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HAPPY、HAPPY、LOVELY ! − school festival −





「皆さん!お待たせいたしました!!!」
「いよいよ! 準 決 勝 の、始まりです!」
「陵湘最強は誰だ?!!」
「栄光を手にするのは誰なのかーー!!?」

「まず始めに対戦いたします陵KEN!
「唯一女性で勝ち抜いてきた滝口里佳選手!小さい体で素早い動き!見事でしたねー!」
それこそ見事な よどみのない解説で、大沢が選手を紹介していく。
「滝口選手は鉛筆を持つよりも先に竹刀を持っていたという伝説もあるようで!」
「はぁーー!それはまた!」
「りかー!がんばって〜〜!」
両手に面を持った滝口に、友人たちの応援の声が上がる。
「そして我らがアイドル教師。長い金髪を靡かせ流石の貴族!フェンシング!英語教師アリー先生!」
きゃーー!と一部の女子生徒が叫ぶ。
アリーせんせ〜〜!との声に、バチコーーン!とウインクをする優男アリー。

うう、胸焼けが・・・

投げキッスを見ないようにして、俺は一気に舞台に注目がいった隙を見計らって更衣室に入った。
みんなショーを見逃さないように着替えは終えていたのか、中には柔道部の宇田山しかいなかった。
「おお、リョウ様じゃねーか」
だから俺は、リュ、ウ、だ!!
「俺も見たぜーあの映画」
「へえ」
「見てないの?」
「見たくねー」
なんで好き好んで自分が出てる映画を見ないといけないんだ。
「途中は少し見たけど」
伊集院が放送室で寝ているときに横目で見たが、なんだかムカついて止めた。
「ははぁーん、焼きもち?」
「けっ」
俺は返事をせずに上着を脱いだ。
宇田山はグローブをはめて、パシパシと右拳を左手に当ててフィット具合を確かめている。
「グローブ、慣れなくてさー」
「まぁ普段は何もつけないもんな」
投げ技を使用する陵KYOでは、指の部分は隠れないオープンフィンガーというグローブを使う。
普通のグローブでは襟が掴めない。
「竜も慣れないんじゃねえ?」
「これ?」
陵ONEでは、普通のグローブだ。
「まあ、なぁ」
ヘッドギアも慣れない。
空手やテコンドーでは防具をつける試合があるので慣れているかもしれないが、基本的には俺も宇田山も何もつけないのが一般的だ。

わあぁあと会場から声が上がった。
「お、俺も見に行こう。リカちゃんファンなのだ」
準備を終えた宇田山が言う。
「そーなん?」
「勝ったあとに面を外して髪をふって、飛ぶ汗・・きりりと可愛い」
どうやら昨日からの にわかファンらしい。
「男なら臭そうなんだが」
「確かに」
俺も剣道を一時期 かじったことがあるが、夏のあれは地獄だ。
いや剣道だけじゃなくて空手も柔道も、胴着は地獄の臭いがするけど。

中央の二人は剣道部の滝口と、フェンシング部の一年の・・えーとナントカだ(人の名前覚えるの苦手なんだよ)。
「りかー!」
と応援する中には先ほどは姿がなかった伊集院もいる。
「君田〜!」
「君田くーん!」
フェンシング男の方にも声援があがる。
そうだ、君田でした。

じりじり、と二人とも大きな動きはない。
片手で剣を持つフェンシングの方が、両手で竹刀を持つ剣道よりも射程距離が長い。
フェンシング相手とは間合いを詰めるのに苦労するだろう。
自分が剣道のほうが馴染みがあるので、つい剣道としての攻略を考えてしまう。
どう出るか・・

じれた君田が前に出た。
速い。
直線距離で、それは滝口の胴にあたるように思えた。

が。

「胴ーーー!」
バシーーン!と滝口の竹刀が、君田に決まった。
うまい。
少しだけ横にずれて剣先を避けた滝口は、相手の懐まで近づいたのだ。
「決まったーー!!」
「陵KENの決勝は!」
「アリー先生と滝口選手ぅうう〜〜!!」
なるほど。
ここまで勝ち残るわけだ。
「やーるなぁリカちゃん」
宇田山がそういって拍手を送る。
滝口の周辺では、伊集院や女子生徒たちが喜んで集まっていた。

「さて!お待たせしました!!次は陵KYOの出番だーー!!」
おおぉおー!
と男どもの歓声が上がる。
「うう、俺も女の子の応援がほしい・・」
宇田山が泣きながら紹介に手を振った。
「ま、昨日より観客多いぞ!がんばれ!」
いつの間にか後ろにいた沢田がポンと宇田山の肩をたたく。
「ちくしょーお前らばっかりにイイトコ取られてたまるかー!」
宇田山はそう恨み言を残して舞台へ向かった。

さて、俺もウォームアップしてくるか。
「お、一宮は見ねえの?」
「どーせ宇田山が勝つよ」
それに直前に柔道を見ると、陵ONE形式じゃないから頭が混乱する。
間違えて唐沢のヤツを投げ飛ばしそうだ。

準決勝は、唐沢。
決勝は・・
「三年間も口説いたんだからなぁ。ここで若造に負けんなよー」
ニヤニヤと沢田が俺を眺める。
「ケッお前こそ。こっちの台詞だっての」

俺は誰にも負けねえよ。





「誰もが待っていた!!」

「誰もが注目していた!!」

「とうとう始まります!」


 「 陵 ONE 準決勝だーーー!!!


ワァぁーー!!




「二人とも強豪相手に勝ち上がってきました!」
「陵湘格闘マッチは実力者ぞろいですからねえ!」

「放送席、向かって右! 青コーナー!」
「空手部主将、唐沢 勝時!」

きゃああぁあ!!

「おおお凄い声援!!」
「昨日の戦いからまたファンが増えたか?!」
「映画の影響もあるんでしょうねえ」
「いい男っぷりを発揮してましたからね」


「そして!」
「赤コーーナー!!」

「 一宮 竜也ぁーー!! 」

オオオ!!
きゃあぁーー!

「こちらにも声援!」
「映画、格闘ともにクールな姿が受けたか?! 陵湘のヒール!」
「クールというよりボーっとしているだけだと思いますが!」
「ははは、そんなところも魅力なのか?!」

ボーっとしてるって。
・・うっせえな、ほっとけよ。大沢め。
     ↑ 図星

俺はグローブの具合を確かめながら仮設リングへ向かった。

途中、伊集院の心配そうな顔がちらりと見えたが、眉を少し上げて、呆れ顔で返した。
何を心配することがあるんだっつーの。

にやにやと通路に手を出す川原や鈴木、由希にグローブを軽く当てて通り過ぎる。



「数々の激闘を経て、いま!!」

「両者、リング上で対峙ーーー!!」



「空手の貴公子か!?」 「陵ONEのヒールなのか?!」

「栄光は誰の手に渡るのかーー!!!」

わぁああ!!!

「今回は映画研究部の協賛を得て、開催の陵ONE!」
「優勝者には映画のヒロイン、ありす とのデート権が与えられます!」

「映画でも ありすを挟んでライバル同士だった二人が!」
「とうとう!」

  「 激闘だーーー!!!」

ァァアーー !!!

大きな歓声に、びりびりと体育館が響く。
まったく、祭り好きな高校だよ。

トントン、と俺は足を軽くほぐす。
うん、手も足もそれなりに柔らかい。

「一宮先輩〜!」
「やっちまえ竜ーー!」
「リョウくーーん!」

たくさんの声援、罵倒が飛ぶ。

そして、その中に、伊集院の声は無い。

さっき通り過ぎたとき、伊集院のとなりには塩谷がいた。
つまり、そういうことだ。

伊集院が俺を応援したら祭りとして盛り上がらない。
賞品は大人しく観戦してろ、ってわけだ。

本来なら、一番前で声を張り上げてそうな伊集院なのに。

まったく・・


ぁーー」
「 ゴングが鳴るーー!」






まったくもって        ・・




  カ ァン !!







腹が立つ











唐沢 編









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