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HAPPY、HAPPY、LOVELY ! − school festival −





ふぁああ〜〜。

大あくび。
昨日の夜、伊集院のせいですっかり目が覚めてしまった俺は、風呂に入ったあともダラダラと寝付けずに夜更かしをしてしまった。
しかも今日は昨日 当番をサボった罰に、朝一番からクラスの準備を言い渡されていた。

「あ、一宮、おはよー」
「うーーっす」
「はよー」
教室にはもう何人か集まっている。
「竜、眠そうだなー」
「昨日あんま寝れなくてな」

「 なに?昨日の夜は
 真琴ちゃんとウフフ?

そんな事実は断じて無い。 うふふ?


「あ、いいところに、竜」
「ん?」
「はい、これ頼んだ」
「へ?」
「一宮、アレお願い」
「え?」
「一宮、それ」
「・・・・・・」

もともと当番ではなかった俺は、みんなの都合のよい雑用係だった。

「竜、あれ」
「ハイ」
「一宮、それ」
「ハイ」
「一宮」
「竜」
「ハイハイハイ!」

・・・いや、まあ、当番わすれてた俺が悪いんですけどね?

俺は教室のすみで近所のガキがぶち抜いた看板を直しながら溜息をついた。


「はーはっはっは!」

バーーン!と教室のドアが開いた。
「勝負に来てやったぞイチミヤ!」
「・・・・・・」
「なんだその目は」
    ↑ うわー、また面倒なのが・・・という目

「いえ、別に」
ふっ、俺も大人になったよ。 目を逸らして作業に戻る。

「アリー先生もゲームをしに来られたんですか〜?」
「うむ!」
クラスメイトの問い掛けに、腕を組んだアリーは偉そうに頷いた。
くるりと俺に向き直る。

「勝負だ!イチミヤ!!!」

目から嫌がってるの察しようよ!!!!!



「ふー」
ま、無理だよね、この人に察するとかね。
あ〜〜眠いし午後から試合もあるし疲れたくなかったのにな〜〜。
「いっスよ」
直った看板を廊下の元の位置において、教室に入る。
「あ、アリー先生、こんにちはー」
子供相手に将棋をしていた川原が顔を上げて挨拶をした。
「竜、勝負か?」
「おう」
俺はキョロと辺りを見渡した。
「先生、なにで勝負したいスか?」
教室には将棋やオセロ、囲碁やチェスやトランプ、TVゲームまである。
「何を言っている!もちろんコレだ!!」
ビシィッ!と張り紙を指さした。

『この人に勝ったら賞品自由!』

「ああ」
ゲームごとに強いクラスメイトの名前が貼られている。
そいつに勝ったら、賞品が自由に選べるという企画だ。
俺は、『スピード』
トランプゲームだ。

「んじゃ、ちゃっちゃとやりますか」
俺はトランプゲーム台の前に座って、 どーぞ、とアリーに向かいの椅子をすすめた。
「坂井〜、審判よろしくー」
不正のないように一人見張りをつけるのが原則になっているため、手を振って坂井を呼んだ。
「はいはーい」
坂井は賞品受付からテテッと駆けてきて、
「挑戦者、現われましたー!」
と鈴を鳴らした。

「おおーアリーせんせ、挑戦ですかー!」
「リョウ君がんばってー☆」(←男声)
教室にいた物見高いヤツらが集まって、テーブルを囲む。 リュウだ!つーの!!
「では、アリー先生、勝負の前に賞品を決めていただけますか〜?」
「うむ!そうだな!もちろんもう決めてある!」
くるりっと俺に向きなおるアリー。
「ふっ! もちろん」

「真琴だ!」

で、すよネーーー。

「いや、賞品じゃないっすから」
壁に貼ってある賞品表から選んで頂けます?
「なに!自信がないのか?!イチミヤ!」
「自信とは別問題です(きっぱり)」
「はっはっは!この日のために特訓をつんだ私に恐れをなしたか!」
「いい歳こいてトランプの特訓せんで下さい」
相変わらず日本語は話してるけど内容は通じないヤツだ。
そもそも、伊集院は俺のものじゃねーし。
「イチミヤー!私との勝負から逃げるのか?!」
「逃げとらんわぁ!!」

「せんせい…」
そっ…と高岡がアリーの肩に手を置く。
「人は賞品にしちゃダメ…。そうでしょ…?」
「たっ、タカオカくん…!」

ガシィ!

「わ、私が間違っていたヨ…!! そうダ、その通りだ…!!」

えええぇええ〜〜?!

「ひとの気持ちをもてあそぶようなマネ…! 私は最低ダ…!」
「せんせい…落ち込まないで」
「恋ってそういうものよね…」
をいをい?!
「せんせい、賞品はこれでいいわよね…」
そっ…。
高岡が優しくアリーの手に何かを持たせる。
「もちろんだ…!私にはこれで充分ダ…!」

チロルチョコですけど、それ

「あの…勝負は」
「ああ、済まなイ、イチミヤ。キミは分かっていたのだな」
「ハイ?」
「これは、賞品などではない、我々、男と男の勝負だ…!!」

あーハイハイ、さっさと始めましょうや。


「あ!」
「アリスだーー!」
へ?
「竜くん?アリー?」
人垣が割れて、 ひょい、と伊集院が顔を出した。


「真琴!」

ガッシィ!!
「僕が悪かったよ…!!キミを賭けに利用するなんて何て僕はダメな人間ダ…!」
「え?え?」
抱きつかれた伊集院は突然のことに目を白黒させた。
「おいおい、勝負すんだろ」
離れろバカ教師。
首根っこを掴んで引っ張る。

「僕の愛を見ていてくれ・・・!」


離れろっつーんだよ。




まったく。
ずるずるとアリーを引き摺って椅子に座らせた。

「やるなら さっさとやりましょう」
俺だってヒマじゃないんだ。 雑用とか雑用とか雑用とか・・・

「はっはっは!真琴の応援を得た私に敵はナイ!」
高笑いするアリーに、シャッフルしたトランプを坂井が渡す。
「はい、アリー先生。一宮も」
「覚悟しろイチミヤ!」
「けっ」
トランプゲームは腐るほどやってきた俺だぞ。
じいちゃんの道場で負けなしだったのは、格闘だけじゃねー。

もらったトランプを四枚、表にして並べる。
QUEEN、7、10、3
よく切られている。やるな、坂井。

『スピード』は、中央に両者が出したカードの数字に、表に出した四枚のカードの中で数字が続いているものを出していくゲームで、先に手持ちのカードがなくなった方が勝ちという単純なゲームだ。
ようするに、名の通りスピードが勝負となる。

「用意はいい?」
「おう」
「カモーン!」

OooNE, TWOoo...
左手に持ったカードに右手を重ねる。


THREEeee...



START !!!


アタァ !!
パシッと中央にカードを置く。
俺の出したものが、2、アリーが5、すかさず俺は手持ちの3を2の上に出す。
そしてアリーが6を手にしたところで7を掴み、ほぼ同時くらいにアリーの6の上に7を出した。

手持ちのカードを二枚、減った分を開く。
KING、8、すぐに7に8を重ねる。


「 アタ! アタタタタたたたーーあ!

「す、すげえ・・・!」
「は、速い!」

「手が、手が見えねえ!!?」


「こ・これが伝説の・・」


「 一宮 百裂拳か・・・!!!」






どんな伝説だよ。


「くっ・・・!」
がくり、とアリーが手をついた。

俺の手持ちはゼロ、アリーはまだ3分の1ほど残っていた。

「わ、私の敗北だ・・・!!!」
ふっ、わかりゃあいいんだ。 ←勝ってもチロルチョコだけど

「イチミヤ、しかし私はまだオマエを認めたわけではナイ!」
「あーはいはい」
別に認めてもらわなくてもいいですよー。
「トランプなどで真価が問えるものカ!」
「そうでしょうねえ」
でも特訓してきたのはアナタですけどね?

「真琴、私はまた修行しなおしてくる!!」
アリーが伊集院に振り返って両手を広げた。

「待っていてクれ・・・!」

だから抱きつくなってんだよ!

俺はアリーの脳天に かかと落としを炸裂させた。

「やっぱりヒール・・・」
「悪だな、悪」

「敗者をさらに叩き落す、其の姿はまさに外道・・・!」

だからなんで俺が悪役なんだよ?!!








つづく







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