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HAPPY、HAPPY、LOVELY ! − school festival −





病院に着くと、あちこちの角度からレントゲンを撮られ、結局、足の骨以外に肋骨にも少しヒビが入っていた。
「お疲れさま」
南さんが俺の荷物を渡してくれる。
「ありがとうございます」
すべての検査や治療が終わって、病院の外に出た頃には日が暮れていた。
「すっかり日が短くなりましたね」
「そうですね」
まだ少し赤さを残した空を見ながら相槌を打つ。

「これから屋敷の方に向かいますね」
「え、あ、伊集院は?」
「真琴様はまだ終わらないでしょうから、一宮くんを送ってからまた迎えにいきます」
「・・・・・・」

「あー、あの」
「はい」
「えー、と、南さん?」
「はい?」
「・・・学校に」
「え?」
「学校に送ってもらっていいですか?」

いや、まあ、医者には今日はゆっくり休めって言われてるんだけどね?

片付けの当番もあるし、 昨日もサボったのに、今日もってワケにいかないだろ?
陵KENと陵KYOの優勝者も誰になったか気になるし。

あとは、えーと・・・
あ、そうそう、ちゃんと伊集院が温泉ゲットしてるかも確かめないといけないし?

俺が頭のなかで色々理由を考えていると、南さんが判っていますというような顔で頷いた。
・・・くそー。
腹立ちまぎれに乱暴に携帯を開く。



メール作成

 宛先:伊集院真琴
 タイトル:病院おわった


 内容

キレイに折れてるからすぐ治るって。今から学校に戻る。



送信 メニュー 戻る




送信、と。


RRRRRRR!
「ハイ」
『竜くん?!』
「おう」
『だい、大丈夫なんですか?!』
「へーき、平気。骨折なんて初めてでもねぇし、すぐ治る」
『そ・そうなんですか?』
「おー」
まぁ以前に折ったのは小指一本だけだけど。

「んなことより、温泉は?」
『いま抽選中で・・』
そういえば、周りがガヤガヤと騒がしい。

「そうか、じゃ当てといてくれ」
『待って、切らないで』
「や、もう着くし」

『待っ・・

   真琴ー!!きゃー! 』

 キィーーーン!


『 真琴!特賞!!』
『当たってるよー!!』

『あ、ちょ、』
『壇上!壇上いかないと!』
『あ、』

 ブチッ
            ツーツーツー


「・・・」
「・・・・・・」

・・・当たったのか。

        それにしたって、もうちょっと、こう・・・



俺が体育館に入っていくと、中はかなり騒然としていた。
まだ後夜祭の最中らしく、抽選は続いていて、一等あたれ、と叫んだり祈ったりする姿が見える。

壇上に注目が集まっているので俺が後方の扉から松葉杖で入っても誰も気付かないのがありがたい。
「よう」
「・・・由希」
のんびりと体育館の壁にもたれて後ろで傍観している由希が、俺を見て、ニヤリと笑う。
「由希、お前は抽選の参加は?」
「俺はこういう所で自分の運を使わないことにしてるから」
「あっそ」
変な拘こだわりのあるヤツだ。

「階段から落ちて怪我したこと伝えたよ」
笑いを含んだ顔が、すべて解ってます、といっているようでムカつく。
まぁ伊集院が黙っていたって、あんな顔をしてたらすぐ予測がつくだろう。
(っつうか、俺が階段から落ちて怪我するわけないし)

「陵KENはアリー先生、陵KYOは宇田山が優勝した」
「そうか」
ま、予想通りだな。

「で、陵ONEは」


   『 え、じゃあ俺が参戦しようかなー 』


「と、竜也の不戦敗を聞いた宇田山が、真琴ちゃん争奪戦に参加」
「は?」

   『 なにー?! それなら私もだ!!! 』

「当然、アリー先生も乱入」
「はぁ?!」

「そして、三つ(どもえ)の乱闘が始まった」

「そこへ・・・」



   『 私も参加します 』



リボンの騎士 登場


 はぁ?



や、真っ赤なリボンつけた真琴ちゃんなんだけど。 」






「 というワケで 陵ONE優勝は


       リボンの騎士だ 」





はあーー?!!







「あ、馬鹿、声が大きい」
思わず叫んだ俺の口を、由希が押さえた。

しかし、すでに遅かった。
周りの目がいっせいに俺たちに向いてしまった。




「 一宮ぁあーー!!」

「竜!」
「リョウさまだ〜〜!」

ワッと体育館が沸く。

「くそ、由希のせいで」
「いや竜也のせいだろ」
俺が睨むと由希は冷淡に答えた。

「おおー、ホントに骨折してる」
「ばっかだなー竜」
「うるせえ」
周りには同級の奴らや格闘マッチの奴らが寄ってきたが、俺は不機嫌に固めたギブスの足で蹴る仕草をした。


『 おおっ、ここで一宮竜也の登場だーー!! 』

壇上のマイクからも声がかかる。
抽選の司会をするのは、大沢、実行委員長の朝居だ。


『 映画「夏の日」のリョウ! かつ、陵ONEの立役者! 』

『 そして!! 』


『 決勝直前に 階段から落ちて骨折した マヌ・・・



  悲劇の男 だー! 』




うるっせえ!




「まぁまぁ、竜」
川原が憤慨する俺の肩をポンポンと叩く。
「いいじゃん、温泉は当たったんだからさ」
「あ、それ」
やっぱり当たってんだな?
「俺も行きたい温泉あったのになあ」
「そうよー。ペアチケットうらやましい」
「くそー、こうなったらiPod 狙うぞー!」
みんなの目はすでに次の賞品に向いているようだ。

「で、俺は賞品どう受け取ればいいんだ?」
キョロキョロと体育館内を見渡すと、賞品は壇上に積み上がっている。


そこに、伊集院がいた。


賞品の箱を握りしめて、舞台の上から俺をまっすぐに見ている。
アリスの格好で、賞品を渡す係りだろうか。

思った通りの、泣きそうな顔。
心配でたまらないとその表情が語っていた。

やっぱり、電話くらいでは安心しないだろうと思った。
俺の言葉なんて信用しないで、不安に思っているだろう、と。


唇が動く。

音にならない声が、
竜くん、と。



・・・ったく。
大丈夫って言っただろ?


ばぁーか。





     「 ・・・っ 竜くん・・・ッ!」










つづく







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