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簡易GP-IBコントローラの紹介

上面写真 側面写真

安価に自作できて簡単に使える簡易GP-IBコントローラの紹介です。以下に特徴を示します。

安価に自作できる
PICマイコンを中心に設計されており、特殊な部品は殆ど使っていません。
少ないコマンドで動
簡易GP-IBコントローラはコマンドで動作します。コマンドは全部で25個、そのうち実際 によく使うものは17個程度です。
安価に楽に準備できる
簡易GP-IBコントローラと制御対象測定器以外に必要なハードはパソコン、RS232Cケーブル、 GP-IBケーブルだけです。 ソフトはWindowsに標準でついているノートパッドとハイパーターミナルがあれば最低限のこと はできます。 RS232C入出力プログラムを開発する環境があれば、少し複雑なことをやらせたい場合でも対応 できるようになります。
パソコンから制御
RS232Cを通してGP-IB機器を制御できます。ハイパーターミナルなどのターミナルソフトを 使用すれば、直接コマンドを入力して制御動作を確認することができます。また、RS232C入出力 プログラムを開発できるのであればGP-IB制御プログラムを作ることができます。
単独で動作できる
簡易GP-IBコントローラと測定器の接続のみでGP-IB制御が可能です。簡易GP-IB コントローラ 本体についているボタンにコマンドを割り当てることによって、ボタン操作で測定器を制御できる ようになり、測定器からデータを受信して保存することもできます。また、タイムインターバルを 設定することによりデータロガーのような使い方もできます。ただし、単独動作の場合には測定データを 元にした分岐処理などの複雑なことはできません。
盛り込まなかった機能
簡単な制御を簡単な準備で実現することを主題に考えて開発しました。自分の使わないGP-IB機能は 盛り込まなかったため、以下のGP-IB機能には対応していません。
  • サービスリクエスト
  • パラレルポール
  • バイナリデータの送受信

動作確認測定器

測定器名型名メーカー
データ・ロガーTR2723ADVANTEST
デジタルマルチメータR6441AADVANTEST
NETWORK ANALYZER
ネットワーク・アナライザ
5441AWiltron
SCALAR NETWORK ANALYZER
スカラ・ネットワーク・アナライザ
8757CHP


回路と製作

安価で入手しやすい部品で設計しましたが、唯一GP-IBコネクタのみが入手しずらいです。私の 場合は共立電子さんにメールで問い合わせしたところ、取り寄せてもらえるという返事を頂いた ので共立電子さんから購入しました。
回路 製作



簡単な使い方

ハイパーターミナルで動作確認

本体の赤いLEDを点灯させて動作確認をします。接続後にコマンドを1個入力するだけです。
こちらを参照してハイパーターミナルを設定します。 設定を終えたらPCと簡易GP-IBコントローラをRS232Cケーブルで接続して電源を入れます。 簡易GP-IBコントローラで、2:Terminalを選択したあとハイパーターミナルから
red o
と入力します。赤いLEDが点灯すれば動作確認OKです。
red f
と入力してLEDを消灯しておきましょう。

GP-IB制御確認

測定器固有のコマンドを送信して制御を確認します。準備のためのコマンドを2〜4個と 測定器のコマンドを送信するoutコマンドを1個入力します。 (必要に応じて参照してくださいコマンド一覧) 制御対象の測定器は、それぞれのマニュアルにしたがってGP-IB制御ができるように設定 し、パソコン、簡易GP-IBコントローラ、測定器を接続しておきます。 簡易GP-IBコントローラの準備は以下の手順で行います。

1.アドレスの設定
簡易GP-IBコントローラのデフォルトのアドレスは10です。測定器のアドレスと重ならないよう 必要に応じて変更してください。addコマンドを使って変更できます。
2.デリミタの設定
デリミタを測定器とあわせる必要があります。デフォルトではCR+LF+EOIですので必要に 応じてdelコマンドで変更してください。
3.インタフェースのクリア
ifcコマンドを使用して接続されているすべての機器のGP-IBインターフェースを初期化します。
4.リモート・イネーブル
renコマンドを入力し、測定器を制御可能なリモート状態にします。

ex)アドレスを7に、デリミタをCR+LFにして使用したい場合は以下のように入力します。
add 7
del 1
ifc
ren e

以上で準備は完了です。この後はoutコマンドを使用して測定器固有のコマンドを送信することに より、測定器を制御することができます。

ex)アドバンテストのデジタル・マルチメータR6441のファンクション設定。R6441の アドレスを8、ファンクションを直流抵抗測定に変更する(コマンドはF3)場合は以下の ように入力します。(*あらかじめファンクションは直流抵抗測定以外、たとえば直流 電流測定などにしておくこと)
out 8:F3

測定器が指示通り動作すれば確認OKです。

測定器からのデータ受信

データの受信は「測定器に対するデータ出力指示コマンドの送信」→「データ入力 コマンド(inコマンド)の実行」で行います。(*「測定器に対するデータ出力指示コマンド」 が不要の場合もあります。求めるデータの種類や測定器によって違いがあります。) 測定器に対するデータ出力指示コマンドは測定器固有のコマンドです。よってoutコマンドを 使って送信します。

ex)アドバンテストのデジタル・マルチメータR6441の機種情報読み出し。R6441の アドレスを8、簡易GP-IBコントローラのアドレスを10とした場合。以下のようによう に入力します。
out 8:IDN?
in 8,10

測定器から送られてきたデータがハイパーターミナルに表示されればOKです。


単独で動作させてみる

制御したい内容をハイパーターミナルを使って動作確認できたら、それをもとに簡易GP-IB コントローラ単独で測定器を制御することができるようになります。設定に必要なものは テキストエディタ(ノートパッドで十分です)とハイパーターミナルです。

どのように制御させたいかをテキストファイルで記述し、転送することによりスイッチなどに コマンドを割り当てます。以下の例を使って解説を進めます。

/start/
red o
ifc
ren e
wait 10
red f
/swr/
red o
in 8,10:0
wait 10
red f
/swg/
gre o
in 8,10:1
wait 10
gre f
/sw2/
out 8:f1
wait 10
/sw3/
out 8:f2
wait 10
/end/
gre o
ren d
wait 10
gre f

ラベルによるコマンドの割り当て

左に示したようなファイルをコマンドファイルと呼びます。また、/XXXX/ のように書かれている ものをラベルと呼びます(コマンドファイルとラベル)。 ラベルはそれぞれ起動時、終了時、どれかボタンが押されたときなどタイミングをあらわすもので、 ラベルの下にコマンドを記述することにより、各タイミングごとの簡易GP-IBコントローラの動作が決まります。

/start/の記述は起動時の動作を決めています。赤LEDを点灯、接続された測定器すべてのGP-IB インタフェースを初期化後リモート状態にし、1秒待った後に赤LEDを消灯しています。[赤LEDの点灯 消灯と1秒のウエイト]は、簡易GP-IBコントローラが正常動作していることを確認するために入れています。

/swr/の記述は赤いスイッチが押されたときの動作を決めています。赤LEDを点灯、アドレス8の 測定器からデータを読み込みデータバッファ0に一時保存し、1秒待った後に赤LEDの消灯。この場合の 1秒ウエイトはコマンドの多重実行を防ぐ役割も持っています。このウエイトがないとボタンを押し続けている 間(人にとって短い時間と感じる時間、たとえば100m秒でも)、マイコンは可能な限りこのコマンドを繰り 返してしまいます。

/sw2/の記述はスイッチ2が押されたときの操作を決めています。アドレス8の測定器に文字列 "f1"を送信し、1秒待って終了。

コマンドファイルを転送する

コマンドファイルが完成したら、簡易GP-IBコントローラにダウンロードします。詳しくは  ファイル転送モードを参照ください。

簡単制御の実践

コマンドファイルの転送が完了すれば単独動作の準備は完了です。測定器と接続すれば 簡単なボタン操作で測定器を制御することができるようになっているはずです。詳細は  ローカルモードを参照してください。また、測定器からの データの入力と保存については測定データとレコード を参照してください。



以上で簡単な使い方の説明はおしまいです。上記では説明していない動作モードのことや より詳細な解説は簡易GP-IBコントローラ解説を参照してください。

PICマイコンのプログラムはこちらよりダウンロードできます。 トランジスタ技術2004.1投稿記事