飲み屋から学ぶ、顧客サービス    本文へジャンプ
ロスの削減

コスト削減

ムダを無くせば、それだけ利益は増える。
よく“ダラリ”を排除しろ”ということが言われる。ダラリとは、「ムダ」「ムラ」「ムリ」のことだ。
ところが、この3つの違いはよくわからない。
この違いは、「目的と手段とで、バランスが取れていない」ことにあるという。
  目的物  対応手段 例 
 ムダ  小さい  大きい マッチの火を消すのに消防車を呼ぶ 
 ムラ  大小さまざま  大小さまざま  火に水をかけず、火が出ていないところに水をかける
 ムリ  大きい  小さい  ビル火災をバケツの水で消そうとする

フランチャイズチェーンにおける見切品の値引販売が話題になっている。
昔から閉店間際になると残った商品を安く売るという店は多かった。残して廃棄するよりは、格安で売った方が店も消費者も助かる。
しかし、それがエスカレートすると値引き合戦になる。このため、フランチャイジーが見切品販売に待ったをかけ、個別店主と争いになった。
両者の言い分は、それなりにわかる。

全国から農産物を持ち寄って物販する展示会がある。
最終日の午後3時過ぎになると、投げ売り状態になる。残った商品を持ち帰るのも難儀だ。
しかし、毎年同じようにやると、来場者の方も学習し、その時間帯を狙ってくるようになる。これでは逆効果だ。
出展者もそこらへんは心得ていて、目玉商品と量販商品を分け、目玉は早い時間に売り切れになるようにする。来場者は残念がるが、終わり間近に来た自分にも責任がある。せっかくだから・・・というわけで、量販品を買っていくことになる。

年1回のイベントならともかく、店先が毎日こういった状況になるようだと、収益は大きく落ちる。
そこで、フランチャイズ元は、値引きをしないよう指導する。が、残った品物を買い上げるようなことはしない。あくまでも経営は店側の責任だ。
もちろん、賞味期限切れの商品を売ることは許されない。とはいえ品切れがあると「ちっともコンビニエンスじゃない!」と、買い物客は怒る。十分な在庫を用意すれば、廃棄しなければならない商品も増え、経営は厳しくなる。

この問題に対する飲み屋の解決手法の一つが「半専門店化」である。

焼き鳥屋をはじめ、もつ焼き、ホルモン、鮮魚、うなぎ、牛タン、鍋ものなど、得意分野の食材を用意する。そのうえで、来客が飽きないように、周辺メニューを提示する。そうすれば在庫管理が容易になる。
周辺メニューは売切御免ということにしても、顧客は怒らない。
弁当屋、そば屋、おむすび屋、ラーメン屋、うどん専門店、牛丼チェーン、ドラッグストア、子供用品専門店なども、こういった品揃えをする店が増えている。
牛丼屋でも、酒やビールは飲める。しかし、販売本数に制限があり、ずるずるとそこで酒を飲み続けることはできない。
飲み屋でないから、客もしぶしぶ我慢する。

近所に酒屋があり、数年前にビルに建て替えた。2階から上は、学習塾とマンションで、1階は1/3が酒屋、2/3がコンビニになっている。コンビニにはありきたりの酒しか置いていないが、銘柄ものは隣で買えばよく、不便さはない。

ちなみにかなり前だが、武蔵野商工会議所がまとめた「ロス減少と仕入原価の削減方法の例」には、こんな項目がある。
  1. 同じ材料で違った種類のメニューを作る→昼と夜のメニューの使い分け等
  2. 余った材料で次の日のボリューム感のあるメニューを提供する→煮込み等に利用する。
  3. 売れ筋、死に筋メニューをしっかり把握する→死に筋メニューを新メニューに切替える。
  4. 一頭丸ごと活用→例えば、牛や鶏など一頭丸ごと活用できるメニュー構成を考える。
  5. メニューの絞り込み→吉野屋や日高屋は、メニューの絞り込みで利益率を向上させた。
  6. 仕入先の再検討→もっと品質や品揃えがよく、安い仕入先がないか。
  7. 問屋等の中抜き→農家や農場、漁師などからの直接取引はできないか。

そんな発想を広げてみると、生の食材を置かないコンビニと弁当専門店を並べてみたらどうだろうか、などと思うのだが、どうだろうか。
店構えは別々のままでも、従業員を供用にすれば、忙しい時間帯で人手を融通し合ったりすることも可能になるだろう。

よくよく考えてみると、小型専門店の集積が商店街である。個店がシャッターを閉じるにつれ、集積による商店街のシナジー効果が下がる。

その一方で、働く女性が増え、子供の数が減り、生活が不規則になると、いきおい夜中までやっているコンビニに足が向く。
実のところ、コンビニそのものも従業員の手配がなかなかたいへんで、人手のやりくりができないときは店長が徹夜で働いたりしており、経営者の健康問題も心配されているという。
便利になったことが、必ずしも人の幸福に繋がっていない。何とかならないだろうか。

防犯

万引きの被害に悩む個店は多い。
最近の本屋では、本を買わずに必要部分を携帯で写メールしてしまう人もいるという。スパイ映画のようだ。

商店側も対策に躍起だが、最近では小型の防犯カメラが普及し、値段が安くなった。一般家庭用のHD付きのビデオデッキの性能が上がって防犯用に画像を記録する装置として使えるようになっている。
「我こそがが防犯カメラですよ」といった形のダミーカメラを配置したうえで、監視カメラだとは気づかれないような場所にカメラを仕込み、防犯対策を万全にしている店舗もあるようだし、レジ担当の手元をモニターするカメラすら設置するという店すらあるウワサされている。
必要もないのに食券販売機で食券を買ってくれという店もあるが、これも「食い逃げ防止策」なんだろう。
そこまで人間が信用できないのかと問いたいくらいだが、そういう世の中なのである。

専門家に聞くと、万引きに遭いやすい店とそうでない店があるらしい。私にはよく解らないが、商品の配置と棚の価格表示などに着目するとわかるらしい。
しかし、実際に監視カメラで万引きの証拠を掴んだ場合、それからどうするかを予め決めておかなければ、従業員は対処できない。実際に現行犯逮捕するのか、予防的措置を講ずるのかは躊躇するところだろう。

私ごとだが、私が理事を任されているマンションでは、一時駐車スペースに駐めた車にいたずらシールを貼られるという問題が多発している。
被害者からの情報提供を受けて防犯カメラを確認したところ、中学〜高校くらいの青年であることを確認した。
現行犯逮捕とはいかないので、そのビデオの映像を、本人にも確認できる位置に掲示することにした。
その後、被害は報告されていない。
「実際の画像にぼかしをかけています」といった注釈付きで、万引き現場の映像をプリントアウトして店内に掲示するのも効果的ではないだろうか。

こういった窃盗の被害は大きいらしいが、店舗の責任者として心配なのは、商品を盗まれることより、商品を盗む現場を発見してしまった場合だと思う。
相手は刃物などを持っているかもしれない。こういった場合、どのような対処法があるのか。
その辺のマニュアル化もきちんとしておかないと、問題の解決には繋がらない。

省エネ

私はその道の専門家ではないので、省エネ技術については詳しくは知らない。
とはいえ常識で考えると、水道の出しっ放しや水漏れ、照明の消し忘れ、開けっ放しの冷蔵庫などがエネルギー消費のムダであると同時に、費用のムダであることはわかる。
さらに、冷蔵コーナーは業務終了時に断熱シートで覆うのが常識であることも知っている。

店舗で電力消費が大きいのは、空調系である。特に、温度の上下があると、たくさんの電力を消費する。消費電力は天井の高さにも影響されるし、空調スイッチを入れるタイミングでも高低するという。
基本料金を抑えることが、かなりのコストダウンに繋がるという話もある(出典:コスト削減の“見える化” 村井哲之・杉本明文 日本実業出版社)。

空調経費の削減と言ったって、方法はたくさんある。
  1. 屋上にソーラーパネルを設置して、電力を売る。
  2. 日光のエネルギーを反射して、社内温度をセーブする「塗料」を屋根に塗る
  3. 屋上緑化する。
そして、3.の緑化の場合も、庭を造るのか、苔で覆うのかという方法があり、また、実際に実施する場合は、維持管理コストと建物への影響コストを計算しなければならない。屋上緑化が建物劣化に直結したのでは、逆効果だ。
合わせて、国などの補助制度があれば、当然、それを計算に入れるべきである。

危機管理

私の好きな画家に、小松崎茂氏がいる。
少年時代、漫画雑誌に挿絵を描いていた人で、戦記ものが得意だった。東宝特撮の初期のスーパーメカのデザインを手がけており、おそらく、映画『三丁目の夕陽』に出てくる茶川という主人公のような人物である。
この人を有名にしたのは、プラモデルのハコ絵だったが、中でも売れ筋だったのが『サンダーバード』のプラモであり。国内はもとより海外でも、売れに売れたようである。
しかし、好事魔多しで、このハコ絵が問題になる。
サンダーバード2号のハコ絵を描いていると、メーカーの人がそれを見て、「背景に1号も描いてくださいよ」と頼む。そこで親切心から、言われるままに1号も描いた。
しかし、その箱の中身は2号だけであって、1号は入っていない。
これに、アメリカの消費者団体が噛みついた。そして、返品の山になり、メーカーは大打撃を受けた、とのことである。今から40年も前のことで、日本と先進諸国とでは認識の差は大きかった。

知財の分野において、企業の取組は遅れている。
例えば、カラオケを発明したのは日本人だが、カラオケの特許を取得しなかったため、莫大な収益を逃したことは有名な話だという(出典:日本型イノベーションのすすめ 小笠原泰・重久朋子 日本経済新聞出版社)。
特許権、商標権、意匠権、実用新案権などを取得するには、それなりのコストがかかるが、開発のための費用(マンパワーを含む)などを勘案すると、やはり取るべきものは取っておくべきだ。

クレーム対策も必要だ。
「ある飲食店で、バースデーメッセージを同伴者から頼まれてメッセージカードと歌のお祝いをした。すると「私の誕生日を知っているなんて個人情報の漏洩だわ!」とお怒りに(出典:謝罪・クレーム対応の鉄則 小川貴之・浅井真紀子 クロスメディア・パブリッシング)といった、予測不可能なクレームも発生する世の中だ。

クレームをつけるのが生き甲斐のような人も多いが、中には、まっとうなクレームもある。
面倒だと思って放置しておくと、企業の命運を分けるような事件に発展しかねない。石油温風器の事故などは、何年も経つのに未だに尾を引いている。インターネットが普及しているので、ウワサはあっという間に広がる。
特に食料品や健康産業など、人の命に関わる分野は、日頃から入念な対策が必要だ。

地震などの災害への備えも必要だ。
交通機関が遮断されると、多数の帰宅難民が発生する。人間、食事がなくても4日、5日は平気だ。しかし、水が無くては生きていけない。飲み水だけではなく、トイレの水なども必要になる。
これまでの大地震の記録を見ると、直近に危険を回避した次には、まず「水」に行き詰まっていることがわかる。
社員全員が会社に缶詰になったとき、水がいっさい出なかったらどうなるか・・・ちょっと想像してみれば、すぐ問題点は浮かび上がってくる。

後継者の育成も必須だ
例えば、社長がゴルフ場で突然倒れたら、企業運営は誰が担うのか。そうした場合の備えを平時から準備しておく必要がある。
「ウチの会社は来月の金策すら不安だ。そんなことまで心配していたらやってられない」という社長さんも多いだろうが、そんなワンマン社長で保っている小規模企業こそ、バックアップ体制の整備が必要なのだ。

次のページへ→