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HAPPY、HAPPY、LOVELY ! − school festival −





・・・おかしい。

絶対に、おかしい。



ここ数日、奇妙な視線を感じる。






HAPPY、 HAPPY、 LOVELY ! 〜 文化祭 編 〜




ども、こんちは。
一宮竜也です。
(↑初心に帰ってみました)

二学期が始まって数日。 残暑は厳しいし、むんむんする教室はシャレになんないっスよといった日々ですが。

この視線は一体。

(・・・ヨシ)

(・・・3、)
2、
1、


バッ !

と、振り返るが、誰もいない。
夕日に佇む校舎があるばかり。
カーカー、とカラスが鳴いて赤い空を渡っていく。

・・・ふっ。

夕日が目に沁みるぜ・・・。



「あー竜先輩!」
なに そんなトコロで たそがれてるんですか〜、と背後から声を掛けられた。
体育祭のリレーで一緒になった陸上部二年の小山だ。
「あれ、お前クラスの準備は?」
文化祭前の今の時期は、ほとんどのクラスが日が暮れるまで準備している。
しかも中心となるのが二年生だ。
「や、俺、大会が近いですから、クラスと部活は半々でやってるんですよね」
ジャージ姿の小山は、少し残念そうに答えた。
体育祭のときもお祭りが好きな様子だったから、思いっきり参加したい気持ちがあるんだろう。
「両立 大変だな〜」
「いやー、でも伊集院さんには敵いませんよ〜。クラスと映研と実行委員の三本立てでしょ」
「らしいな」
映画はもう撮り終わっているからいいとして、文化祭実行委員の企画にも駆り出されているらしい。
「竜先輩は 陵ONEに 出るんスよね!」
「あー・・・まだ未定」
誘われてはいるんだが・・・。
陵ONEとは、柔道部、空手部、レスリング部、などなどの合同企画『 陵湘高校格闘マッチ 』の中の一つで、毎年 陵湘文化祭で開催される。
K1形式の陵ONE、PRIDE形式の陵KYO、剣技の陵KEN、と三種類ある。
「でも竜先輩って、空手とかの経験者なんですか?」
「んーまあ、そんなとこか」
「案外、中学のときに暴れてたり」
「はっはっは、まさか」
ちょっと正解。
「しかしムサい男の対戦なんて見にくる人間がいるんかね?」
「応援も部のやつばっかでムサかったりして」
うわー、いやだなー。
やっぱり断ろうかな。面倒だし。
「いや意外と女子が目当ての先輩とか見に行くらしいですよ?」
「へー」
「友達と来た子とかに惚れられちゃったりして・・・」
おいしいじゃないスか!と少々羨ましげに言う。
「いや、別に・・・」
ムサいのは嫌だが、別に惚れてもらわんでも良い。
「あ!先輩はもう伊集院さんいますもんね!」
「いやそれも別に・・・」
「またまた!とうとう観念したって有名ですよ!」
このぉ、と目をカマボコ型にして小山が笑う。
どうも俺と伊集院は夏の間に出来ちゃったカップルの一組に数えられている。
噂の発生源は川原とかからサッカー部、リカマノからクラス&二年・・・だろう、おそらく。
(俺が言いふらしたワケではない。断じて違う)


となると、視線の予測もつくってもんだ。


「ははあ、真琴に懸想する男からだ、と思うわけね?」
シズカは柔軟して道場の床に2つ折りになっている。
「たぶん」
俺は腹筋中。
高校受験のときは、じいちゃんが死んでから勉強していなくて、受験前には四六時中机に噛り付いていたが、 今はそこそこ勉強してきていたので九月の今の段階ではまだ余裕がある。
シズカは心の喪中(本人がそう言った)らしく、女性とのお付き合いよりも道場やプールや馬場に出現している。

「意外と、竜に懸想中v かもしれないぞ?」
ニヤニヤと言う。
「いや、ありえん」 きっぱり。
「いや〜どうかな〜。真琴って例もあるしなー」
「アレは変人だから」
「あ、真琴に言ってやろ」
どーぞ。
「真琴以外にも変人はいるかもしれないじゃん」
「んー、それはあるかもしれない・・・が」
腕立て伏せをしながら答える。

「あの伊集院と勝負しようって人間がいるか?」

ちょっと見ただけでは、完璧だ。

「ちょっと見た、って」
ホントは違うってことですか!!?
お、伊集院。

「だいたい『ちょっと見ただけ』でフッたくせにー!!」
「わ、バカ・・・!」
鼻 打った! 鼻!!
どんっと上から抱きついてきて、腕立て伏せ中の俺は、みごとに潰れた。
「おかえり〜真琴」
「ただいまです、兄さま」

俺の上で正座すんなーー!!!

「ちゃんと虫除けしたのに・・・」
噂の発生源は お前か!!

座り込んだ俺の背中に張り付いた伊集院はシクシクと泣きまねをする。
「見つめられて喜んでるなんて〜〜竜くんの浮気者〜〜」
「喜んでねーよ!」
むしろ気味悪いっつーの。
俺に向き合って制服のままの伊集院は、俺の両手を取った。

「『 俺は真琴だけが好きだ 』」

「・・・って言ってくれたら信じます」

アホか !

「だって竜くん好きだって一度も言ってくれないじゃないですか〜〜」
「何度も言ったじゃん」
「意味が違ったでしょ!」
む、鋭いツッコミ。

ふぅ、と伊集院が溜息をつく。
「・・・わかりました。 百歩譲って」

「『 愛してる 』でいいです」

全然 譲ってねーよ。






つづく




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