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HAPPY、HAPPY、LOVELY ! − school festival −





「お前が姿かたちも見られないって段階でおかしいだろう」
由希はフライドポテトを片手に指摘した。
「やっぱりそう思うか」
「陵ONEに出るやつの闇討ちだったりしてな」
鈴木がチキンバーガーに噛り付きながら言う。
「まさか」
それはない、と俺はイカリングを口に放り込んだ。

俺たちは、模試の帰りにファスト・フードに寄って腹を満たしている真っ最中だ。
運動せずに勉強ばかりしていても、1日3食では足りない。

「アイツら、話のネタに俺を誘っただけだからな」
お祭り半分なので、そんなに必死に対戦することはないだろう。
まぁ伊集院のことがあるから、本気で向かってくる連中もいると思うが。
(そして男どもから負けることを期待されている俺。)
「なんで今年は受けることにしたんだ?」
1、2年のときは断ったんだろ、と鈴木が訊いた。
「そりゃ、面倒くさいから」
俺が出ても大して意味があるとも思えなかったし。
陵湘の文化祭は来年受験する予定の中学生も来るから、陵湘格闘マッチは部活の宣伝もかねて行われる。
衣装も奇抜なモノだらけだし、部活対抗のような面もある。適当に騒ぐだけのものなのだ。
俺は単に経験者だからと誘われただけだ。

「…で、今年は?」
「挑戦されたら引けねーだろ」
伊集院がなんだって言うんだ。
ふん。
返り討ちにしてやる。
せいぜい後悔するんだな。



真琴は俺のモンだって、わからせてやるぜ




      「身のほど知らずどもが。」





由希と鈴木が目を丸くして俺を凝視している。
鈴木にいたっては、パカーンと口が開いたままだ。

視線が痛いデス。


あの〜…

「……ヒトの後ろで」

アテレコするのはやめてもらえますか、塩谷さん。

「ちぇ、バレたか」
ひょこ、と俺のイスの後ろから塩谷は出てきて、隣の席に座った。
バレるに決まってるだろ!

「うわ、ビビッたぁあ〜…今の塩谷の声?」
鈴木が訊く。
「そうだよん」
上手いなぁと、のん気な会話。 おそらく塩谷も模試帰りだろう。

「…ああ、なるほど」
由希が遅れた声を出す。
「?」
珍しく反応が遅かったな?

「ナゲットいる?」
塩谷が箱を差し出すので遠慮なくもらった。
「映画の方は進んでんのか?」
鈴木が訊く。
文化祭で公開する映画のことだ。
「おう。今回は真琴ちゃんのおかげで動員見込めそうなんだよねー」
毎年 上映している教室は閑散としているのが実状らしい。
「もう仕上がったんだろ?」
鈴木もナゲットに手を伸ばして正面に座った塩谷に訊いた。
「もうちょっと編集すれば完成かな」
「頑張れよー」
「ご期待に応える出来にしときまス」
たくさん客が来てくれそうだし、と塩谷が言う。
「感謝感謝」
「いや、俺に拝まれても」
「一宮を追い掛けて転校してきたって聞いたし」
にやり、と塩谷が笑う。
まったく、ほとんどの人間が事情を知っている。
プライバシーがない。
付き合うにしても、口止めすれば良かったよホント…
「そんな無駄な」
由希が言った。
ハイハイわかってますよ。
どーせ話なんてすぐ洩れますよ。

おかしい。
俺はもっと地味に生きる予定だったのに…。

「もちろん一宮も見に来るだろ?」

そりゃ。

もちろん、行きません。


にっこり。



なんだよー来いよーー、とブウたれる塩谷は置いて、屋敷に帰った。

「りゅーうーくんっ」
はいっ、と帰った途端、伊集院に包みを渡された。
「なんだ?」
「プレゼント♪」
「はあ?」
なんでイキナリ??
しかも・・・包みが新聞紙?
一体なんなんだ、と言いながら包みを開ける。
「・・・イルカ?」
「シャチですー!」
というよりマグカップ。
白いマグカップにシャチが海からジャンプしている絵がついている。
「えへへ、おそろいです」
伊集院がもう一つ紙袋から手に持って見せる。
ニコニコと嬉しそうだ。

「・・・えーと?」
いまいちよくわからない。
「可愛いですよね!」
「うん?」
いったい何がしたい、伊集院真琴。

俺の伺う顔にも気がつかずに伊集院は嬉しそうに訊く。
「これ、いくらだったと思います?」

・・・あー。

「わかった、わかったぞ伊集院」

つまり、アレだ。

「なんと! 100円だったんです!」


突撃! お嬢さま 100円均一 初体験! の巻。


「100均に行ったのネ・・・」
「すごいですね! 百円であんなに色々なものが買えるなんて!」
いやあー。
世間の人は食器に何十万何百万も使わないんですよー。(遠い目)
「文化祭の買い出し?」
「はい、クラスの」
「ふーん」
映画にクラスに実行委員か〜。
「大忙しだなー」
「みんなでイベントするの、楽しくて」
元の高校とは少し違いがあるようで、その違いも楽しいようだ。
前の高校もシズカや伊集院みたいのがいるなら、それなりに楽しくやってそうだけどな。
(俺的金持ち標準 = 伊集院家 ← 誤解ありか??)

「そういえば二年レッドは飲食店ゲットしたんだよなー」
高校では、飲食店が3つしか出せないと決まっているので、一、二年で店をやりたいクラスが抽選をする。
陵湘は他にも学食が主催という形で、屋台形式の店を出してくれるため飲食販売も盛んにできる。
基本が地域密着高校なので、お祭りは地域の祭りになるのだ。
「食べに来て下さいね v
「食券くれ」
「世の中そんなに甘くありません v
にっこり笑う伊集院。
「ま・け・ろ」
にっこり。
「・・・・」
「・・・・・」
交渉して、まけさせた。
ラッキー。
小山がいるときにでも行って、さらに一、二品おごらせよう。

「ま、サンキュ」
マグカップを少し上げて言った。
勉強中に部屋でお茶やらコーヒーやらを飲むときに使える。
「竜くんのイメージ、これかなあって」
「へ?」
何が? シャチ? もしかしてシャチが?
思わずもらったマグカップをまじまじと眺める。
なんというか、あれだ。
イラストのシャチだから、こう、本物っていうより・・・
「強くて格好よくって、しかも」

カワイイ!

誰がだーー!!

かわいいってなんだ! その曇りきった目を検査しろ。頼むから。
「両目とも2.0です」
そうか、網膜からの信号が狂ってるんだな、きっと。
いやいや信号を受け取ってる脳が悪いからか?
俺が考えていると、じぃっと伊集院が俺を見つめていた。
「・・・・・・」
う・・・、この目つきは何かまた変なことを思いついてるぞ・・・

「竜くん、ありがとーのちゅう

「はっ?」
「ありがとうのちゅー下さい!」
にこにこと両手を広げる。

そうきたか・・・

がっくりと椅子に沈み込んだ。
伊集院は手を開いたまま期待に満ちた目で俺を見てくる。
うーん。
振り回されてばっかりっていうのも癪だ。
どうしてやろう。
今度は俺がジッと伊集院を見返すと、 次第にじわじわと頬が赤くなって、落ち着きをなくした。
わかりやすい。
簡単すぎるぞ、伊集院。

「・・・よし。感謝の気持ちとして、キスしていいぞ」
「え?」
「だから、していいって。」
簡単なのから濃厚なのまで好きなように。

「ドウゾ?」

顎を上げてニヤリと笑った。
とたんに伊集院はからかわれているとわかったのか、ムゥと唇を引いて、俺の顎に手をかけた。

ゆっくり睨むような伊集院の顔が近付いてくる。
お互いの目は合ったままだ。
息が届く。
うす茶の透明な膜に俺の目が映っていた。
長い睫毛が一本一本まで数えられるほど至近距離で見返すと、 網膜へ届く黒い底まで覗ける。


「〜〜〜〜〜〜竜くんのバカっ!!」
真っ赤な顔をして伊集院が俺を放した。
「ははは!」
やっぱり出来ないでやんの。
突き放された頭を背もたれに乗せて笑う。
口を開けて笑っていると、ガシッと伊集院は俺の肩を掴んできた。

「え?」
伊集院の顔が下がってきた。
へ 、おわ、・・・

いてーーー!!!

がっぷり、と首を噛まれた。
お前なあ!!
首に手を当てる。
「べー!だ」
今度は鼻に噛みあと付けてやる!という捨て台詞を吐いて、伊集院は部屋を出て行った。

・・・鼻・・・。

鼻は、ちょっと勘弁してほしいなあ・・・。






つづく

* こちらのシリーズはフィクションです。陵湘高校に
名前・行事など似た高校があっても別物です。




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