人材派遣業を始める前に
これらを踏まえて、許可申請の準備に取りかかりましょう。
人材派遣業の概要
人材派遣業とは、自社(派遣会社・派遣元)が雇用する人(派遣社員)を、派遣先へ送り、
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その派遣先の指揮命令により、その派遣先の仕事をさせる事業形態のことです。
人材派遣業の変遷
人材派遣業は、もともとは禁止でした。
戦前の、賃金ピンはね、中間搾取と同一視されていたからです。
これは「労働者供給事業」と呼ばれます。
現在でも、職業安定法により禁止されています。
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一部解禁されます。(昭和61年)
原則は禁止
例外として職種を限定し許可(ポジティブリスト)
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大幅に緩和されます。(平成11年)
原則は自由
例外として限定した職種を禁止(ネガティブリスト)
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さらなる緩和や手続きの簡素化が実施されました。(平成16年)
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派遣許可基準について一部規制強化の改正(平成21年)
財産基準などを厳しくし、派遣会社の経営基盤を強化することで、派遣社員の雇用の安定を図こととしました。
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労働者派遣法を改正し、派遣社員の保護を明確化(平成24年)
日雇派遣の原則禁止など、派遣社員の就労をより安定にするような規制が盛り込まれました。
(参照「労働者派遣法 24年改正」)
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派遣社員の脱派遣・脱長期化と、派遣会社に対する監督強化の方向へ法改正(平成27年)
派遣会社に、派遣社員のキャリアアップ支援を義務付けたり、派遣の期間制限を見直すなど、派遣社員にとって派遣就労があくまでキャリアの一部にとどまるようなしくみをつくりました。
また、特定労働者派遣と一般労働者派遣の区分を廃止し、すべて許可・更新制とし、監督する機会を増やしています。
(参照「労働者派遣法 27年改正」)
このように、[禁止]→[解禁]→[自由化]の流れを受け、許可制とすることで、最低限の規制をしてきました。
近時においては、派遣会社の安定化や派遣社員の保護などの規制強化をすることにより派遣業界の正常化・健全化を図り、そして派遣社員の正社員化への方向づけをしています。
2つの派遣形態の区分を廃止
人材派遣業には、2つの派遣形態がありましたが、平成27年の労働者派遣法改正によりその区分がなくなりました。
(改正前)
- 一般労働者派遣
- 特定労働者派遣
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(改正後)
- 労働者派遣(許可・更新制)
(旧)一般労働者派遣事業
派遣会社(派遣元)が、派遣希望者を登録
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働き先(派遣先)を見つけて、登録者を派遣社員として雇用し、派遣
といった、いわゆる一般的にイメージする派遣形態です。
派遣期間に合わせて、雇用期間を設定する有期雇用がほとんどです。
→ この一般派遣事業を行うには、厚生労働大臣の「許可」が必要です。
一般派遣事業の「許可」を受けていれば、特定派遣事業も行うことができます。
(旧)特定労働者派遣事業
会社(派遣元)に雇用され働いている社員を派遣社員として、
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派遣先に派遣する形態
→ 特定派遣事業を行うには、厚生労働大臣への「届出」だけで足ります。
派遣元責任者
人材派遣業を行うには、社内に「派遣元責任者」が最低でも1人必要です。
「派遣元責任者」は、「派遣元責任者講習」を受講しなければなりません。
派遣してはいけない業務(ネガティブリスト)
次の業務については、人材派遣を行うことは禁止されています。
- 港湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 病院等における医療関連業務
(医療関連業務は、紹介予定派遣の場合には可能です)
(参照「人材派遣会社が、紹介予定派遣を行う場合」)
違法な派遣
次のような派遣は禁止されています。
- 禁止業務への派遣
- 無許可・無届けの派遣
- 期間の制限を超える派遣
- 二重派遣(労働者供給事業に該当)
- もっぱら特定の相手だけに派遣することを目的とした派遣
- 労働争議(ストライキやロックアウト)中の企業への新たな派遣
- 派遣期間制限に抵触する日の通知を受けないで行う派遣
- 認められている業務や派遣社員以外の日雇派遣
- 80%の制限を超えるグループ企業への派遣
- 離職後1年以内の退職社員の派遣
その他禁止事項
- 派遣前の派遣先における面接や、履歴書の送付
(派遣社員本人が希望した場合、紹介予定派遣の場合は可能) (参照「人材派遣会社が、紹介予定派遣を行う場合」)