「竜くん、放し・・、ねえ、大丈夫なの?」
俺の上から降りようと伊集院は身動ぎするが、俺の腕に阻まれて大して意味のある動きにならなかった。
「竜くんってば」
自分のことは後回しで俺のことばかり心配する伊集院に笑ってしまう。
「竜くん!」
んだよ、大人しくしてろよ。
「暴れるな」
俺がいうと、ピタリと止まった。
伊集院の後頭部に手をやって、首筋に顔を抱き寄せる。
ふわふわの髪が頬をくすぐった。
俺と同じシャンプーの匂いがする。
腕を回した身体は、柔らかかった。
伊集院の吐息が肩にふれる。
息遣いが聞こえる。
俺の腕の中にぴったりと収まる身体。
―― あたたかい。
安堵の息を吐く。
怪我をさせなくて、本当に良かった。
「りゅ、竜くん・・」
静かにしていることに耐えられなくなったのか、伊集院がモゾモゾし始める。
「あ、あの、放して」
「ねぇ、竜くん・・・ねえったら!」
どうやら照れているらしい。
いつもはそっちから抱きついてくるくせに。
「は、放して」
「・・・ヤダ」
「~~~!!」
余計にバタバタする伊集院に、笑う。
すげえな。
さっきまで、気分最悪だったのに。
今はモヤモヤしたものが晴れている。
大丈夫なのだと信じられる。
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