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HAPPY、HAPPY、LOVELY ! − school festival −





くそ、大沢め。
あとで絞めてやる。

『小さくシャドーする一宮選手!』
『赤い拳が火を吹くか〜〜?!』

『ご存知、陵ONEは事故防止のためヘッドガード、グローブ、マウスピース着用です』
『膝、肘を使った攻撃は反則です。もちろん、金的も反則!』

『さぁ青コーナー、園部三平選手の入場!』
園部はピョンピョンと軽く跳ねながら、更衣室2から出てきた。

「サンペーく〜ん!」
「がんばって〜!」

『おおっと大人気!三平選手!』
『手を振って応えながらリングへ進みます!』

「負けんなよテメー!」
「負けたら罰掃除だぞー!」
「ちきしょー三平め〜!」

『先輩たちからも温かい?声援!』
『いま!』
『リングに到着ぅうう〜〜!』

俺の目の前に来た園部は、まったく緊張感なくニコニコしている。
ふーん。
こういうヤツは盛り上がれば盛り上がるほど調子も上がる、本番向きのタイプだ。

『解説者には、両部のOBをお招きしています!』
『過去のチャンピオンとして、どうですか!』
『んー個人的には後輩の三平選手が頑張ってくれることを期待してしまいますが、一宮選手の実力は全くの未知ですからねえ』
『なるほど!』
『 さーーあ注目の第一戦!』

「両者、軽く拳を合わせて挨拶して」

ん?
審判を見ると、担任の小日向センセイだ。
そういえば空手部の顧問だっけ? 経験者なんだよな。

「二人とも俺の体育クラスだからな、平等だぞ」
俺と園部の視線に気がついたセンセイは、真面目な顔して言った。
ちぇ。
俺の担任なんだから俺に甘くしろよ。

「礼!」
頭を下げる。
園部はランランと目を楽しげに輝かせて俺を見た。



「 は じ め ! 」


タン、タン、と園部は軽いフットワーク。
距離を保っている。


「へへっ」

「!?」

タ、タタン!


一瞬、園部の背中が見え・・・

飛ん…っ


回転!

蹴りだ!!!



風を切る音がして、園部の足が目の前を通り過ぎた。


あ…ッぶねーー!


「あれー?」
残念そうに園部が声を上げる。

今すげえ跳んだぞ、コイツ。

跳び回し蹴り? か?

なにか企んでそうだったからなー…警戒してて良かった。

『これはスゴイ!』
『回し蹴りでしょうか?!足技の多彩なテコンドーならでは!』
「すっごーい!」
「見た今の?!」
「すっごい跳んでたよね?!」
「カッコい〜〜〜!!」
『ティミョ・トラ・ヨプチャ・チルギですね、いわゆる跳び回転横蹴りです』
『ははぁ!いきなり狙ってきましたねぇ!』

「アホお〜!」
「三平、おまえぇえー」
「そんな大技がイキナリ当たるかバカ!」
柿沼をはじめとする上級生から罵声が飛ぶ。
「ええ〜〜だって派手な方がいいじゃないッスか〜」
根っからのお祭り好きといった様子でニコニコと言った。
「さんぺーくぅ〜ん!」
黄色い声にも手を上げて応えている。

やれやれ。
本当はこういうヤツが残った方が観客としては面白いんだろーけどなぁ。
一回戦目で運が悪かったということで。

「・・・で、いい?」
「あ!ハイハイ再開しましょ!」

また、タン、タン、とリズムの良いスタイルで俺を伺う。


んー、まぁ異種格闘技っつうか、こういうのは「 慣れ 」だからさ。
悪ぃな。

左、右、とコンビネーションを仕掛ける。
園部は相変わらずのスピードで避け、余裕の顔だ。

速い前蹴りが直線で 腹を狙ってくる。
よけて、懐に入り、ボディブロー。
が、身体を逸らし、なんとか直撃をまぬがれた園部。

まだまだ。

「ふっ!」
すかさずのローキックが、もろに園部の脚に入った。
「…ッ!」
怯んだ顔に右フック。


・・・直撃。




ま、こんなもんだろ。





『・・・・・・だ、』



『 ダウぅううーーん! 』



「…キャーー!いやぁ三平くーん!」
「立ってぇーー!!」
「うそぉ〜〜〜!!」

ワン! ツー!


「いちちち・・・」

スリー!


「効いたぁ〜〜」
顎を押さえて、上半身を起こす園部。


フォー! ファイヴ!


「ばっか!立て三平ー!」
「根性みせろー!」

「立ちます、立ちます…いてて」

シックス!


「んしょ・・・」
片膝に手をついて、立とうとする。

セブン!


「あ、あれ…」
ストン、とまた腰が落ちた。

エイト! ナイン!



「た、立てない……!!!」



ぇえええん!





『 一宮選手の勝利〜〜〜! 』


テコンドーは胴部より下の攻撃がないからなぁ。
ローとか慣れてないんだよなー。フックもないし。

強い弱いの問題じゃなくて、経験値の差。

ま! 仕方ないよな。
一年で、陵ONE初出場だし。来年がんばれ。

「りゅ、竜・・・」
「いちみや・・・」

「お前・・・」
「え、え、え・・・」

え?



「えげつねぇえええー!! 」

「おまっ!一年相手にそりゃねーだろ!」
「容赦ねえなっ!」

えええ?! 責められてんの、おれ?!

「もうちょっとこう、お祭りらしい技でだな…!」

「なんだよ! ちゃんと優しくしたろ!」
空気を読んで、パフォーマンス中も待ってやったし!

「どこが!」
「思いっきり入れただろ!」

なにいってんだ!

「 試合じゃなかったら 蹴りをよけた段階で

 残った足払って、転んだ腹に膝入れてるぞ?!




 ↑
 反則。





「・・・えげつねぇええーーー!!」
なんで?!!!






「竜くん・・・」

「一宮先輩・・・」




陵ONEのヒール(悪役)決定・・・」








はぁ、と伊集院が溜息を漏らして。

裏で不吉な名前がつけられていることなど、俺は露知らず。


「いいぞー!」
「やっちまえー!」
『 さーて、注目の第二戦ですが・・・ 』
『 先ほどから一宮選手の苦戦が見られています! 』
『 避けてばかりですねえ 』
『 連続技に、辛うじて防衛にまわる一宮選手! 』

あーうるせえ。
さっきはアッサリ倒したら非難轟々だったじゃねーか。

だから、俺はこうやってだな・・・

チャンスを窺って・・・


 ヒュッ!

バキィッ



後ろ回し蹴り! キレイに決まりましたー! 俺、天才!


「エゲツねぇえーー!!」
「るっせー! ちゃんと大技で決めてやったじゃねーか!」
何が不満だ!

『強い!強いですね〜!一宮選手!!』
『前半は少し苦戦したかのように見えましたが…』
いや、まぁ、秒殺じゃ可哀想だろ?
こんなにサービス満点に戦ってやったのに、まったく。
『解説者の皆さん、どうでしょう、一宮選手は?』
『んー…まだ余力がありそうでしたね。一宮選手の場合、格闘の下地が空手でもテコンドーでもないので・・・どんな技が飛び出てくるか判らない怖さがあります』
『どれだけのものを隠し持っているか、まだ底は知れないと思いますよ。経験者として言わせてもらうならば、難しい相手だと言うしかないですね』
『ははぁ! やりにくい相手である、と』
大沢がおおげさに頷く。
確かに手の内が明かされていないというのは、かなり有利に働くものだ。

『新聞部の調査によりますと、一宮選手はおじいさんが格闘家だそうですよ』
『今月号の特集に友人談が載っていますね』
『ええと・・・』

『「物心ついたときには じいちゃんと山で暮らしていた」』

・・・俺は某サイヤ人か。
   山で暮らしていた 山に行っていた


『こうも書いてありますよ。「ずっと道場破りをしていたらしい」!!』

道場破り
 ↑いろいろな競技の試合に出ていた


『「 そして一宮竜也はこう言った! 」』


『「 オレは戦うために生まれてきたんだゼ? 」』



おお〜〜!!


どいつもこいつも適当なことばっかり・・・


『さーあ、陵ONEベスト4が決定しました!』
『皆さんにインタビューをしてみましょう!』
マイクを持った大沢と、放送部の二年、そして俺たち4人が特設リングに集められた。

『まずは下馬ひょ…ゲフン前評判どおり、空手部の主将、空手界の貴公子!唐沢選手!!』
ぶっ!貴公子って。
俺が噴き出すのを堪えて目を泳がすと、沢田は遠慮なく爆笑していた。つられて大笑いする。 唐沢が睨んでくるのが視界の片隅にあるが、すまん、お前も恥ずかしいよな!ぶはは。
『唐沢選手、さきほどの激闘、すごかったですね! 一年のときも対戦している柿沼選手、やはり強かったですか?』
『ええ、そうですね。一年のときは負けてますし…』
『見事リベンジを果たしたわけですね〜!』
ほう。
一年のとき、負けたのか。意外だ。
「ま、油断もあったけどな」
沢田がいう。
「まぁ…慣れてなかっただろうしな」
競技は競技。結局、 ルールの下に行われるものだ。
ルールが変われば、強い弱いなど簡単に逆転してしまう。
まして試合は、相手の技をある程度知っているという前提のもとに成り立っている。相手の技の引き出しを知っていることが試合メイキングになる。
なまじ自分が強いと知っていた、傲慢な一年であっただろう唐沢の姿は容易に想像がつく。文化祭のお祭りだと、なめて柿沼に倒されたんだろう。

などと真面目なことを考えていても・・・

「きゃー!」
「唐沢くぅーん!!」

『すごいですね!貴公子への声援!!』
ギャハハハ!!
俺と沢田はまた爆笑した。

『次に、そこで爆笑している空手部元主将、沢田選手! 』
『沢田選手は「空手界の紳士」と名高いですね!』
ぶあっはっはっはっは!!
紳士〜〜?!!わはは!! バシバシと沢田の背中を叩く。
沢田は真っ赤な顔をして、
「うっせえよ、一宮」
と俺の脚を蹴った。

『そしてテコンドー部の主将、嵐山選手!』
「どおもー」
『華麗なる足技で次々と強敵をなぎ倒しました!』
『どうですか、明日は去年負けた沢田選手との再戦になりますが!』
「うーん、ま、ぼちぼち頑張りますよ」
『はぁー!相変わらずクール!』
『寝ぼけた目が心をくすぐるのか?! 嵐山選手にも先ほどから黄色い声援が飛んでいます!』

『そして来ましたダークホース!一宮選手!!』
マイクを向けられた。
『どうです、明日への意気込みは?!』
えー?
「あー・・・」

「や・ら・れ・ろーー!」
「真琴ちゃーーーあん!!」

『おおっと!さすがに陵ONEのヒールには黒い声援が!』
え?
ヒール?

「きゃーー!リョウく〜〜ん!」
「明日も頑張って〜〜!」

『黄色い声援も?!』

「明日もエゲツない戦い楽しみにしてるぜー!」

『ヒールファンの方々もおられるようですね!』
いや、だからヒールって何?!

「アリスちゃーん!」
「目を覚ましてくれー!」

「リョウくーーん!」

「い・ち・み・やー!明日は全員血祭りだぜぇー!」

『さまざまな声援が飛び交います一宮選手!』
おいおい。
俺って、どういうキャラにされてんの??

「よっ! ヒール一宮〜!」
「ブラッディ一宮〜!!」

って・・・

川原!鈴木!その他クラスの面々!!
お前等かーーー!!

        変な声援すんな!!


ブラッディの赤いグローブは返り血を隠すためだという…


なんじゃそりゃー?!!


「いやー、やっぱり巻き込んで良かったぜ、一宮」
「…沢田ぁーー…」
明日の試合、覚えてろよ。 血祭りだゼ?









つづく






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