俺は、座り込んで、いま言われたことを反芻した。
探していたと言っていた。
父親は居場所を教えなかったらしい(一人暮らし先も、伊集院のことも、だろう)。
18歳、と言っていた。
それでなんとなく、探していた理由も想像がつく。
2度と会いたくない。
しかし、避けては通してくれないだろう。
立ち上がって入口まで歩くものの、吐き気が込み上げて階段の手摺りに掴まった。
・・弱い。
俺は弱いままか。
何年前の話だと思っているんだ。
いまさら何でもないだろ。
きっぱり話して、それで、カタをつけよう。
大丈夫だ。
もう向こうには利用するものなんてない。
俺に利用されるものなんて残っていない。
俺には、何もない。
だから大丈夫だ。
自分に言い聞かせるのに、次々に頭を占めていくのは、嫌悪感ばかりだ。
・・気持ち悪い。吐き気がする。なんだあの女は。
気持ち悪い。
また俺に触ろうとした。気持ちが悪い。吐く。
「・・・・・ん」
細い声がする。
「大丈夫?竜・・」
触れられてビクリと身体が震えた。
まったく人の気配に気がつかなかった。
視界に入る、細い腕。
「 さ わるなッ!」
「放せ!俺に触るなッ!!」
思い切り、振り払った。
その先に、呆然とする伊集院が見える。
―――― あ
手を振り払われた衝撃でバランスを崩し、伊集院が階段から落ちようとしていた。
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