちの、おもしろくかつ奇妙に歪んだ全体像が見えてくる。これこそ、「替え難い貴重な実験」ではないか。



 (2011/4/26) 
ある経済評論家とオートバイ

なにかと大手メディアと対比させられることの多いメディアとしてのインターネット。まだ世論形成の力ではマスメディアに及ばないという文脈で使われることが多い。はたしてそうか。

このコラムでは最近YouTubeなどの動画に重きをおくことを試みています。というのは、よくぞこの映像を録画してアップしてくれる人がいるもんだ、と感心するとともに、それを活用したいと思うから。

たとえば、4月18日のこのコラムで、先月25日放送の「朝まで生テレビ」を取り上げました。わたしは朝生って、昔はちょっと見たこともありますが、今回の田原総一朗の司会ぶりには呆れた。そればかりでなく、出席者の顔触れが推進派に偏っていたように見える。昔の朝生も、茶番的ショーみたいなものだったけど、それでもたまには議論は沸騰していたような気がする。

たまたま、昨日とりあげた本の著者、高木仁三郎の講演か講義がYouTubeにないかと捜して見ました。かれは2000年に亡くなっております。すると、ヒットしたのが、なんと1988年10月28日の朝生でした。25年前の今日、1986年4月26日に起ったチェルノブイリ原発事故。それから2年後のディベート。そこに、高木氏が原発に反対する立場で出演していたのです。

『朝まで生テレビ!「原発」第2弾! No.14 1988-10-28』YouTube
No.15まであるけど、核心部分のひとつがこのNo.14。でもまあ、よくこれを録画していた人がいたものです。これがメディアとしてのネットの力で、だれもが情報提供者になれること。この23年前の田原総一朗の司会ぶりに比べて、今回の朝生は、あれはいったい何なんだろう?

それについて、同じ疑問をもった高野孟が裏事情をこう伝えています。

田原に問うと、「まあいろいろあってね」と言葉を濁したが、周辺に取材した
ところ、当初、テレビ朝日首脳陣は「原発問題は取り上げるな」と番組サイド
に宣告した。当然、田原も番組サイドも「今この時期に他に何をやれと言うの
か」と反発したが、局は「何でそんなに原発問題にこだわるのか」と押し返す。
何でと言ったって、今全国民がこれほど関心を持っている問題はないじゃない
か。すったもんだの挙げ句、推進派中心の当たり障りない顔ぶれで、しかも
原発問題に絞らずに穏健に行うことで妥協が成り立ったらしい。それでも局側
は心配で、幹部が勢揃いして田原が暴走しないか監視し、CMの度ごとに「これ
までのところは、まあ妥当だ」とかプロデューサーに圧力をかけ続けたと言う。
『マスコミが原発事故報道で腑抜けになるワケ(1)』
News Spiral  2011年4月17日 21:33
さて、わたしが朝生をとりあげたのは、言うまでもなく、そこでの経済評論家の勝間和代の発言を看過できなかったからですが、高野もよほど腹が立ったのか、CM出演のギャラを引きあいに出して、こうまで言っています。
勝間なんぞは中電から500万円貰っちゃっているから、「死者が出ましたか?」
とか言わざるをえないのである。
わたしは、先のコラムでことわったように、原発推進CMに出ていたことをもってタレントの個人的な好き嫌いを議論するつもりはない。ただ、自分の間違いは間違いとして認めるかどうかが人として問われると思っているだけです。それが学者であれば、学問的良心というものでしょう。

で、あの「死者がでましたか?」発言ですっかり総スカンを食らった勝間和代が、その後反省して謝罪しているらしい、と耳にしたので、そうなら、批判した手前、反省の弁も公平に紹介しよう、と捜したらヒットしたのが、REAL-JAPAN.ORGに寄稿したこれ。

『原発事故に関する宣伝責任へのお詫びと、東京電力及び国への公開提案の開示』
REAL-JAPAN.ORG 4月15日
今回の福島第一原子力発電所の事故に関し、電力会社(中部電力)のCMに出演した
ものとして、また、電気事業連合会後援のラジオ番組に出演していたものとして、
宣伝責任ある人間として、まずはみなさまの原子力に対する重大な不安への理解、
および配慮が足らなかったことについて、そして、電力会社及び政府のエネルギー
政策上のコンプライアンス課題を正しく認識できていなかったことについて、心
からお詫びを申し上げます。
コンプライアンス課題の認識が不十分だったという内容で片づけようとしているようだが、チェルノブイリと同レベルの原発事故が起ったという事実を「認識」していないように聞えてしまう。

こんなことを調べていたら、当然彼女の個人ブログにまで目を通すハメになってしまった。すると、そこに語られているのは、なんとバイクに乗り始めたという日記。なんでも普通二輪免許をひと月ほど前に取得したとのこと。小柄な彼女が選んだのは、Ninja250R。今のモデルはタイ製だったかな。もちろんDark Angelを知らないだろうから、車体カラーは黒ではなくて白。

原発発言についてはとことん批判するけど、40歳過ぎてのバイク挑戦は見上げたもの。わたしも中年からのライダーなので、その二輪免許奮闘記には共感するものがあります。いずれライダーであることが広く知れると、バイク雑誌やブログ、とくに女性ライダーのブログで、話題にされることでしょう。また、社会の中の二輪問題、たとえば駐輪場問題にはすでに気づいておられるようだが、いずれバイク盗難問題にも気づくことでしょう。そのとき、このコラムを読んでもらうことになるかも知れません。



 (2011/4/25) 
『原発列島を行く』

書店では見つからなくて、アマゾンに注文していた本が先日やっと届きました。鎌田慧の『原発列島を行く』(集英社新書 2001年)。奥付をみたら第一刷が2001年11月22日、第二刷が2011年4月13日。緊急に増刷されたことが分かります。原発問題を扱った良書はロングセラーにはなりにくいので、その多くが品切れ状態でした。このほか、岩波新書からも長いこと品切れ状態だった高木仁三郎の『プルトニウムの恐怖』(1981年)や『原発事故はなぜくりかえすのか』(2000年)が再出版されています。

上記『原発列島を行く』は

過疎地を狙ったように建ち並ぶ原発が、いかにその地の人々に犠牲を強いて
きたか。都会の繁栄の陰で、いびつに進行するエネルギー行政の矛盾がここ
に凝縮されている。日本全国の原発立地点をくまなく歩き続ける著者が、
淡々と綴るドキュメント。(表紙カバーの紹介 より)
というルポルタージュですが、そこに描かれているのは著者自身のことばを借りれば、
 さらに、原発の問題点を挙げれば、その危険性が忌避されて、立地を引き
受ける地域がないために、政府と電力会社ともども、すべての問題をカネで解決
しようとする風習をつくりだしたことである。バラ撒き政治というなら、これ
ほど露骨で、これほど退廃したやりかたはない。(中略)
 人心の汚染、それが環境汚染の前にはじまり、自治体の破壊、それが人体の
破壊の前にすすめられてきた。
(『原発列島を行く』 あとがき 250ページ)
という実態と、そんななかでその利権と腐敗に立ち向かう人たちの勇気と良心です。この原発にからむ利権、汚職、雇用、地方議会、御用学者さらにメディアと、そのあまりの難題を、川内市で原発反対の活動を続けていた当時75歳の女性が短歌で表現しています。
原発を
なんのヘチマと思いしに
知るに知るほど事の多きに
(157ページ)
そんな難題のひとつが自治体の議会選挙です。昨日投票が行われた統一地方選の結果について、まず読売新聞がこういう見出しで論評しています。
『原発反対派、目立った伸長みられず』
(2011年4月25日04時06分  読売新聞)

 東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、統一地方選後半戦では原発が立地
する自治体で安全対策や是非が争点となったが、原発反対派の目立った伸長は
みられなかった。
 東京電力労働組合の組織内候補も、厳しい逆風の中、開票された選挙では全員
が当選した。
欧米のデモクラシーの感覚では、事故を起こしていながらなぜ?という疑問が湧くはずです。ここに、うわべだけは豊かな先進国を装ってきた国の、隠れていた後進性が顔を覗かせます。

朝日新聞はどう扱っているかというと、

『石川・志賀町議選 反原発の元職がトップ当選』
朝日新聞 2011年4月25日0時38分

 原発がある市町村でも24日、投開票があった。福島第一原発の事故で有権者の
関心は高まり、反対派は「脱原発」を主張。一方、推進してきた候補者の多くは、
原発の是非を正面から争点にすることを避けた。
 北陸電力の志賀(しか)原発がある石川県志賀町議選では、4年前に落選した
元職で原発運転差し止め訴訟の元原告団長、堂下健一氏(56)がトップで返り
咲いた。訴訟は昨年、最高裁で敗訴が確定したが、2006年の一審では、稼働
中の原発の運転を差し止める全国で唯一の判決を勝ち取った。 
毎日新聞は、大阪のMBS毎日放送がラジオで『たね蒔きジャーナル』を、そして以前紹介した2008年のテレビドキュメンタリー『なぜ警告を続けるのか〜京大原子炉実験所・”異端”の研究者たち〜』YouTubeを放送しているように、掘り下げ方に特徴があります。
『統一地方選:原発立地の苦悩 再開反対、しっかり監視…』
毎日新聞 2011年4月25日 2時07分(最終更新 4月25日 2時07分)

高速増殖原型炉「もんじゅ」や、敦賀原発が立地する福井県の敦賀市議選(定数26)
は28人が立候補した。だが、候補者の多くは、福島第1原発事故があっても、
有権者の原子力問題への関心は低調だったとみている。

従来、脱原発を訴えてきた4期目を目指す無所属の今大地晴美氏(60)は、
「もんじゅ」や、国内最古の商業炉、敦賀原発1号機の運転継続に反対してきた。
選挙戦でも福島第1原発事故を取り上げたが、有権者には「敦賀は大丈夫」という
反応が多く驚いたという。「“危険手当”としての原発関連の交付金を受け取って
きているから、原発を争点にすること自体がタブー」と話す。

2期目の当選を目指す無所属の馬渕清和氏(41)は、計画中の敦賀原発3、4号機
の増設推進などを主張してきた。今回の事故を受け「安全性が確認できるまで計画を
凍結する」という立場に転じ、選挙を戦ったが、「市民は原発問題にほとんど関心が
なかった」と振り返る。市内には原発関連の仕事をしている人が多い。馬渕氏は
「本当に原発をやめるのなら、国の責任でエネルギー問題をどうするのか考えてほしい」
と訴えている。【酒造唯】
これが原発列島の難題の大きさと複雑さ。「知るに知るほど事の多きに」


 (2011/4/23) 
「心は見えないけれど、下心は見える」

連日「たね蒔きジャーナル」の小出裕章氏の電話インタビューを取り上げておりましたが、昨日アップされた4月21日放送分はすでに聴かれた方もおいででしょう。わたしも昨日聴いていたのですが、冒頭に話題にされたニュースに耳を疑いました。木曜日の担当アナは水野クリスタルさんではなくて、男性の千葉アナですが、まずこう切りだしていました。

小出さんは、以前、1号機の中で再臨界が起きているのではないか、と、
その理由がクロル38という物質が検出されているからで、
その検出が間違いであってほしい、というふうに
おっしゃられていましたけれども、
今日の毎日新聞の朝刊によりますと、東京電力は、
1号機タービン建屋の地下の水から、クロル38(塩素38)が検出された、
などとする分析が、再評価の結果、間違いだった、誤りだった、と判明した 
という記事がありました。
『福島第一原発事故:小出裕章 2011.4.21』YouTube
えっ?また測定ミス? でも、おかしいな。わたしはその日の夜スポーツジムで毎日新聞の朝刊と夕刊に目を通していたけど、そんな記事に気づかなかった。

それで、その情報ソースを確認しようとして、「毎日jp」や東電HPのプレスレリース、さらにヤフーで検索するのですが、それらしき記事が見つかりません。替わりにヒットするのが、この小出氏のラジオインタビューをそのまま引用するブログばっかり。こんな重大ニュースのソースがなんで見つからない?

気になったので、今日は新聞のバックナンバーを保存している市の図書館へ出かけて、21日の毎日新聞に再度目を通しました。隅から隅まで捜すけれど、やっぱり該当記事が見当たらない。おかしいなあ。その新聞は13版だったけど、地域差なのか版の違いなのか、分からない。

自宅に戻って、もいちどヤフーで捜したら、ありました。あったけど、それは毎日新聞による配信ではなくて、読売新聞でした。見つからなかったわけだ。

『放射性塩素38「検出せず」、東電が訂正』
読売新聞 4月20日(水)21時46分配信

東京電力は20日、先月25日に福島第一原子力発電所の1号機タービン建屋地下の
汚染水から見つかったとした放射性塩素38について、再分析したところ検出できな
かったと当初の発表を訂正した。

塩素38については、燃料の再臨界が起こった根拠と指摘する専門家もいたが、再臨界
を示す他の放射性物質は見つかっていなかった。東電は、分析のプログラムミスが判明し、
再評価を進めていた。
ヤフーニュースで報じられた記事のようだが、わたしは気づかなかった。主なトピックスの見出しに掲載されなかったのかも知れない。それにしても、東電が発表したのだとしたら、プレスレリースにないとおかしい。

そこで、再度、東電のプレスレリース一覧の4月20日付けの文書だけでなく、その添付資料にも当たりました。そうしたら、それらしきものがありました。なんと、目立たないように、このタイトルの文書の添付資料として隠れていたのです。

『当社福島第一原子力発電所における核種分析結果の厳重注意に対する対応について(続報1)』
平成23年4月20日 東京電力株式会社
添付資料 タービン建屋地下階の溜まり水の核種分析結果(PDF 60.7KB)
そこには、「3月25日参考配布」のCl-38の数値 1.6 x 106 と並べて「再評価」の数値がただ「検出限界未満」と記されているだけでした。「変更理由」には(1)とあり、その注が、
「再発防止対策に基づき、(1)主要ピークによる核種の同定及び放射能濃度の決定」
とあります。なんのこっちゃい? たね蒔きの千葉アナはその事情をこう付け加えています。
もうひとつ、クロル38のことについて東京電力は、
半減期が短い物質を過大に評価していたから検出したと勘違いした、
というふうに話しているそうなのですけれど・・・、
これについての小出氏のコメントは直接YouTubeでどうぞ。

東電のこんな発表のしかたは魂胆が見え見え。その21日にはこんなニュースもありました。

『東電が原発建設を新たに申請』
(オルタナ 編集部有岡三恵 2011年4月21日(木)11:51)

事故収束の見通しもたたない3月末、東京電力は、福島第一原子力発電所に第7号機、
8号機の新規建設を経産省に申請していた。4月18日の参議院予算委員会で、福島
みずほ氏(社民党)がその事実を追求し、参考人招致されていた清水正孝東京電力社長
はことの顛末を釈明した。
おりしも昨日22日は、東電清水社長が福島へ謝罪の行脚をしたことがTVニュースで報じられましたが、現地の反応は冷ややかでした。一連の東電のやっていることを見ると、ACのCMのみごとなパロディがぴったり当てはまる。フリーライターの佐々木紅児さんという方の投稿作品とか(朝日新聞 声欄 4月4日)。
「心」は見えないけれど、
「下心」は見える。

「思い」は見えないけれど、
「思い上がり」は誰にでも見える。


 (2011/4/19) 
これも「ことばのちから」YouTube

関西地域で放送されている毎日放送ラジオMBSの『たね蒔きジャーナル』。連日「レギュラー出演」のような小出裕章氏のインタビュー部分をすぐさまYouTubeにアップしてくださる方がおられます。きのうの4月18日放送分を例のごとく聴き起こします。冒頭部分です。

その前に、繰り返しになりますが、これは話されたとおりを文字に起こしているだけで、小出氏の発言も、またインタビューアーの水野クリスタル晶子さんの質問も、そのままセンテンスになっていることに注目いただきたいと思います。いまや講演会、記者会見などのライブあるいはビデオをネットで見られるようになって、話し慣れないパネリストの発言や、記者や聴衆からの質問を目にする(耳にする?)機会が増えてきましたが、センテンスで区切ることをしない発言はとても聴きにくい。意味もなくやたら挿入される、えー、とか、ーですけど、が邪魔。

せっかく価値あるコンテンツであっても、その表現方法を間違えると、意図したことの反対物に転化することはよくあること。とくにラジオというメディアでは「ことばのちから」を思い知らされます。


 ー今日はまず、ですね、ラジオのリスナーの方から先生に質問が来ておりますので、
  そちらからお答えいただければ、と思います。

はい。

 ー今ニュースでもお伝えしたとおり、きのう東電から福島第一原発事故を6ヶ月から9ヶ月で
  収束させたい、という工程表が出されましたが、小出先生、これで収まると思われますか、
  とズバリきいていらっしゃいます。いかがでしょう。

はい、東京電力が言っているとおり収めてくれることをわたしは願いますが、
できないと思います。

 ーそれはなぜでしょう?

東京電力の見通しはずうっとこれまでも甘かったし、これも甘いと思います。

 ーどういうところが具体的に甘いポイントでしょうか。いくつか教えていただけますか?

はい、まずは、被曝環境がひどすぎます、今は。

 ー作業員の方の被曝環境がひどすぎて、この工程表のとおりには作業がなりゆかないと・・・。

はい、たぶんできないと思います。

 ーその放射線量について、じゃあ、うかがいますけど、ね、
  今もお伝えしたとおり、ロボットを入れて放射線の量を測定しました。
  そうしましたら、建屋の内部の放射線量が、最大で3号機で1時間あたり57ミリシーベルト、
  だというんですね。

はい、1時間あたりの値、ですね。

 ー1時間あたり57ミリシーベルト。
  これは、ですね、作業員の方の被爆線量の限度から考えると、
  4時間半働かれたら限度を超えるという計算だそうですが・・・、

計算上はそうですね。

 ーそれはどういう意味でしょうか?

もともと、ふつうの方々は1年間で1ミリシーベルトしか浴びてはいけないのです。

 ーふつうは1年間で1ミリシーベルト、というのが基準なんですね。

ふつうのみなさんは。
わたしは放射線業務従事者というレッテルを貼られている特殊な人間ですけれども、
そのわたしにしても、1年間に20ミリシーベルトしか浴びてはいけないのです。

 ーえっ、小出先生のような、専門に従事していらっしゃる方でも、1年間に20ミリシーベルト。

そうです。それが上限なんです。

 ーはい。

ただし、今回の場合はとにかく異常事態なので、そんなようなことは言っていられない、と。
というか、この事故を収束させるという1回だけの作業のために、
労働者ひとり当たり100ミリシーベルトまではがまんしろ、
というのがこれまでの基準だったわけです。

 ーはい、これまでは100ミリシーベルトが基準でした。が・・・、

それも、どうしてもしょうがないから、がまんしろという基準だったわけです。
本来は1年間で20だったんですけど、たった1回で100ミリまではがまんしろということに
とてつもなく膨大な被曝をがまんしろ、ということになっていたんです、ね。
でも、それももう守れないので、100でなく、250までがまんしろというふうに
厚生労働省があっというまに変えたわけです。

 ーそうですね。この期間に250ミリシーベルトまで上限を上げたわけですね。

そうです。その基準を満たすためにも、4時間も作業したらもうそれでお終いという、
それほどひどいわけです、ね。

 ーこれは、ですね、1時間あたりで57ミリシーベルト、で4時間半経ったら限度を超えるということは、
  翌日に同じ作業員の方がいったん寝て休息をして、除染、というんですか、洗い流したら、
  また働ける状況になられるんですか?

なりません。

 ーならないんですね!

もう二度とその人はこの現場で作業はできないことになります。

 ーもし4時間半働かれたら、もう二度とは働くことはしていただけないわけ・・・、

そうです。この福島の原発事故の収束のためには、その方はもう何もできなくなります。

 ーじゃ、今いらっしゃる方よりも膨大な数の作業員の方が必要となってくるということですか。

そうです。次から次へと被曝をする方々を集めてこなければいけなくなります。

 ーああ、それは、まあたとえば、6ヶ月なり9ヶ月という範囲で、何人ぐらいの方の作業が必要だと
  いうようなことまで、先生は推測・・・、

よく分かりませんが、たぶん何千人というような数が必要になると思います。

 ーなるほど、まず、じゃあ、おっしゃったように、まずこの作業員の方の被曝量が
  非常にこの工程表では甘くなっているんじゃないか、と。

と思います。
『福島第一原発事故:小出裕章 2011.4.18』YouTube 
続きおよび全編は、YouTubeをご覧ください。


 (2011/4/18) 
打落水狗

このところ原発関連の記事を続けています。このコラムは、もともとジャーナリズムとメディアについて、現在進行形で事実や情報を分析することをテーマにしておりました。そして、福島原発事故が、そのジャーナリズムとメディアの、これまで見えなかった事実を次々と明らかにしています。おととい、テレビジャーナリズムが崩壊寸前と書きましたが、実際に多くの人はネット上の情報や写真、それにYouTubeに代表されるビデオコンテンツにより信頼を置き始めています。

4月10日のこのコラムで、2008年に大阪毎日放送が放映したドキュメンタリー「なぜ警告を続けるのか〜京大原子炉実験所・"異端"の研究者たち」という番組にたいして、関西電力が嫌がらせに出たことに触れました。そのことについて、ジャーナリストの青木理(おさむ)氏が朝日ニュースター「ニュース解説 眼」4月7日放送分で、くわしく語っています。

そのドキュメンタリー番組は08年の秋に、
大阪の毎日放送MBS、という放送局があるんですけど、
そこの記者たちが取材して放映したんですけども、
「なぜ警告を発するのか 京都大学原子炉実験所 異端の研究者たち」
というテーマのドキュメンタリー番組だったんですね。
もちろん、そういう人たちを紹介するわけですから、
番組自体すこし反原発的なところはあった。
だけどこれ、その6人のことを紹介しただけだし、過剰な演出がなくて、
非常に優れたドキュメンタリーで、
テレビの人たちでつくる賞などもとっているんですけれども、
それも、日曜の深夜の放送だったわけですね。
ましてや、大阪の放送で、東京では放送されなかった。
ところが、これを放送したら、ですね、地元の関西電力、ですね、が猛烈に抗議をした。
で、その番組だけじゃなくて、
ドキュメンタリーの番組ですから、専門のスポンサーがついていないわけですけど、
MBSの全番組から、スポンサーを引き上げ、広告を引き上げる、と
あげくの果てに、MBSの局の幹部に、いかに原発は安全か、という講習をうけろ、と
言ってきたというんですね。
『ニュース解説 眼 4/7(木) 電力会社とメディア』YouTube
今回の福島原発事故での東京電力の対応、つまり、自ら会見に姿を見せずに、官房長官や保安院の広報担当だけ矢面に立たせて、事故の補償賠償についても、「政府と相談して決める」などと発言したり、一方的に「計画停電」を通告して平気でいることから、東電は会社という体裁をとっているかも知れないが、どうも普通の会社とは違うな、と気づいた人がほとんどでしょう。

電力会社がいかにメディアとタレント、学者をカネで手なずけているかについて、やはり4月4日のこのコラムで原発CMに嬉々として協力してきた有名タレントの名を敢えて挙げました。それに関連して、上のコメントに続いて青木氏はこんな実例を加えています。

たとえば、ぼくの知っているある記者ですけど、
原発のPR記事にちょっと協力しろ、と言われたわけですね、
ふつうに記事を書いていたらとても稼げないようなお金を提示されて
びっくり仰天したと、いう人がいるんですね。
結局かれは断っているんですけど。
もうひとり、スポーツライターで音楽評論家でもある、玉木正之さん
という方がいらっしゃるんですけど、
この方がご自身のブログでこんなことを書いているんですね。
昨年、原発の広報記事への登場を依頼された、と。
で玉木さんは、原発は最終的にはおれは作らないほうがいいと思っている、と
いうことを思っていらっしゃって、それを言ったら、結局その記事というのは
電力会社側と折りあいがつかなくて、ボツになった、というんですね。
ところが、玉木さんによると、
そのときに提示されたギャラ、つまりインタビュー記事一本のギャラ、ですね、
500万円だった、というんです。
吉村作治、草野仁、毛利衛はCMのギャラは返すべきだ、とわたしは言ったけど、あのときCMのギャラなんてせいぜい数十万円程度だろうと思っておりました。ひょっとしたらカダフィ並の出演料を受け取っていたかも。(玉木氏のブログの引用箇所は3月12日付けの日記)

この青木氏のニュース解説はそのタイトル『電力会社とメディア』からお分かりのように、メディアのあり方を問う視点から今回の原発事故を取り上げたものです。その前日の4月6日放送分は、やはり同様の視点で、『電力会社と知識人』というタイトル。 その中で、福島原発事故直後の段階で、東電と政府の御用学者がいかに安全風評を流し、その後、事態が悪化してくるとどう言い始めたか、その後出し対応ぶりを批判しています。まず、3月12日から15日という、水素爆発が起きて、危機が高まっていたとき、

その時期に、政府の原子力安全委員などを務めた、東大だったり、大阪大学だったり、
いわゆる一流大学の先生たちがこんなことを言っていたんです。これは、ごく一例です。
「最悪の事態を想定しても、外部に多量の放射性物質が出るとは考えられません」
まだ当時、10キロの範囲内の避難域だったときですね、住民が、原発から。そのときには、
「住民の避難域は10キロで十分です」と。
あるいは別の、これは東工大の先生だったと思うんですけど、
「原発は多重の安全対策が施されていますから、一時的に放射性物質が飛散しても
住民はすぐ戻れるでしょう」
『ニュース解説 眼 4/6(水) 電力会社と知識人』YouTube
これが12日から15日にかけての、「揺るがない」原発推進派学者の発言。ところが、その後事態が悪化してくると、今度は「開き直る」先生方がでてくる。再度ごく一例とことわったうえで、3月25日放送の「朝生テレビ」での出席者の発言を取り上げる。
政府系の原子力研究所の幹部を務めた方が、ですね、
事態が悪化しているということについて、こういうふうに言ったんですね。
「これ、いい教訓だ」と。「これから安全性を高めればいいですね」と、
こう言ったんですね。
それからその朝生に出ていた有名人でひとりだけ名前を上げて発言を引用したのが経済評論家の勝間和代。 番組の彼女のその発言部分がYouTubeにアップされているので、直接わたしが忠実に聴き起こしましょう。
<勝間>放射性物質が、実際よりもかなり恐いものと思われていることに
問題があるんじゃないかと思います。(中略)
今回の原子力の問題にしても、では死者がでましたか、ということについて、
津波の死者に比べて全然。これは比べていいのかどうか分かりませんけれども、
やはり、その、なんていうんでしょ、報道のされぐあいと、死者の多さというものの
バランスが悪いと考えています。
『朝生 原発 勝間和代氏発言他ハイライト』YouTube 
経済評論家は電力会社からカネをもらっているかどうか知りませんが、要は大企業を応援する言説を生業とするからには、場違いなところに素人として登場してまで、東電と御用学者、官僚・政府など、原発推進派に与するしか生きていけないのでしょう。

さて、こうしてみると、事実を後追いして繕わないといけない東電および原発推進派の学者、知識人、タレントも、思えばかわいそうと思ってしまうところが日本人の弱さ。こういう時に思いだすのが、故事をもじったらしい魯迅の有名なことば「打落水狗」。水に落ちた凶暴な犬は叩くべし。情けをかけて助けると、また噛みついてくる、という警告。



 (2011/4/16) 
ラジオジャーナリズムの試み 『たね蒔きジャーナル』

ここ連日あるラジオ番組での小出裕章氏のインタビュー内容をテキストに落としておりました。あの番組はどの局のものかさがしていたら、やっと見つかりました。関西地方の毎日放送ラジオMBSで夜9時からの『たね蒔きジャーナル』という番組だったんですね。YouTubeで聞く音声がノイズもなく、AMラジオっぽくないのは、Webラジオの radiko.jp で配信されたものを録音しているのでしょう。

わたしはラジオ番組って、BBCのNewsPodなどのポッドキャストしか聞いていなかったのですが、このようなすぐれた内容はポッドキャストしてくれれば、東京のサラリーマンが通勤電車で聞くこともできるでしょう。げんに、YouTubeにアップされた過去放送分の再生回数をみると、数日で4,5千に達して、2週間も前の放送分には1万7千というものもあります。ちなみに、4月10日のコラムで紹介した小出裕章氏の講演会ビデオは、いまやなんと27万回以上も再生されています。

それにしても、今回の原発事故報道でテレビジャーナリズムが崩壊寸前であることが露呈していまいました。その一方で、車の中で聞くものだと思っていたラジオが、ジャーナリズムのあらたな可能性を開拓し始めています。



 (2011/4/15) 
テレビニュースよりこちらがおすすめ その3

昨日放送されたラジオ番組での小出裕章氏のインタビューから。


 ーまたもうひとつ気になるニュースが入っていまして、
  福島の川俣町というところの小学校の校庭の土を調べたら
  放射性セシウムが検出された、というニュースが入っているのですが、

  こういった小学校の土だとか、にかんして、
  健康に影響を与えるとして注意すべき国の基準がない、
  ということが伝えられているのですが、
  こういったことについて、どう思われますか。

国に、小学校の土、ということに関しては基準はないと思います。
ただし、放射線の管理区域に指定しなければいけない汚染の、
まあ密度というものでしょうか、1平方メートルあたり何ベクレル、
とかいうものは決まっているわけですから、
すくなくともそれを上回るようなところに人を行かせてはいけないし、
ましてや、子供たちが遊ぶようなところは、そんなことは到底許されない、
と思います。

 ーこのニュースに関して、原子力安全委員会は、年間の累積の被曝の放射線量について、
   子供は、計画的避難区域の基準とした年間20ミリシーベルトの半分の
   10ミリシーベルト程度におさえるのが望ましい、
  という見解を示しているのですが、
  この数字に対しては、小出さんはどう思われます?

とんでもないことだ、と私は思います。

 ーはあー。

要するに、日本の国はまず法律で国民を被曝から守る、と決めたわけですね。
どういう基準かというと、1年間に1ミリシーベルトを限度にして、
それ以上の被曝はしてはいけない、と決めたわけです。

 ーはい。

それは、被曝ということは危険を伴うからこそ、そういう基準を決めたわけです。
ですから、それ以上の被曝は許さない、というふうに
まずは国が言わなければいけないわけですが、
今回の場合はとにかく非常事態だから、もうそんなことは言っていられない、
もう20倍まで許すということに、いきなり限度を引き上げた、わけですね。

それをほんとに国民が受け入れるというならば、
まだそれは、私としては致し方ないことだとは思いますけれども、
でもせめて子供だけは守らなければいけない、と私は思います。

 ー小出さんから見ると、この10ミリシーベルトという数字も
  まだまだ安心という数字ではないというふうにお考え...

もちろんです。
だって、1ミリシーベルトしか許していけない、と言っていたものが、
いきなり子供にたいしても10倍までがまんさせる、というわけですよね。

 ーうーん。

どういう論理を作ればそういうことが言えるのか、私には理解ができないです。
『福島第一原発事故:小出裕章 2011.4.14』YouTube


 (2011/4/14) 
テレビニュースよりこちらがおすすめ 続き

4月10日にUSTREAMで配信された小出裕章氏のインタビュービデオが以下でご覧いただけます。インタビューアーの声がちょっとぼそぼそと小声で聴きにくい。昨日紹介したラジオ番組の女性インタビューアーを見習ってほしい。それでも、小出氏はじつに明快な説明をしてくれます。

『京都大学原子炉実験所 小出裕章氏に聞く』YouTube
ところで、その小出裕章氏のラジオインタビューですが、4月10日のコラムでその一部を聴き取ってテキストに起こしました。これは、文字化する意味があったこともさることながら、この番組は、インタビューアーの質問も含めて、対話形式でよくまとまっており、なによりも、話したことばがそのまま文章になっていることにとても感心しています。

それに、動画をゆっくり再生している時間のない方もおられるでしょう。ですので、わたしめが、そんなお忙しい皆さまのために、大事な部分をテキストになおして差し上げましょう。昨日の番組で、ストロンチウムが検出されたという報道について。


 ー今日、ストロンチウムという物質の名前が出てきましてね。
  これはいったいどういうもんだろうと思って、伺いたいんです。

はい。

 ー福島県で採取した土ですね、土壌、とそして葉物野菜から、一部ストロンチウム89と90というのが検出された、と。
  このストロンチウムが検出されたのは今回の事故では、わずかではあっても、初めてのことだと聞いたのですが、
  これは、どういう物質で、どういう懸念があるのでしょうか。

はい。
世界では、1950年代から60年代にかけて、
大気圏内の核実験というものが大量の行われたんです、ね。
それで、原爆、水爆というものが爆発させられて、
大量の放射性物質が、大気中にばらまかれた、のです。
そして、全世界を汚したのですが、
では、いわゆる生命体にたいして、いちばんたくさんの被曝をあたえたのはなにかというと
ストロンチウムです。

 ーあっ、ストロンチウムがいちばん影響が大きかったんですか。

はい、ストロンチウム90と、次にセシウム137という、
みなさんよくお馴染になっているその放射能です。
セシウム137は半減期が30年ですし、
ストロンチウム90は半減期が28年。
それほど、いちど環境に出してしまうと、汚染が減らないという代表格の放射性核種です。

 ー半分に減るだけでも28年かかるんですね。

そうです。
そして、どうして今日まで検出されなかったかというと、
ストロンチウム90という放射性核種は、ガンマ線という放射線を出さないのです。

 ーほう。

ベータ線という放射線だけしか出さないという、かなり特殊な放射性核種でして、
ガンマ線を測定するということは、ほんとに簡単なことなんですけれども、
ベータ線をきちっと測定するということがとても難しいということで、
ストロンチウムの分析作業が遅れていた、ということだと思います。

 ーはぁ、やっとそのベータ線の観測ができて、ストロンチウムが分かっただけであって、
  今はじめて出てきたのではないかも知れないんですね。

そうです。はじめから出ていたのです、それは。

 ーあぁ、そうだったんですか。

初めから出ていたという意味では、プルトニウムという物質もずいぶん前に
福島原子力発電所の敷地の中で見つかったという報道がありましたけれども、
それもかなり初期からすでに出ていたのです。
だだし、プルトニウムとかストロンチウムとかいう
そういう核種はほとんど揮発しないという性質をもっています。
ですから、現在の時点までのところでいうと、環境に出てきている量は
ヨウ素とかセシウムに比べるとはるかに少ない量だと、それに収まってくれている、という
そういう状態にあります。

 ーいまのところ、大丈夫な値だと...

そうです。ですから、たいへん生物学的な毒性の高い放射性核種ですので、
そういう放射性核種が出てこないように、なんとか、事故を終息させなければ
いけない、のです。

 ーうーむ、あのう、これは具体的には、どういうかたちで人間にとって困る物質なんですか?

ストロンチウム90というのは、カルシウムという物質と同じ挙動をとります。

 ーほう。

カルシウムというのは、お分かりいただけると思うけど、
骨をつくる主要な物質なわけですね。
人体にとって絶対に必要なものなわけですし、
ストロンチウムが環境にでてきてしまいますと、
人間はそれをカルシウムと同じものだと思って、
体の中に取り込んで、

 ーへえー。

骨に蓄積していきます。
で、そのため、骨というのは血液をつくるところですけれども、
その骨が被曝をすることで、白血病になったり、
あるいは、骨のガンというものもありますけれども、
そんなことを引き起こしたりします。

 ー今は安全な値ではありますが...

いえ、安全ということはありません。

 ーああ、ごめんなさい。安全ということはない...

けれども、ヨウ素やセシウムに比べれば、
比較的汚染が低い程度でとどまってくれている、ということです。
『福島第一原発事故:小出裕章 2011.4.13』YouTube


 (2011/4/13) 
テレビニュースよりこちらがおすすめ

10日のコラムでYouTubeで聴ける小出裕章氏のラジオインタビューを紹介しましたが、この番組には連日登板されているようで、それがすぐにアップされています。4月12日版では福島原発事故がレベル7に引き上げられたニュースの質問から始まっています。

『福島第一原発事故:小出裕章 2011.4.12』YouTube


 (2011/4/12) 
ことばのちから



 (2011/4/10) 
テレビ Vs YouTube

40年にわたり原発を無くすための活動を続けてきた小出裕章氏の講演がYouTubeで見られます。先月の3月20日、山口県柳井市で行われた講演会で、もともと「上関原発を止める集会」という趣旨で、3.11の前から企画されていたもの。

それが『原子力の専門家が原発に反対するわけ』という演題になっているのは、近著の『隠される原子力・核の真実』の副題を使っているため。福島原発事故についての話にもスムーズにつながっています。情報がテレビよりもネットの時代に入っていることを印象づけます。

また、Google動画には、小出氏らの活動を追ったこの番組(2008年放送)のビデオが複数アップされています。
『なぜ警告を続けるのか〜京大原子炉実験所・”異端”の研究者たち〜』YouTube
そのうちの一つに書き込まれたコメントによると、放送した毎日放送は「関西電力からCMを引き揚げられ、安全教育を強要された」そうです。

上の二つのビデオをご覧になった方は、4月1日のラジオ番組での小出裕章氏の電話インタビューも関心を持たれることでしょう。インタビューアーの質問も的確なものです。

『福島第一原発事故:小出裕章 2011.4.1(2)』YouTube
その中で、汚染レベルと野菜出荷規制について、個人的な考えとことわった上で、以下のように発言されていることに注目します。

 ー野菜についてもうかがいたいのですが、一部の野菜が対象になっている出荷停止という
  措置がありますが、政府は昨日こういう方向性を打ちだしました。 
   「出荷停止になっても、その後放射性物質の調査で、3回続けて
    暫定基準値を下回ったら出荷停止の措置は解除しましょう」
  と、こういう方向で検討に入ったんですが、これは専門家からご覧になるといかがでしょう。

これはですね、たんに専門家がどうのということとは違うと思います。
まずその、放射能に被曝をするということは、どんな意味でも危険なんです。

 ー安全な被曝はない、というのが小出先生のお考えですね。

そうなのです。
ですから、暫定基準値より上回ったから、直ちに危険になる、
そして暫定基準値を下回れば、直ちに安全になる、ということではないのです。
ですから、いずれにしても危険はある。
でも社会的にどこのレベルまでがまんしようかということで基準値を決めるしかない、という
そういうものなんです、ね。

でも、私はじつはその基準というのは、個人によっても違うし、一律にこれ以上
というふうにやらないほうがいいと、じつは私は思っています。

 ーほーぉ。

どういうことかと言うと、ですね、
福島というところで今事故が起きて、福島県産の野菜を中心に汚れているわけです、ね。
で、放射能を食べたいなんてだれも思わないわけですし、
汚染の強いものは危険な訳ですから、なにがしかの規制をしようと、
いうことで、社会全体が動いているわけですけども、
もし、ある一定レベル以上のものをとってはいけない、という基準を作ってしまうと、
福島県の農民は破局に至ります。
福島県の農業は破局に至ります。

私はそういうことを望みません。

では、どうしたらいいか、ということですが、

 ーええ、どうしたらいいかということですよ、ほんとに。消費者のたちば、生産者
  のたちば、双方がどう考えたらいいのでしょうか。

はい、私の考え方は、ちょっと特殊かも知れませんが、ありまして、
子供には食べさせてはいけません。

 ーあーぁ。

子供というのはもともと放射線にものすごく敏感ですので、
放射能で汚染された、とくに強く汚染されたというものは、
決して食べさせてはいけないと思います。
ただし、大人は、年をとるほど放射能に対する感受性は鈍くなって、いきます。
そして現在の原子力発電なんていうものを許したのは、大人たちなのです。

 ーはい、そうですね。

ですから、私は、消費者といえども、大人が汚染を甘受して食べるべきだと思っているのです。

 ー私たちがみちびいたものであるという、ある種の消費者としても責任をやっぱり
  とらざるを得ないんじゃないか、というのが小出さんのお考えなんですね。

そうです。
都会で豊かに生きてきた消費者が、原子力発電所を過疎地に押し付けたわけです。
汚染が生じたら、私たちはそれはいやだ、という論理を私は認めたくないのです。
ですから、汚染をしたからといって出荷制限をするというよりは、むしろ、
どれだけの汚染をしているかということをきっちりと知らせて、
汚染の高いものは、責任のある大人たちが食べるというやり方がいいと思います。

 ーなるほど。はい。

義援金をカンパしただけで、やるべきことをやったというのはいかに浅はかな考えかと、原発を止められなかった大人のひとりとして、思い知らされます。


 (2011/4/6) 
『チャイナシンドローム』のハイ・コンセプト

映画『チャイナシンドローム』YouTubeを観ていない人は、この映画を「反核・反原発」の作品と思い込んでいることでしょう。また過去に観たことのある人でも、そのほとんどが同様に「原発事故の危険性を訴えた」先駆的な反原発の映画、と早とちりしているはずです。公開から12日目に、予言されたかのようにスリーマイル島原発事故が起ったためです。

けれど、この映画は舞台背景が原子力発電所であることは事実ですが、映画の内容はそうではありません。『チャイナシンドローム』は映画も小説も、そのハイ・コンセプトはこのようになります。

自分の仕事を誇りにしていた発電所所長の技術者が、原子炉の重大な事故を引き起こし
かねない安全データの偽造を発見し、原子炉を止めるべくテレビレポーターとともに
行動にでたところを射殺されるが、原子炉はあやうく大事故の寸前で停止し、チャイナ
シンドロームを免れる。
原子炉そのものではありませんが、その燃料製造工場で働いていた女性の、事実に基づいた映画『シルクウッド』を記憶している方も多いでしょう。そちらのハイ・コンセプトはこうです。
原発燃料のプルトニウム工場で働く女性が、放射能漏れと被爆をきっかけに、MOX燃料
の検査データねつ造を発見し、原子力委員会に内部告発するが、それが工場側に横流し
されてしまい、新聞記者に証拠書類を届ける途中で謎の交通事故死をとげる。
このふたつを並べる理由がおわかりでしょうか。どちらも、安全データのねつ造と隠蔽を共通の背景にもち、ともにメディアとジャーナリストが真実を報道する立場として描かれています。

そうして、このふたつに続く3つ目の原発映画のハイ・コンセプトはすでにできています。

原発誘致に前向きだった知事が、電力会社の事故隠蔽をきっかけに、プルサーマル発電
の危険性に気づき、その受け入れを拒否したところ、地検特捜部によって収賄容疑で
逮捕され、知事を辞任、代わった新知事が認可したプルサーマル原子炉が運転を始めた
わずか5ヶ月後、地震と津波により現実に大惨事を引き起こす。

これは事実をベースにしたストーリーですが、わたしの創作。映画化は未定です。3つに共通しているのが、事故の隠蔽、データのねつ造です。違っているのが、前の二つはメディアとジャーナリストが真実を追求する役割を演じますが、3つ目ではその逆であるということ。

ベースにした事実とはこの記事です。

佐藤栄佐久・前福島県知事が告発 「国民を欺いた国の責任をただせ」
(構成 大貫聡子 「週刊朝日」 3月30日(水)17時56分配信)
この記事からさらに気づくことは、後者のふたつに共通しているのが、内部告発が監督当局によって当事者に横流しされていること。その部分を引用すると。
2002年8月29日、原子力安全・保安院から福島県庁に「福島第一原発と第二原発
で、原子炉の故障やひび割れを隠すため、東電が点検記録を長年にわたってごまかして
いた」という恐るべき内容が書かれた内部告発のファクスが届いたのだ。

 「私はすぐに、部下に調査を命じました。だが、後になって、保安院がこの告発を
 2年も前に受けていながら何の調査もしなかったうえに、告発の内容を当事者で
 ある東電に横流ししていたことがわかったのです」
あとは記事をご覧ください。いつまでリンクが生きたままでいるか分かりません。


 (2011/4/4) 
こだまでしょうか、こだまです

Cyndi Lauper Daily で大阪公演の完全版がYouTubeにアップされていることを知りました。

Cyndi Lauper - Mar. 22, 2011 Osaka 1 - 6YouTube
このファンサイトは英語環境なので、さすがにオーストラリア公演の情報は日本のよりも速くアップされています。でも、NHKの4月13日の放送予定番組がおとといアップされていました。
Whilst Cyndi Lauper was in Japan last month touring her latest album 
Memphis Blues she recorded a TV show called SONGS.
The episode of SONGS featuring Cyndi Lauper will air in Japan on 13th
April @ 10:55 pm on NHK (Japan Broadcasting Corporation).
TV Alert: Cyndi Lauper On SONGS
もともと、震災ネタからCyndi Lapuerを同時進行形とりあげておりましたが、ここでひとくぎり。なぜこのコラムではとくに同時進行にこだわるかというと、インターネットは、済んでしまった過去の話を「安全に」語ることではなくて、今現在起っていること、進行していることで、まだどうなるのか先が分からない事件や事実にたいして、自分の分析と責任においてコメントすることができるし、すべきと思っているからです。

もちろん現下の最大の危機的事件は福島原発事故です。

シンディ・ローパーを初めて取り上げた3月21日のこのコラムで、「ACの押しつけがましい道徳コマーシャル」について一言しました。あのときは、あんなCMはいっときのことだろうと高をくくっておりましたが、あきれたことに今でも続いています。きっと多くの日本人と日本語を解する非日本人はいまや、「こだまでしょうか、いいえだれでも」と「思いは見えないけれど、思いやりは・・・」といったフレーズが頭にこびりついていることでしょう。スピードラーニングだ。

コマーシャルそのものの出来はいいものです。バックの音楽、カメラワーク、出演者の演技、声優さんのナレーションが、テキストだけでは期待できなかった効果を生みだしています。けれど問題は、CMの作品としての評価でも、詩の文学としての好感度でも、ありません。今このときに、企業CMをキャンセルしてまで同じ宣伝を流しているという、「現在進行形の事実」についてその意味を問うことだろうと思います。

原発事故では、ニュース番組でのあきれるほどに無知な解説と、大学教授の肩書きで科学的理解を隠ぺいしようとする用心棒学者にたいして、怒りを押さえきれません。とくに、放射線と放射性物質をごちゃまぜにして、「プルトニウムが出す放射線は紙1枚で防げる」くらい安全なもの、という講釈には心臓が止まりそうになりました。これが「技術立国日本」なのか。これでよくまあ「ものづくり」と言うわ。福島第一原発の3号機が、昨年9月から危険なプルサーマル発電を開始していたことも報道が「自粛」されています。

ここでくわしく書くよゆうがないので、こちらを紹介。

『日本の大手メディアと欧米メディア、プルトニウム報道の“温度差”』
上杉隆 DIAMOND ONLINE 2011年3月31日 

『破局は避けられるか――福島原発事故の真相』
広瀬隆 DIAMOND ONLINE 2011年3月16日 
テレビに登場する「専門家」や「学者」は、ただ国民を「安心させる」ミッションを授かっているかのごとき発言をしています。彼らは確信犯だけど、そこまで深く考えずに結果的に原発安全神話の風評拡散に加担したタレントもおります。たとえば、知りもしないで「原発は安全でクリーン」というコマーシャルに出ていた、吉村作治、草野仁、毛利衛。

もちろん清廉潔癖な人間などこの世にいない。けれど、人間としてのあり方が問われるのは、自分の間違いは間違いとして反省できるかどうかということではないかな。ひと月まえ、カダフィから受け取ったショーの報酬1億円をチャリティに寄付したミュージシャンについて触れました。草野仁は、震災地への義援金500万円を寄付したと伝えられているが、その前にマライヤ・キャリーなみに、原発CMのギャラを全額返金するなり、寄付するなり考えるべきでしょう、もしも原発が安全かどうかが事実として分かったのなら。そして、もしもそれでも原発推進を応援したいというなら、ACのCMではなくて、自ら出演したのあのCMを今こそ放映してもらうべく、働きかけるべきでしょう。

なお、いくら事実を目の前にしても、保身のため、あるいは権力にへつらって、地球が回っていることを認めようとしない学者がいるのは、ガリレオの時代から変わっていません。週刊『AERA』4月4日号は、原子力発電に関わってきた科学者に「事故によって原子力発電への姿勢が変わったかどうか」アンケートを実施して、その結果を記事にしています。それによると、

結果は明確だった。反対派はもちろん、推進派にもまったく揺らぎは見られ
ない。(中略)大量の核燃料を扱う「再処理施設」や、プルトニウムを用い
る「高速増殖炉」というような、より危険性の高い施設についても、推進派
はそろって「進めるべきだ」と回答した。ためらいはない。
『原発学者は揺るがない』 編集部 伊藤隆太郎 AERA 2011.4.4. 27ページ
4月2日のエッセーで取り上げた広瀬隆が「朝日ニュースター ニュースの深層」に出演していた映像がYouTubeで見られます。

『ニュースの深層 福島原発事故 メディア報道のあり方 広瀬隆』
申し合わせた言説を繰り返して「安全」風評を垂れ流す御用学者のこだまの中で、まともな声を聴きとることはかんたんではないかも知れません。


 (2011/4/1) 
伝説のライブがよみがえる

3月22日のCyndi Lauper最後の公演のネットライブを、録画してYouTubeにアップしてくれた方がおります。ありがたいことです。

うまく編集されており、あのときの興奮と感動がそのまま蘇ります。英語版も別に用意されていたので、当サイトの英語ページにはそちらを貼り付けさせてもらいました。その投稿者のリンクに2007年のインタビュークリップYouTubeがありました。シンディのパーソナリティと、日本との縁の深さが伝わってきます。

Wikipediaの彼女の記事には最近こんな一文が追加されていました。

(大阪公演のために)大阪滞在時に湯川れい子へ「こんな時に日本にくることが出来て、
私の人生の中でも名誉なことでした。ありがとう」と綴ったメールを送っている。




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