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HAPPY、HAPPY、LOVELY ! − school festival −





唐沢は後退し、俺から離れて距離を取った。


その顔には、驚きの表情が浮かんでいた。


「息もつかせぬ攻防!」
「いや、驚きました」
「相手の出方を見るタイプなのかと思っていましたが・・」
「むしろ一瞬で敵を仕留めるような戦い方をするほうなのじゃないでしょうか」
大沢と解説者が話す。

「たぶん、こちらが本来の一宮選手のスタイルなんでしょうね」

そのとーり。
俺は放送の内容に同意した。

今回の陵ONEでしか俺の戦いを知らないと、自分からは動かないイメージがあるだろう。
本当は俺は先手必勝型なんだけどね。
祭りでそれじゃあ、早く終わりすぎるからなー。
まぁこんな俺でも少しは考えているわけですよ。

一時期は、一対多勢の戦いばかりしてきたしな。
大人数相手では、一人にかける時間は少ないに越したことはない。

でも今回は。

まさか、唐沢ともあろうものが、瞬殺されるなんて、なぁ?
そんなワケないよなぁ?
ニヤニヤと俺が唐沢の顔を見ると、ヤツは怒りに顔を赤くした。

そーそー。少しはお兄さんを楽しませてくれ。
昨日は退屈すぎたよ。


スッと足を一歩進める。
「!」
ありゃ?
唐沢が冷静な目を取り戻した。

やっぱり、この唐沢は、なかなかやるらしい。
ちゃんと対戦中に頭を冷やすことを知っている。

反撃するぞ、と気配を露わにする様子は、なるほど、俺は違うと豪語するだけあるのか。


ピクリと唐沢の体が動いた瞬間、俺は先を打って、突っ込んだ。
前蹴り。さすがに避けられた。続けて、ハイキック、も前腕でブロックされる。
が、そのガードの下からアッパー。
顎を掠かすめた。
無防備な腹に、ボディブロー。
これは入った。
更にフック・・
と、危ね。
気配を感じて、上体を少しそらす。
目の前を拳が横切った。
唐沢の反撃。

ちぇ、ヤツの方が背が高いからな、リーチが長い。
少し距離が開くと唐沢の射程距離で、俺は届かない。


俺は体勢を整えて、間隔を取った。






途端、湧き上がる歓声。


「割れるような声援!!」
「いっとき、完全に会場が静まりかえりました!」
一宮選手、乱れのない連続技ーーー!!

「唐沢選手もさすがですね!」
「あの合間でよく反撃します」
「私などは一つ一つの技にもう目がついていけません!!」

アナウンスが入ると、会場も思い出したように声が飛ぶ。

きゃああー!からさわくーん!
いちみやー!やっちまえー!
リョウくーーーん!



そんな中に。








       竜くん!






特別な声が聞こえる。





なんだ、やっぱり。

大きな赤いリボンを頭につけて、必死な声で。


呼んでいる。






この戦いの勝利品が。





俺を呼ぶ。








前に出ようとする俺に、唐沢は威嚇の左フックを出す。
最小限にかわすと、また一歩進める。
「!」
飛んでくる脚。
ガッ !!
連続するハイキックを腕でガードした。
さらに攻撃が来る前に、一歩さがる。

「おおーー!」
「唐沢選手の反撃が始まりました!」
「一宮選手、近づけません!!」

「止まらない攻撃ーーー!!」


ち、勢いづかせたな、失敗。

仕掛けられる手足を避ける。
くそー、俺より少し長いからってふざけんなよ。


「唐沢選手は身長が高いですからねえ!」
「手足も長い!」
「スタイルもモデルみたいですしねえ」

きゃーー!唐沢くぅーーん!
黄色い声が飛ぶ。

その声に後押しされるように攻撃が増す。

「が、しかし!」
「当たりません!」

「一宮選手、まったく無駄のない動きでよける!」
「何もかもお見通しか!?」
「すりぬけるーー!」


あーちくしょう、やべえ楽しい。

唐沢も、だ。
目が嬉々としている。


まだだ。
まだまだ、いけるだろう?


「目で追うのがやっと!」
「空中を両者の手足が舞うーー!!」


「一宮、唐沢の懐ふところに入ったッ」
「唐沢がジャブで追い払う!」
「よける!」
「そこを追うハイキックーー!!」
あーーー!
観客から悲鳴。
「唐沢、外しました!」
「おしい!」

「一宮のアッパー!」
「残念!」
「当たらないーーー!!!」


「あ、」
「ああ!!」

ツ!!
唐沢の拳が、顎を掠かすめた。

俺の足がたたらを踏む。


「入ったぁあああ!!!」
「一宮に!」
「攻撃が入りましたーーー!」

「今大会、初です!!!」

「一宮の顎に一撃ーーー!」



その瞬間、ヤツが気負った。

とどめを、と繊細さを欠いた。



大振りの右ストレートに、





  ガ ンッ !!!!!!


カウンターを合わせた。














ダ、







  ダウンーーーー!!!!!


わぁああァーーー!!





「唐沢、ダウン!」
「カウントが始まります!」

ONE!

「一宮の右カウンターが綺麗に決まりました!」
「すごい、あそこで合わせるのか!!」

TWO!

「相手の攻撃の勢いを利用するパンチであるカウンター!」
「一宮は、そのカウンターまで使いこなすのか!?」

THREEEee!

いやぁああ!
立って唐沢くーーーん!

あちこちから悲鳴が上がる。

Four!


ちぇーー。

やっぱり、そんな甘くねぇかあ。

俺は座り込んでいる唐沢を、離れて上から見下ろす。
いま、ヤツはダメージを消すために立たないだけだ。

とっさに的を外された。
かなり効いてはいるだろうけど、クリーンヒットってわけじゃない。

俺も、顎をやられて、少し頭がぐらぐらする。
(ジョー)は脳を揺らされるから、タチが悪い。



予測通り、唐沢は、カウント終了前にスッと立ち上がった。







つづく




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