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HAPPY、HAPPY、LOVELY ! − fight ! −





「これで本当に勝負する気か?」
呆れ顔で鈴木が言う。
「うるせー」
うーん、確かに酷い点だ…。
アリーから小テストを返され、一応は悪態をついてみたものの、あまり出来が良くない (いや、かなり?)

っていっても、すでにやる気もなし。
こんな勝負どうでもいいし〜。
    俺としてはやっぱり、もっと、こう、なんていうか、男と男のぶつかり合いっていうか ・・・

「なんだよ、別に気にするほどでもねーじゃん」
俺よりも点が悪い川原は呑気にそう言った。
コイツは未だにサッカーに力を入れてるからな。
「まーいいや。帰ろうぜ」
俺はテストを丸めてゴミ箱に投げた。
お、命中。 さすが俺

ハッ!
殺気!!

復・習・し・ろ !!
ぐりぐりぐり…と俺のこめかみに拳を当てて由希が凄む。
いてぇって!

「だいたい お前が変な勝負にするからー」
あー痛かった。
「そのうち感謝してもしたりなくなる」
「は?」
「いや、とりあえず やっとけ」
ったく、意味が判らん。

こめかみを さすりながら教室を出ると、ちょうど廊下の先から伊集院が歩いてくるところだった。
「竜くん?」
「あり?」
なんで学校休みなのに来てるんだ?
「文化祭の準備で」
「あーなるほど」
体育祭までは三年が出張るけど、文化祭からは世代交代で二年がやるんだよな。
うちの学校は異常に行事好きだし、また なんか やるんだろーなー。
「それにしても早いね。実行委員なの?」
由希が訊く。
「いえ、映研の方に頼まれて」
エイケン?
「英語?」
「映画研究部だろ」
そんな部あるんだ?
「いつも文化祭で上映してるじゃん」
知らん。
「クラスの方もあるだろうからって、毎年 早く撮影を済ませるみたいで」
へー。
夏休みなのに御苦労なことで。
「終わりましたから一緒に…」
「伊集院さん!」
階段から声がする。
「台本忘れ…」
男が下りてきた。
「塩谷先輩」
三年だな。上履きが赤い。……誰だっけ。
「ありがとうございます」
伊集院が礼を言って台本を受け取った。
「いえいえ。結構ドジなんだ」
にこにこと返事をしながら、ちらりと俺の方を見る。
なんだ?
髪が短いのは例によって体育祭の後遺症だろう。
体育祭のあとは色を戻すためにバッサリ切るヤツが多い。

「伊集院さん、このあと暇?」
ん〜?
「ちょっと映画の話もしたいしさ、『ヤマ』でどう?」
なんだ?
なんで俺に目線を向けるんだよ。  ホントは俺を 誘いたいのか?

「明日では間に合わない話ですか?」
「え? い、いや、そんなことはないけど…」
「これから竜くんと帰るので、明日でいいのでしたら、また」
にっこりと断りを入れる。
そのやりとりを由希が妙に感心した顔で見た。
「さすが断り慣れてるというか…」
「へ?」
「そしてお前は馬鹿」
なんだそれは!

って、そうだ。

「俺、今日バイクで来てるから一緒に帰んの無理だ」
「車じゃないんですか?」
「寄るとこあるし」
送り迎えしてもらうのって性に合わないんだよなー。
自分で行動できないし。

この馬鹿たれ!
いて!
何すんだ、川原!!!
「ライバルに塩送るマネしてどうすんだ〜〜!」
あ、ばか、胸倉つかんで揺らすんじゃねぇぇえ!!  英単語が抜ける!

「そんなの簡単だよ、真琴ちゃん。竜に後ろ乗せてもらいなよ」
鈴木が提案する。
「え…」
「新品だから壊れる心配はないでしょ」
事故る可能性はあるけど、と失礼なことを言った。
「いいんですか?」
伊集院は臆病に覗き込む様子で訊く。
何をそんなに緊張する必要があるんだ?
まぁメットも普段クラスのヤツが乗ることもあるから持ってるし…
「別にいーけど?」
「ホントに!?」
……。
……………そんなに喜ぶようなことかねぇ?
変なヤツ。

「んじゃ、そーゆーことだから」
なぜか川原が、塩…えーと、なんだっけ、塩…山?塩川?に、別れを言った。
「また明日」
伊集院も にこにこ と言う。
顔 ゆるんだままだぞ? 恥ずかしいヤツだな。


「だーかーら〜」
後ろに乗った伊集院の手を引く。
「危ないから、もっとちゃんと掴まれって」
なんで そんなに恐る恐るなんだよ。
「やだもう…」
なんだよ?
「泣きそう…」
なんで?
「竜くんだぁ…」
ぎゅーっと抱きついてくる。
一体なんなんだ。

……………………あのー…

そこまで強く掴まなくても大丈夫なんだけど… 苦しい ・・・





つづく













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