「竜也はいい子ね」
へー。
「大好きよ」
あっそう。
「愛してる、本当よ」
あんたの『愛してる』ってなんだ?
「ママはいつも傍にいる」
あんたの言ったことは嘘ばっかりだ。
「愛してるのよ…でも」
『でも』ってなんだよ。
いいよ。
わかったから。
愛してるけど、『でも』捨てるわけだ?
捨てていく息子も、愛してるって言うのか。
なんだ。
愛してるって、そんなものなのか。
チュンチュンチュン。
あー…すずめ…。
「真琴の男が来たって本当か!?」
ドカ ドカ ドカ!!
うるさい…
まだ目覚まし鳴ってねぇじゃん。寝かせてくれよ…。
バンッ!!
「起きろ!!」
がくがくと胸元を掴まれ、揺さぶられる。
なんだ一体…。
「仮にも結婚する挨拶に来たっていうのに、惰眠を貪っているとはいい度胸だな!!」
「はあ?」
俺はいやいやながら目を開けた。
あ、くそ、コンタクト外すの忘れて寝たのか?
……ていうか、この目の前のオッサンは誰だ。
つーか ここは何処だーーー!!!
俺は茫然と辺りを見渡した。
とんでもなく広い和室。敷かれた布団に俺は寝ていたようで。オッサンが開けたであろう障子の向うには見事な庭が…。
「…どちら様でしょうか?」
とりあえず俺を掴んでいる髭面のオッサンに訊いてみる。
高そうなスーツを身につけて、ハンサムで出来る男って感じだ。歳は40前後か?
「ふぉっふぉっふぉ。やっぱり肝の据わった奴よの」
開いた障子から、昨夜の老人が姿を見せる。
「あ!ジジイ!!てめぇ!!」
普段は年上にはそれなりに遠慮する俺も、俺を拉致した人間には敬語も何もない。
…て、そうか。
俺はあれからココに連れてこられたのか。
だんだん頭がハッキリしてきて、昨日のことと今の状況を整理する。
そして、ようやく判ってきた。
「……おい。結婚ってなんだ」
俺が強い口調で言ったのに、ジジイは平然として、
「お主と真琴に決まっておろう」
と言った。
「ふ…」
「お義父さん! 私は認めたわけじゃありませんよ!」
ふざけるな、と言おうとした俺を遮って、オッサンが叫んだ。
俺だって認めてねぇよ。
「お主だって、真琴が落としたら賛成すると決めたであろう?」
落とす?
「それは…無理矢理じゃないですか!あんなの!!」
おーい、当事者を無視するな〜。
「ワシはこやつが気に入った。結婚させる」
「そんな勝手な」
まったくだ。
「ジジイ…」
「あなたが『りゅうくん』ね!」
は?
「やーん、可愛い〜〜v」
いきなり現れた、すごい美人にガバッと抱き付かれた。
「私、真琴の母です!よろしくね〜〜」
茫然としていると、ん〜〜、と頬にちゅうされてしまった…。
「竜が来てるって〜?」
俺と同い年くらいの男。これもまた美形。
いやな一家だ。
「おい、竜、俺のこと覚えてないのか?」
知らん。
「あー、ホントに忘れてんの? 俺ショック〜」
男のクセにしなるな。
ここまで揃うってことはやっぱり…
「竜くん!!?」
全員集合??
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