つかれた。
ほんっとーーーに疲れた。
羞恥プレイを受けるわ、試合は憂さ晴らしにもならないわ、ヒール呼ばわりされるわ・・・
ついてなさすぎねえ?
家に帰った俺は、ベッドにうつ伏せに倒れ込んだ。
文化祭一日目にしてコレだけ疲れるって・・・
明日、身体がもつんだろうか。
・・・あー・・・風呂に入んないと・・・
↑ まぁ当然そのまま夢の中ですよ。
「うーー・・・」
流石に制服のままでは寝にくかったのか、身体に違和感を感じて目が覚めた。
寝ぼけたままの目で時計を見ると11時。
すっかり寝入ってしまった。
(風呂はいろ・・・)
身体を起こすと、なにやら隣りに物体がある。
ん・・・?
腕を上げると、絡んでいる栗色の髪の毛。
んん?
目を下げていくと、
白いシャツ
制服のスカート。
そのミニスカートから、
肌色の、ふとも…も
のわ !!
いいいいいいい、
伊集院!!
「何やってんだこんなとこで!!」
飛び退いて壁に張り付いた俺は、ベッドの隣りで寝ていた伊集院を見下ろした。
「伊集院?」
「・・・・・・」
横向きになった伊集院は、俺に背中を向けていて表情が見えない。
「おい」
「・・・・・・」
「こら」
「・・・・・・」
どうやら無視を決め込む気らしい。
「・・・パンツ見えてんぞ」
ガバッ!
「う・そ」
勢いよく起きてスカートを押さえた伊集院に、ニッコリ笑う。
「~~ッ竜くんの馬鹿!」
「へーへー」
真っ赤になった伊集院に適当に返事をしながら俺は椅子に座った。
「なんか用か?」
そう訊いて、スカートを後ろ手に押さえたままベッドに座り込んでいる伊集院を見る。
陵ONEのあと用のない俺は帰ったが、伊集院はまだ仕事が残っているといって学校に残っていた。
「・・・・・・」
伊集院は赤い顔のままプイと横を向く。
「うぉーい、追い出すぞー」
「・・・・・・だって・・・」
捨てられた子犬のような目で伊集院は俺を見上げた。
「?」
俺が見返すと、また俯いてしまった。
「・・・竜くん、本当に手加減していたんですね」
ぽつん、と伊集院が言う。
「え?」
「前に、私と勝負したとき・・・」
ああ。あのときか。
「そりゃー当たり前だろ」
殴ったり蹴ったり出来ないだろ、さすがに。
(威嚇としては使ったけど)
当然の顔をして言う俺に、伊集院が脱力してパタリと横に倒れた。
ベッドに横になったまま、はぁ・・・と盛大な溜息をつく。
「なんだよ?」
長い髪が邪魔で顔が見えないので、俺は額に手を伸ばして伊集院の髪を上げた。
「もう・・・」
しかし伊集院は顔をうつぶせて隠してしまった。
「なんなんだよ?」
意味わからん。
「私、馬鹿というか情けないというか・・・もう・・・」
はぁーとまた溜息をつく。
何なんだ。
「いやまぁ、伊集院が馬鹿ってのは今更だけどな?」
「もう!そうじゃなくて!」
ばふん!と枕で俺の頭を叩く。
「そうじゃなくて?」
枕を奪って訊く。
手に何もなくなってしまった伊集院は、上掛けを抱き締めてスネたように唇を尖らせた。
「・・・知っていましたけど」
恨めしい目で俺を睨む。
「手加減してるって、そんなの・・・、でも・・・。 本当に、ほんっとうに、ものすっっごく、手加減していたなんて!」
「・・・あー?」
えーと、なに?
「俺が手を抜いたから怒ってんの?」
いまさら?
「・・・そうなんだけど、そうじゃなくて・・・」
途端に伊集院は、しょんぼりと目を落とした。
「私、ぜんぜん竜くんを本気にさせられないな、って」
「は・・・あはは!」
「・・・っっ!最低っ!」
ぼふ!と俺の持っている枕を伊集院が殴る。
「わはは、わり、そうじゃなくてな」
笑いながら宥めるように伊集院の手を取った。
「俺、最初から伊集院には本気だったろ」
「え・・・」
「だって、そうだろ」
枕に顎をのせて、笑い掛ける。
いや、ほら、だって、なあ?
「俺、必死に逃げてたよな?」
「・・・!・・・っ!!!」
「まぁまぁ」
赤くなったり青くなったり、忙しない反応の伊集院の頭を撫でる。
「もーいいじゃん、過去のことは」
昼間のことだって、そう。
いや怯えさせた昔の俺が悪いんだけど、まぁ、あんときの俺の本気はアレだったわけだし。
もちろんその後だって、本気だったし。
ずっと。
「俺はいつだって本気だったろ」
ぽん、ぽん、と頭を撫でる。
伊集院は自分の頭に乗った俺の腕を両手で掴んで、不安に揺れる目で俺を見上げた。
「・・・いつも?」
「おう」
「・・・竜くんを、くれたのも?」
「おー。やるっつったろ」
「・・・!」
ぎゅう、と伊集院が抱きついて俺の肩口に顔を埋める。
「おーい」
「・・・・・・」
「泣ーくーなー」
「泣いてません!!」
嘘つけ。
鼻声じゃねーか。
「・・・だって、竜くん、前と何も変わらなくて・・・夢だったんじゃないかって」
本当のことだったなんて信じられなくて。
ずっと竜くんは振り向いてくれなかった。
きっと私、ずっと竜くんを追いかけることになるんだって思ってて。
「ずっとかよ」
気が長いな。
「竜くんのせいでしょ!」
ぎゅうぎゅうと俺に回した腕に力を込めながら、伊集院が責めた。
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・なあ、」
いつまで抱きついてんの?
「竜くんの補充が済むまでです!」
さらにギュ~!とされてしまった。
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