気づいて欲しい。
気づいて欲しくない。
キレイなままでいて欲しい。
この手で汚してしまいたい。
「Wish Matrix」
− G side −
まだ、時間が早かったから、今日行くはずだった店へ出かけることにした。
女ってのはウィンドーショッピングってのが好きだよな。
オレは買いたいものがなきゃぁ、買い物なんてめんどくさくて行く気になれない。
「烈も誘ったら一緒に行くかな?」
ジュンはよく、兄貴のことを一緒に誘う。
「そーだな、声かけてみるか?」
オレの答えも決まってる。
たまには2人で遊ぼうぜ、とは言わない。
ジュンがどんな気持ちで兄貴を誘うのかは、考えない。
考えるのは、得意じゃないから。
「じゃぁ、先に玄関で待ってろよ。兄貴に声かけてくっから」
「ん、わかった」
「おーい、兄貴、一緒に買い物いかねーか?」
ドアを叩いて声をかけるが、返事がない。
「いるんだろ?兄貴。
行くのか行かないのか、はっきりしてくれねーと、ジュンのこと下で待たせて・・・・」
『行かないっ』
「・・・兄貴?」
なんだか、様子がおかしい。
ドアノブに手をかけると、オレがノブをまわす前に内側から
扉が開けられた。
そこに立ってる兄貴は、いつも通りの兄貴で。
「悪いけど、たまってる課題片づけてるんだ。
だいたい、デートにオレがついてくってのもおかしいだろ」
「ま、そりゃそーだけど。
ジュンが兄貴も誘えって言うから・・・・・・」
オレがジュンに責任転嫁させようとした時。
兄貴の目が・・・・・一瞬・・・。
オレの、見間違い?
「わかった、わかった。
もーいいから早く下降りてやれよ。待たせてるんだろ?」
「あ、あぁ・・・」
「そだ。夕飯食ってくんなら母さんにそう言ってけよ?」
「・・・・・飯の前には帰ってくる・・」
「あっそ。んじゃな」
パタン。
兄貴、何を考えてる?
どうして、そんな顔をするんだ?
言ってくれなきゃ、わかんねーよ。
考えるのは・・・得意じゃないから。