三線の起源 赤犬子
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三線の起源:赤犬子


あかいんこって聞いたことありますか?
赤い鳥のことではありませんよ。
三線の創始者といわれている方です。
でも、本当かな?ってきになります。
「それは誰が言ってるんだろう。」
「どこにそんな根拠があるんだろう。」
いろいろ不思議に思ってしまいます。
自分で調べてみようと思いました。



「おもろそうし」という沖縄に伝わる書籍があります。
島々に伝わる唄をのせたもので、
琉歌の原型とも言われています。
1532年から1613年にかけて全22巻に採録したもので、
巻によって製作年が異なります。
掲載されている歌は1200を超えます。
本書には最も古いとよばれている“あかいんこ”情報が載っているといわれていましたが、実際に確認することができました。

歌の中におもろ名人と呼ばれる人がでてくるのですが、
第5巻目で、歌の中につぎのようなおもろ名人の名前がでてきます。
次のような句をみつけました。
 
中嶺来よもん
貢継ぎ来よもの
此れ言ちゑ按司襲い栄せ
阿嘉ん子(あかんこ) おもろ
饒波犬子(ねはいんこ) をもろ
真石金おもい
吾が寄せておかば

さて、この唄の意味は何なんでしょう?皆さんも考えてみてください。




前述のおもろそうし252番目の句の意味は

中嶺がやってくるよ
貢継ぎがやってくるよ
これを言い伝えよう。王様が栄え続けるように。
阿嘉ん子がおもろを謡、
饒波犬子がおもろを謡、
真石金がおもろを謡う。
わたしがこの事をここに寄せておこう。

となります。
なんだか、“あかいんこ”に関係がありそうです。



おもろそうし第八章にある436番目の歌では、
再び、阿嘉と饒波がでてきます。
お祈りをして讃えることで世の中を平和にしようとしたのではないかと思います。

阿嘉のお祝付き(おえつき)や
饒波のお祝付き(おえつき)や
首里しよ
百浦 引く ぐすく
首里親樋川
水からど 世掛ける
ぐすく親樋川

意味は
阿嘉のお祝いする人、饒波のお祝いする人が讃える。
首里って言うのは、百の浦(世界)を牽引するお城である。
首里城にある井戸や泉からの水は首里を支え、世を支えている。



今回はすこし、おもろそうしから離れてみます。
沖縄の民謡の中で、歌の冒頭に読み上げる“つらね”というのがあります。
その文句は

「歌と三線の昔始まりや インクネアガリの神の御作」

私はこのインクネアガリというのは、インクが犬子という通称で、ネアガリが音揚がりという役職を表していると考えます。

ただ、このカタカナで書いた部分には幾つかの説がありそれぞれの漢字があるようです。
その中で、僕の聞いたことのある2つを取り上げてみます。
そして、自分なりの解釈を考えてみました。

一つは、
A:犬子音東の神の御作
これは、犬子の奏でる音が、東に住まわれる太陽の神様の作られたものという意味。

一つは、
B:犬子音揚がりの神の御作
これは、音頭を取り仕切った犬子の作ったものは、まさに神様の作られたごとくすばらしいものである。

僕は、Bの説だと思います。
その理由を見ていきましょう。
まずインクという言葉は犬子であるというのは、A,B説両方に見られることから問題はありません。
しかし、ネアガリという言葉ではA,B説で隔たりがあります。
ネは音であると両方の見解に見られますが、犬子の後に付くのか揚がりの前につくのか、どの単語の一部なのかで意見が分かれます。
ここで、赤犬子の根拠とされている、古典「おもろそうし」をみてみます。
すると、「東の神」という表現や「犬子音」という表現が存在しません。
一方、音揚がりというのはいくつも出てきます。
しかも、おもろそうしが全22章で綴られているなかで、第8章において繰り返しアカインコと考えられる人と、同様の位置づけで語られているのです。
私が思うに、アカインコと音揚がりが同じような事を成していたため、つらねを作った者が、アカインコと音揚がりを同じ人物だと考えていたのです。
そうして、Bの歌ができたと思います。



おもろそうし第八章にある436番目の歌ではアカインコらしき人が登場し、そのあと阿嘉が第八章のおわり475番目の歌まで出てきます。そこで注目して欲しいのが、462番目と465番目です。
462番目の歌で、阿嘉犬子が出てくるのです。
これまでの歌では、「阿嘉のお祝付き」や「阿嘉の子」としか出てきませんでしたが、とうとう読み方がアカインコという文字がでてきました。
465番目の歌では、歌詞の中には出てきませんが、題名を「あかいんこが世よせひやしが節」と言います。
ここからわかることは、アカインコという呼び方は、おもろそうしにおいて一般的ではないということです。アカインコより、むしろ阿嘉の子や阿嘉のお祝付きと多く呼ばれています。いまでも、沖縄には阿嘉という地名が残っています。おそらく、阿嘉という言葉には何か特別な意味があるのでしょう。地名というのは、時代毎にうつりかわり、新しくできては、消えていきます。1600年頃の阿嘉と呼ばれていた地域はどのような人たちが暮らしていたのか、そしてどこにあったのか調べる必要があります。また、なぜ、おもろそうしでは一般的な呼び方ではないアカインコという名前が今も残っているのか調べる必要があると思います。



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