あ、駄目だ、眠くなってきた…
俺は英語長文を読みながら欠伸をした。
このまま解答用紙に突っ伏して寝たい。
そもそも期末テストとかなら ともかく模試の点数を一週間で上げろという方が無理な話だ。
五点くらいは変わるかもしれないけど、そんなん大差ないよなぁ。
「竜、どうだった?」
「いつも通り」
「あはは、俺も〜」
川原は自分を指差して笑った。
「昼メシ食って国語か」
今度こそ寝そうだな。
「イチミヤ!」
「アリー」
「アリー先生」
「少しは出来たんだろうな」
「まーぼちぼち…」
「ぼちぼち!? そんなで私に勝てると思っているのか!?」
「はぁまぁ…」
俺は曖昧に応える。
「センセーこそ どうだったんスか?」
「 愚問だな、イチミヤ 」
…そうッスか。
「私は お前が真琴に相応しいと判るまで認めないぞ! 国に帰れん! 」
別に認めてくれなくてもいいけど…。 っつーか 帰れ。
「お前に任せられないと判れば真琴は私が連れて…」
「あ、アリー先生だ !! 」
「ホントだー!」
あ、クラスの女ども…。
「なんで居るんですか〜?」
「あ、もしかして私たちの激励!?」
「きゃー!」
「先生、さっきの問題、これ答え B ですよね?」
「センセー、私 昨日 センセーの夢見ちゃった〜!」
「 だーー !!! うるさいぞ !! 君タチ !! 」
「あ、ごめーん」
「先生 お昼まだ?」
「一緒に行こうよ〜!」
「おごって v 」
「あれ、先生の今日のゴムもオシャレ〜〜」
「ホントー。どこで買ったの〜?」
「私この間してた赤とオレンジのが良かった」
「えー、青いのが良かったよ! 金髪に合ってさ〜」
「 昼メシ行こうぜ 」
「そうだな」
「 待て逃げるなイチミヤー! 」
美形教師の宿命だ。あきらめろ。 グッバイ!
クーラーの効いた建物を出ると一気にムワっと熱気が押し寄せてくる。
「あちぃ」
「次 何時からだっけ?」
「なに食う?」
「ラーメン食いてぇ」
「あちーよ」
川原の言葉に夏バテ気味の鈴木が言った。
「あれ?」
「あ…」
「竜、あれ真琴ちゃんじゃねぇ?」
川原が指した方向を見ると、道路の向かい側を伊集院が歩いている。
「あいつは…」
「昨日の」
塩…田?塩島?だっけ。
「塩谷じゃん」
そう、それだ。
伊集院と塩ナントカは並んで店に入っていった。
「竜 、どーなってんだ?!」
川原が勢いよく訊いてくる。
いや、俺に訊かれても。 知らん。
「電話かけてみろよ」
なに興奮してんだよ。
「どーでもいーよ」
めんどくせぇ。
ぽろぴろぺー
「メールだ」
「竜、その着信音やめろって!」
「気が抜けるっ」
いいじゃねぇかよ。
「伊集院からだ」
いま映画の買出しで近くに来てます
試験終わったら一緒に帰りましょう
( はぁと × 3 )
「……」
「………ハート……」
「……ハートが3つ……」
「大きいハートが3つ…。」
「………………………………ばかばかしい…
心配するんじゃなかった ・・・ 」
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