起業は個人事業か法人形態か
-取引、融資、人材募集の比較

起業・開業をする際、個人事業にするか、それとも会社を設立して法人形態にするか。
あなたの起業にはどちらが合うのか、このページでは「社会的な信用度」という点で、個人事業と法人形態との違いを比較してみてください

起業・開業に際して、個人事業か、法人形態かということについてテーマ別に次のページを用意しました。
あわせてご参照ください。

社会的な信用度

個人事業と法人形態との違いということで、いくつかの項目があります。
そのいくつかの項目の中から、こと「経営」「事業」「ビジネス」という視点を重視して「社会的な信用度」を一番先にあげたいと思います。

「社会的な信用度」は、別ページでお話しする各種の「費用」や「税金」と違い、「イメージ」的な部分もあります。
統計により数値化されているものではありません。
ある種、不確実さもともなう部分もあるかもしれません。
それでも個人事業を選択するか、法人形態として会社設立するかの判断材料の最初に「社会的な信用度」をあげます。

「費用」や「税金」は、「お金」です。
無駄なお金は使いたくないと思うのは当然です。
ですから、『「費用」や「税金」がいかに安く収まるか』という視点を優先して考えたくなります。
それでもやはり「社会的な信用度」の中の項目を第1順位として判断してください。

大切なのは「社会的な信用度」そのものが高いか低いかといったことではありません。
「社会的な信用度」の中の項目を検討することによって、あなたのビジネスの長期ビジョンを明確に描くことが大切なのです。
ですから、これから話すそれぞれの項目が、自分のビジネスにどう当てはまるか、または当てはまらないかという視点で聞いてみてください。

起業は個人事業か法人形態か-取引、融資、人材募集の比較

さて、ひとくちに「社会的な信用度」といっても、少しあいまいです。
これを

  • 1.意先・取引先との取引の場面

  • 2.金融機関からの事業資金融資の場面

  • 3.人材募集・採用活動の場面

に分けて、それぞれ見ていきたいと思います。

 1.得意先・取引先との取引の場面

まずはあなたのやろうとする事業が、どのような相手を顧客にするか。

会社が顧客の事業なのか(法人相手の取引。「B to B」=Business to Business)
一般消費者が顧客の商売なのか(個人相手の取引。「B to C」=Business to Customer)

顧客相手が法人(B to B)の場合

顧客相手が法人(B to B)の場合、特に相手先の規模が大きくなるほど、こちらも法人形態のほうがいいと思います。
大企業の中には、個人事業者とは取引しないという会社があるからです。

顧客が中小企業の場合には、大企業ほどこだわらない会社が多いとは思いますが、それでも、こちらが法人であることでデメリットになることも考えにくく、個人事業よりは、法人のほうが、取引上ベターと言えます。

顧客が個人(B to C)の場合

顧客が個人(B to C)の場合には、あなたが行う事業の種類によって違ってきます。

例えば、小売業や飲食業、健康や美容関連サービスで店舗展開する場合、一般消費者は、そのお店が、個人事業か、法人形態かを気にする度合は少ないでしょう。
消費者は、そのお店の屋号(「○○レストラン」など)を単位として見ることが多いので、個人事業・法人形態の違いは、そんなに影響はないと思います。

逆に、顧客が一般消費者であっても、通信販売などは会社形態のほうが、より有利になると思われます。
それは、通信販売が、顧客にとって相手が見えにくい商売であるからです。
このようなビジネスでは、どんな要素においても安心感を与えることがポイントになってきます。
したがって、より安心感につながりやすい、「会社であること」を選択したほうがベターなのです。

また、ネットショップを開設してネット通販事業を行う場合で、大手ショッピングモールに出店しようとなると、「法人であること」が出店審査基準の1つとなっているケースもあります。
このようなケースでは、当然ながら法人形態が必須となります。

営業活動や宣伝活動をする場合

B to Bか、B to Cかにかかわらず、営業パーソンが営業活動やセールスを行ったり、宣伝活動をして広い潜在顧客に訴えようとするのであれば、やはり法人形態が好ましいと言えます。

あなた自身が顧客で、購入やサービスを受ける場合

逆に、こちら側が顧客になる場合の取引では、仕入先や、事業用物品の購入先といった取引先からは、個人事業・法人形態の違いはどのように映るでしょうか。

端的に言えば、「代金さえきちんと支払えば、個人事業・法人形態のどちらでも構わない」と思います。

インターネットによる物品購入のサイトで、「法人のみ登録可能」というケースも見受けられます。
こんな場合に、それが事業用の欠かせない重要な仕入部分であれば、法人形態も検討する必要があるでしょう。
でもそうでない、単なる物品の購入であれば、別の購入方法を選択すればいいのではないでしょうか。

もし、個人事業者とは取引しないといった取引先があったとして、どうしてもそこから何かを買わなければいけない状況があった場合、こちらから「代金前払い」を提案してみるのも一考かと思います。
取引相手のリスクが大幅に減ることによって、取引が認められるかもしれません。

以上のように、得意先・取引先との取引の場面でみると、積極的に個人事業を選ぶ理由はないと思います。
自分の事業展開が、個人事業でもデメリットにならないケースに限って個人事業を選択する、という流れでの判断になると思います。

 2.金融機関からの事業資金融資の場面

世間一般的には、「個人事業者よりも法人のほうが金融機関からの融資が受けやすい」と言われています。
これは、半分当たっていて、半分外れていると思います。

事業資金融資で、個人でも法人でも差がない理由

まず大前提として、日本の融資の姿勢というのは「実績」「経験」(それと「担保」)の有無によるところが大きいということです。

開業資金の借り入れの際に、貸す側がまず第一に着目するのは、
「その起業家が前職などで、その事業経験があるのか、ないのか
です。
起業・開業しようとするその事業の経験があるのであれば、個人事業であろうが、法人形態であろうが、融資実現のハードルは、1つ低くなります。

逆に言えば、経験のない事業で起業・開業しようとするなら、個人事業・法人形態のいずれを問わず、融資実現のハードルは高いままです。

このことが、まず「半分外れ」の部分です。

では、「半分当たり」のほうは。

事業資金融資で、法人のほうが有利になる理由

以前は、会社設立にあたり、最低資本金制度というものがありました。
株式会社を設立する場合には資本金は1千万円以上が必要だったのです。
一方の個人事業は、元手はいくらからでもスタートが可能です。

この両者を比べるならば、貸す側の立場であれば、「1千万円を持っている法人」「1千万円を調達した実績のある起業家」のほうが、より貸しやすくなります。

会社法施行後の現在では、最低資本金制度がなくなり、資本金は1円からいくらでも会社設立が可能です。
極端な例で言うと、資本金1円の会社では、この部分では個人事業とさほど変わりがないことになります。
よって、個人事業より法人形態のほうが融資が受けやすいとは一概には言えないことになります。

設立時の資本金が厚ければ厚い(金額が高ければ高い)法人ほど、個人事業よりは、開業準備・運転資金などの融資実現のハードルは低くなるとは言えると思います。

融資後の、法人のほうがメリットがある場合

融資実現とは別の、融資後の話でこんなこともあります。

会社が銀行から借り入れをした場合、通常は、代表者の連帯保証が必要です。
連帯保証した場合、会社がお金を返せなくなったときは、連帯保証人であるその代表者が返済する義務を負います。

個人事業で借り入れた場合は、その人本人が借りているので、事業から返せなくなっても、その人の返済義務はそのままです。

この点では、個人事業であっても、法人形態であっても、結局「その人」が返済義務を負うので、違いはありません。

ところが、最近の動向として、経営者の最低限の生活の保護や、起業家のチャレンジの後押しといった趣旨で、代表者の連帯保証制度をやめようという動きもあります。

このような取り組みを利用しようとするのなら、法人のほうが有利と言えるかもしれません。

 3.人材募集・採用活動の場面

働く場を探す人、就職しようとする人からすれば、同じ無名の事業者であるなら、個人名で行う個人事業よりも、会社名で行う法人形態のほうが、安心感信用度の点で断然優位です。

世間一般から人材を集めて、少人数であっても組織的に事業を行おうとするのであれば、
 ↓
法人形態をお勧めします。

逆に言えば、1人で事業を行う、身内や友人知人だけで事業を行う、その他個人的な付き合いや紹介により人を雇用するのであれば、
 ↓
個人事業でも支障はないでしょう。

「社会的な信用度」に着目した個人事業と法人形態の違いのまとめ

  個人事業 法人形態
得意先・取引先との取引の場面 (小売業や飲食業、健康や美容関連サービスを、実店舗で行う場合ならばデメリットは少ない) B to Bで事業を行う場合
取引条件として「法人であること」という場合
金融機関からの融資の場面 右記以外は、法人形態とさほど違いはなし (ある程度の金額の資本金による会社設立ができる場合)
(代表者の保証が不要な制度を利用する場合)
採用による人材募集の場面 1人だけで事業を行う場合
身内・友人知人・紹介された人だけで事業を行う場合
世間一般から人材募集をする場合
組織的に事業を行う場合
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