豪が、好き。
大好き。
だから、側にいられるなら、理由なんてなんでもいい。
「Wish Matrix」
− J side −
「えーっ、豪、あの追試も落ちたの?」
「らしいね」
今日は豪とデートのハズだったのに。
なんで、烈と一緒に歩いてるの?私。
烈は優しい。
私、恋敵なのに。
烈だって、豪のこと好きでしょ?
これでも私、女なんだからそーゆー勘は働くのよ。
なのに、いつも笑ってるのね。
烈だけじゃない。豪も優しい。
昔は、もっと言いたいことを言い合える仲だったのに。
いつも私に気を使ってくれる。
負い目を感じてるから?
私のこと、騙してるって。
そんなことないのに・・・あいかわらず、バカね。
豪が烈のこと、好きなの知ってる。
イミテーションの彼女でもいいの。
だって、これで烈は豪に気持ちをうち明けられない。
豪は、烈の気持ちに気づかない。
烈も、豪の気持ちに気づかない。
ずっと、3人で一緒にいられれば、それで幸せ。
騙してるのは、私のほうだよ。
不安定な3角形は、危ういトコロでバランスを保ってるの。