小さな身体がぐらりと揺れる。階段で、バランスを崩して、落ちる。
伊集院の顔が、目に入った。
驚いた顔。泣きそうに歪む、怯えた目。
「伊集院…!」
ちがう、伊集院は違うのに。
階段から落ちそうになる身体を、腕を引いて胸に引き寄せる。
離れていかないようにギュッと。
もう泣かせたくないって思ったのに。
そう思ったばっかりだったのに。
ごめん。ごめんな。
伊集院が傷つかないように抱き締める。
自分の身体でくるむように抱き寄せた。
身体を反転させると、衝撃は俺の背中にきた。
「 ・・ッつ」
落下の衝撃で肺がつぶれたように感じる。
一瞬、息が止まった。
しかし階段が外で、下が土だったから助かった。
頭も打たずに済んだ。
「伊集院、大丈夫か?」
俺の上にいる伊集院を見る。
伊集院のボサボサになってしまった髪をかきあげると、こぼれそうに開かれた涙目が俺を見上げた。
「わ、私は・・っ!どこも! 竜くん、竜くんは?!」
ガバッと身体を起こし、俺を心配そうに見下ろす。
怪我した様子はない。
「大丈夫」
伊集院を抱き寄せて、ほっと溜息をついた。
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