音韻の変化

  1. 語中語尾の「う」「ら」「り」「る」音が長音化

  2. 指示代名詞の「れ」音が長音化

  3. 語中の「み」音が「ん」になる

  4. 「の」音が「ん」になる

  5. 「に」音が「ん」になる

  6. 否定の「ぬ」が「ん(の)」に変化

  7. 音の脱落

  8. 音の挿入

  9. 助詞「は」、「ば」が付くときの音声変化

  10. 出雲地方における促音便の変化

  11. 否定形撥音便の消滅

  12. 「む」音が「ん」になる

  13. 助動詞「よう」の音韻変化

  14. 仁多地域の長音化について

  15. 二重母音(ou)の変化

  16. 出雲の擬態語と撥音

  17. 日本語における「サ行とハ行の揺れ」 と 出雲弁

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語中語尾の「ら」「う」「り」「る」音が長音化

 

」は「」と発音することが多い

あらう(洗う) あらー
いう(言う) いー
かう(飼う、買う) かー
つかう(使う) つかー
まう(舞う) まー
もう もー
もらう(貰う) もらー

 

」を「」と発音することがある

言ってか 言ってか
初めか 初めか
見てやか(見てやろうか) 見てや

 

」は「」と発音することが多い

あります(有ります) あーます
となり(隣) となー
にぎりめし(握り飯) にぎーめし
やっぱり やっぱ(ー)
やり方 やー方
やります やーます

     

」は「」と発音することが多い

あきる(飽きる) あきー
あげる(上げる、揚げる、揚げる) あげー
あたる(当たる) あたー
ある(有る) あー
おこられる(怒られる) おこられー
おる(居る) おー
きらわれる(嫌われる) きらわれー
くる(来る) くー
くるま(車) くーま
さるかにがっせん(猿蟹合戦) さーかに合戦
しる(汁) しー(すー)
する すー
たべる(食べる) たべー
たれる(垂れる) たれー
できる(出きる) できー
でる(出る) でー
なおる(治る) なおー
なる(成る、鳴る) なー
ふる(振る、降る) ふー
まぜる(混ぜる) まぜー
みる(見る) みー
やる(やる) やー

 

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指示代名詞の「れ」音が長音化

これ こー
それ そー
あれ あー
どれ どー

 

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語中の「み」音が「ん」になる

 

」は「」と発音することがある

たのみこむ(頼み込む) たのんこむ
ちゃのみばなし(茶飲み話) ちゃのんばなし
かみさま(神様) かんさん
なみだ(涙) なんだ

 

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「の」音が「ん」になる

 

」は「」と発音することがある

きもの(着物) きもん
めのたま(目の玉) めんたま

 

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「に」音が「ん」になる

 

」は「」と発音することがある

私に見せろ 私ん見せろ
明日になる 明日んなる

 

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否定の「ぬ」が「ん(の)」に変化

○否定の「ん」の存在は、本州西部方言の特徴とされている。

」は「ん(の)」と発音することが多い

ん(の)
行か(行かない 行か・行か
開か(開かない 開か・開か
届か(届かない 届か・届か
喋ら(喋らない 喋ら・喋ら
匂わ(匂わない 匂わ・匂わ
歩け(歩けない 歩け・歩け
使わ(使わない 使わ・使わ
言わ(言わない 言わ・言わ
会わ(会わない 会わ・会わ
効か(効かない 効か・効か
立た(立たない 立た・立た
知ら(知らない 知ら・知ら
立て(立てない 立て・立て
食え(食えない 食え・食え
解ら(解らない 解ら・解ら
追いつか(追いつかない 追いつか・追いつか
会え(会えない 会え・会え
ぬくもら(温もらない 温もら・温もら

 

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音の脱落

」音の脱落

 
たべなさい(食べなさい) たべない(食べない)
せんべい(煎餅) せんべ
きれい(綺麗) きれ

 

」音の脱落

 
がっこう(学校) がっこ
きょう(今日) きょ
さとう(砂糖) さと
せんこう(線香) せんこ
てっぽう(鉄砲) てっぽ
てんじょう(天井) てんじょ
ふう(風)
ほう(方)
うまい(美味い) まい

 

」音の脱落

 
おもう(思う) もー

 

」音の脱落

 
たべなさい(食べなさい) たべない(食べない)

 

 

促音の脱落

 
あった(合った・有った) あた
かった(買った) かた

 

」音の脱落

 
げんこつ(拳骨) げんこ
   

 

」音の脱落

 
むらさめ(村雨) むらさ
   

」音の脱落

 
すべり(滑り) すべ

 

」音の脱落

 
ところ(所) とこ
(走って)みろ (走って)み

 

撥音の脱落

 
だいぶん(大分) だいぶ
だいこん(大根) だいこ
にんげん(人間) にんげ

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音の挿入

 

」音の挿入

 
みみたぶ(耳たぶ) みみたぶら
   

 

撥音の挿入

 
あまり あんまり
ごぼう(牛蒡) ごんぼ(「う」音の脱落もある)
たび(度) たんび

 

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助詞「は」、「ば」が付くときの音声変化

直前に「o」が有る場合には「ow」が脱落します

o+wa
こと(koto)+は(wa) こた(kota)
もの(mono)+は(wa) もな(mona)
ほど(hodo)+は(wa) ほだ(hood)
とこ(toko)+は(wa) とか(toka)
ころ(koro)+は(wa) こら(kora)
   
   
   

 


直前に「i」や「e」が有る場合には「ew」や「iw」が「y」に変化します
(方言でなく共通語の変化です。)

e+wa」・「i+wa」 a」
して(site)+は(wa) しちゃ(sitya)
とき(toki)+は(wa) ときゃ(tokya)
〜に(ni)+は(wa) 〜にゃ(nya)

 

(原田さんのレポートより)

直前の「e」+「ば(ba)」で「eb」「y」に変化します。ここまでは共通語でも変化しますが、出雲弁ではさらに「y」が脱落する場合があります。

e+ba」 a」
行けれ(ikere)+ば(ba) 行けりゃ(ikerya)→行けら(ikera)
聞きますれ(kikimasure)+ば(ba) 聞きますりゃ(kikimasurya)
せね(sene)+ば(ba) せにゃ(Sonya)→せな(sena)
聞け(kike)+ば(ba) 聞きゃ(kikya)→聞か(kika)

 

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