日比谷公園の思い出ベンチ。初めてのデート。映画館の外へ
映画館の外へ出ると雨。日比谷公園の入り口の看板『思い出ベンチ事業』
『この公園のベンチは一般の方々の寄付によって設置されており、寄贈された方のメッセージがベンチのプレートに記されています。』
映画館の外へ出ると、日比谷公園
さて、映画は終わった。時刻は夕方。映画館の外へ出ると雨。
というより、30分後にはやんでいたから夕立。しかし、11月に夕立は変だ。
とにかく、二人ともカサは持ってきていない。
(映画のストーリー。ダニエル君とメロディちゃんは夕立の中を手をつないで歩く)
この時、映画のストーリーをはっきり意識していたかどうかはわからない。
が、気がつくと二人は手をつないで雨の中を小走りに日比谷公園の方に向かっていた。
それは全くの自然の状態だった。
日比谷公園につくと、雨はやみ、夕焼けの中に、うっすらと虹がかかっていた。
とても美しい景色だった。二人は無言でそれを見つめていた。
(天の声)
ここで視点を二人の後に移して見ましょう。
夕焼けは真っ赤ではなく、オレンジ色です。
そのオレンジ色をバックに手をつないだ二人のシルエットが黒く浮かびます。
夕立後の風は大気をふるわせ、かげろうのようにそのシルエットがゆれます。
そのふるえは、何か、二人の運命のはかなさを感じさせます。
うっすらとした虹の色が、いくらか濃く、あざやかになります。
それは、二人の明るい未来を示しているのでしょうか。
小さな恋のメロディならここで、I kissed your cheekなのかもしれないが。
(/天の声)
日比谷公園。思い出ベンチ事業
公園の入り口の看板が二人を現実世界に引き戻した。
『思い出ベンチ事業』
雅夫が読んだ。
『この公園のベンチは一般の方々の寄付によって設置されており、
寄贈された方のメッセージがベンチのプレートに記されています。』
「何が書いてあるのかしら。」
二人はベンチを探した。
『私たちはこの公園で出会い、結婚しました。はるき まちこ』
「この方達、おいくつぐらいかしら。」
「ベンチ一基25万円って書いてあったから、20代ではないね。」
「もっと、ロマンチックな話できないの。」みほが笑顔で怒った。
「じゃ、精一杯の努力をして。」
雅夫はつないでいた手をはなし、ハンカチでベンチのしずくを拭き始めた。
「すわろうか。」
「ありがとう。」
「映画(小さな恋のメロディ)の墓地の場面を思い出しているんだ。」
「私もよ。」
「あの墓地の夫婦は70歳ぐらいで、ほとんど同時になくなっただろ。
このベンチの夫婦もああなるんだろうか。」
「そして、私たち二人は…?。でしょ。」
「あはは、同じ事を考えていたか。」
「実はね。『君の名は』の二人は、戦争で離ればなれになっちゃううんだ。」
「知っていたわ。リメイクされたドラマ見たから。
それに触れようとしなかった雅夫君の気持ちも解っていたわ。
でも、良かったのよ。ちゃんと言ってくれて。私たちは逆のケースよ。
父の死は日本のためになったの?それが分かるのは、きっと何十年後ね。
でも、日本のためになったと、今、言って欲しいの。」
雅夫とみほの間に刺さったトゲは抜けたかのように思われたが。
戦争と平和 愛
「戦争があった事を忘れてはいけないし、
平和のように見えても戦争があるという事を知らなくてはいけない。
でも、戦争のない世界なんて、来るんだろうか。」
「そこで、あきらめたら、ダメッ。」
みほが、2日前とおなじように、ムッとした表情になった。
「みんな、そう言うわ。でも、それじゃだめなの。」
みほのほほをひとしずくの涙が流れた。雅夫は何も言わずに、みほの手を握った。
「ごめんなさいね。雅夫君が悪いんじゃないの。
でも、この気持ちが消えるには、きっと何十年もかかるんだわ。」
雅夫は何も言えなかった。
2日前の奇妙な感じが解ってきた。
二人の間には、なかなか越えられない壁がある。
二人は当事者とその幼なじみという関係だった。
みほの父親と直接会ったことはなかった。
雅夫は大きな壁をはっきり意識したのだった。
雅夫はみほの事を愛しているのか。
二人の人を同時に愛する。結婚は何のため15へ続く
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。