派遣会社の派遣契約

派遣会社の契約には2つあります。
派遣先と結ぶ派遣契約と、
派遣社員と結ぶ雇用契約です。
当ページでは、一般法である民法と、その特別法である労働基準法という前提にたち、雇用契約と労働契約を区別せず、「雇用契約」として表記しています。

派遣先に派遣社員を派遣することが決まり、派遣契約が成立する。
そして、登録者の中から派遣社員として雇用契約を結ぶ。
この2つの「契約」は密接に関係します。
このページでは、派遣契約(労働者派遣法上「労働者派遣契約」)をテーマに話しを進め、関係する部分について、雇用契約にも触れることにします。

派遣契約のしくみと形式 

「契約」というものは、自分と相手との約束事です。
両者の合意があれば、どんな約束をしようが、基本的には当人同士の勝手。
法律に触れない、公序良俗に反しないということを前提として、「契約自由の原則」があります。

派遣契約の当事者は、派遣会社(派遣元)派遣先
派遣契約の目的は、派遣社員を派遣すること。

つまり、派遣会社は、

  • 派遣社員を派遣する義務を負い(債務)
  • その対価を受ける権利を得る(債権)

同時に、派遣先は、

  • 派遣社員である人の派遣を受ける権利を得て(債権)
  • その対価を支払う義務を負う(債務)

ことを約束する(=債権債務を確定する)のが派遣契約です。

その約束事の細かい部分の内容は原則的に自由ではあります。
自由ではあるのですが、派遣契約の締結には、労働者派遣法により、定めなければならない事項が決められています。

これは派遣社員の適正な就業条件を確保するため。
この法定事項は契約書に盛り込まなければなりません
その、法定事項以外の項目については自由に約束することができるのです。
派遣契約はこのような、しくみになっています。

法定事項は、個々の派遣ごとに決定する細かい部分。
例えば、業務の内容や、就業時間など。
これに対し、自由に決められるものは、どの派遣先にも共通する内容、人材派遣の大枠の取り決め。
例えば、派遣料金や、派遣社員の交代など。

一般的に、派遣契約の実務では、
前者の、法定事項・細かい部分を「個別契約」
後者の、自由・共通・大枠を「基本契約」
このように2つに分けることが多いです。

個別契約

労働者派遣法や派遣法規則で求められている契約事項

  1. 派遣社員の人数(派遣の内容が異なるごと)
  2. 業務の内容
  3. 派遣される事業所の名称、所在地その他就業の場所
  4. 派遣先の指揮命令者に関する事項
  5. 派遣期間、派遣就業日
  6. 派遣就業の開始・終了の時刻、休憩時間
  7. 安全衛生に関する事項
  8. 苦情処理に関する事項
  9. 派遣契約を解除するときに、派遣社員の雇用の安定のためにとる必要な措置に関する事項
  10. 派遣元責任者・派遣先責任者に関する事項
  11. 派遣就業日以外の日または派遣就業時間以外の時間就業させる場合の、就業日または延長時間
  12. 派遣先の福利厚生施設等、便宜供与に関する事項

労働者派遣法や派遣法規則で求められている契約事項

  1. 紹介予定派遣である旨
  2. 紹介予定派遣を経て派遣先が雇用する場合に予定される雇用契約の期間の定めの有無
  3. 派遣先が職業紹介を受けることを希望しない場合、または職業紹介を受けた者を雇用しない場合には、派遣元事業主の求めに応じ、その理由を、書面の交付・FAXの利用・電子メールの送信等により、派遣元に明示する旨
  4. 紹介予定派遣を経て派遣先が雇用する場合に、年次有給休暇および退職金の取り扱いについて、派遣期間を勤続期間に含める場合はその旨

派遣契約が派遣期間の制限を受けない業務である場合は、それぞれ以下の事項も必要です。

専門的26号業務の場合 該当の政令番号
プロジェクト業務の場合 事業の開始、転換、拡大、縮小または廃止のための業務であって一定の期間内に完了することが予定されている旨
就業日数が少ない業務の場合
  • その業務が、1ヵ月間に行われる日数が派遣先の1ヵ月間の所定労働日数の半分以下、かつ、10日以下である旨
  • 派遣先でその業務が1ヵ月間に行われる日数
  • 派遣先に雇用される通常の社員の1ヵ月間の所定労働日数
育児または介護の代替業務の場合
  • 派遣先で、産前産後休業、育児休業、介護休業をする社員の氏名とその業務
  • 産前産後休業、育児休業、介護休業の開始・終了予定の日

基本契約

どの派遣先にも共通する、大枠の部分、自由に取り決めることのできるところを基本契約で定めておきます。

当事者はお互い、自分に有利なように決まりをつくりたいもの。
そこで、人材派遣において、決めておいたほうがいい項目としてピックアップしたものを、派遣会社(派遣元)視点、派遣先視点で分けてみます。

  • 派遣会社(派遣元)として決めておきたいこと

  • 派遣先として決めておきたいこと

これらは、派遣契約の一番重要な部分とも言えます。
この一番重要な部分について、このページの最後部分で触れたいと思います。

契約期間

契約期間=派遣期間は、当然、派遣会社(派遣元)と派遣先の合意により自由に設定できます。
(派遣期間制限のある業務については、その制限内で自由に設定可能。)

一般的には、3ヵ月未満の契約が7割程度、6ヵ月未満となると9割程度、といわれています。
初回契約は「2ヵ月」にすると、都合のいい場合もあり。
(参照「派遣社員の就業規則」)

さて、これら契約した期間の後、更に派遣をする場合、契約の更新をすることになります。
一般的に契約の更新方法の1つとして、「自動更新」の方法があります。

派遣契約において、自動更新は、それ自体否定されるものではありません。
しかし、派遣期間の制限がある業務については注意が必要です。

○『契約当事者の合意により派遣期間を更新する』 という文言であればOK。

×『特段の事情(契約当事者の契約解除の意思表示など)がない限り、派遣契約を自動的に更新する』 ではダメ。

これでは、派遣期間が設定されているとは言えないからです。
期間制限のある業務では認められず、派遣そのものが違法と判断されることにもなりかねないので注意しましょう。

ただし、

  • 一定期間で完了する事業に対する派遣の場合
  • 臨時的に設けられた部署に対する派遣などの場合

などはこれでもOK。
長期にならず3年程度以内と見込まれるからです。

禁止されていること

派遣契約には、派遣法により禁止されていることがあります。
それは、派遣社員の保護を図るため。
この禁止事項を知らないで、適用してしまった場合には、派遣社員を保護しないことになってしまいます。
適用してしまった場合には要注意です。

契約解除の制限

派遣社員の国籍、信条、性別、社会的身分、労働組合の正当な行為をしたことなどを理由として、遣契約を解除することは、派遣法で禁止されています。

これに違反して解約した場合、その解約は公序良俗に反するものとして無効となります。
また、その解約により損害が発生した場合は、損害賠償請求の対象になります。

「労働組合の正当な行為」には、ストライキも含まれます。
派遣社員が、派遣先企業において、派遣先社員と一緒にストライキすることにより、派遣先の業務に支障をきたしても、派遣先はそれを理由として解約はできません。

雇用制限の禁止

派遣契約には、契約することを禁止されている事項があります。
「引き抜き防止条項」と呼ばれるものです。

派遣先に対し、派遣終了後に、派遣社員を雇用することを禁止する契約は、できません
派遣社員に対しても、派遣終了後に、派遣先に雇用されることを禁止する契約は、できません

ちなみに、派遣期間中についてまでは、雇用を制限することは禁止されていません

通常の派遣であれば、契約どおりに派遣料金が受け取れるかどうか影響するところです。
紹介予定派遣の場合は、紹介手数料の受け取りに関係するところです。
派遣会社(派遣元)にとっては、派遣期間中の雇用制限設けておいたほうがよいでしょう。

派遣契約時における派遣社員の特定

派遣契約においては、基本契約書・個別契約書ともに、派遣社員の氏名等の記載はできません。
これは派遣社員の特定行為にあたり、禁止事項に含まれます。

派遣契約の流れはこうです。

  • 派遣会社(派遣元)と派遣先企業とで、派遣契約
      ↓
  • 派遣会社(派遣元)と派遣社員とで、雇用契約
      ↓
  • そして、派遣会社(派遣元)から派遣先へ通知

この通知のときに、派遣社員の氏名等を記載することになります。
つまり、通知は派遣契約の後であり、派遣社員の特定行為にはならないのです。
(通知については「派遣社員の雇用契約・通知」参照)

この通知の事務を省略するため、派遣契約に通知事項を含めることをしているという派遣会社の話しを聞いたことがあります。
目的は別としても、それはできませんのでご注意ください。

契約解除

契約することは、両者合意のうえで、原則自由。
契約を解除することも、両者合意であれば、同じく原則自由。
(前述の契約解除の制限を受けるものは除く)

でも、合意によらず、どちらかが一方的に契約解除する場合も一般的にはあることです。

派遣先の派遣契約解除

ここでは、派遣先企業が解約するケースの話です。
派遣契約の当事者は、派遣会社(派遣元)と、派遣先ではあります。
しかし、当事者ではない派遣社員の利害も大きくかかわることになります。

そこで、派遣先の中途解約について、「派遣先指針」により、この派遣社員の保護が図られているのです。

派遣先は、やむを得ず派遣契約を中途解約する場合、
以下の事項をクリアするよう求められています。

  1. 派遣会社の同意を得ること
  2. 相当の猶予期間をもって解約を申し入れること
  3. 派遣社員に対して、関連会社などでの就業をあっせんするなど就業機会の確保をはかること
  4. 新たな就業先を確保ができないときは、
    • 解約予定日の少なくとも30日前に予告をするか、
    • 派遣社員の少なくとも30日以上の賃金相当額の損害賠償すること
      (ただし、解約の原因として、派遣会社と派遣先の両者に責任がある場合には、それぞれの責任の割合について考慮すること)
  5. その他、派遣先は派遣会社と十分協議して、適切な善後策を取ること
  6. 派遣会社から請求があった場合は、中途解約した理由を明らかにすること

(注)
労働者派遣法24年改正により、派遣先企業の都合により派遣契約を中途解約する場合においては、「派遣社員の新たな就業機会の確保」や「休業手当などの支払いに必要な費用の負担」などをすることは、派遣先企業の義務となりました。
(参照「労働者派遣法 24年改正」)

解約の予告に代えてする日数分の損害賠償額が、派遣社員の「賃金」となっています。
これは最低限のものであって、派遣会社はこれ以上の損害賠償を請求することも可能です。
賃金の額ではなく、派遣料金の額としたほうが、派遣会社にとってはいいでしょう。
もちろんそれ以上の金額でも可能です。

解約の理由については、「解約通知書」などの書面の交付を求めるなどして、証拠力のある形式をとりましょう。
書式を、派遣会社であらかじめ作成しておいて、派遣先は、「理由の記入」と「押印」だけすれば済むようにしておきます。
ただでさえ、派遣先企業は、こんな書類を書きたがらないでしょうから。
少しでも行動の障害を減らすのです。

派遣会社の派遣契約解除

派遣先企業が派遣法に違反した場合、派遣会社(派遣元)から、契約解除(=派遣を中止)することが認められています。
これも派遣社員の保護のため。

この場合、契約解除は、直ちに行うことができます。
解除制限や解除予告期間が約されていても、その定めは無効になります。
そして、損害賠償請求も受けません。

この違反の範囲は、次の項目です。

  1. 労働者派遣契約に関する措置
  2. 適正な派遣就業の確保等
  3. 労働者派遣の役務の提供を受ける期間
  4. 派遣労働者の雇用
  5. 派遣先責任者
  6. 派遣先管理台帳
  7. 特殊健康診断結果の送付
  8. 労働基準法、労働安全衛生法、じん肺法、作業環境測定法の規定であって派遣先に適用される規定

派遣契約解除の効力

派遣契約の解除は、将来に向かってのみ効力を生じます。
これは、すでに提供された労働までさかのぼって返せない、ということです。

上で触れた「基本契約」について

・派遣会社として決めておきたいこと

・派遣先として決めておきたいこと

この2つの視点で、各項目を検討してみよう、というお話はしました。
それぞれは、契約をする両者の立場からの項目です。
ということは、派遣先視点のものは、派遣会社(派遣元)にとって約束したくないような内容もある、ということです。

そんな項目は、派遣会社にとって触れないでおくか。
相手方の派遣先が言い出さない限りは、放っておけます。
また、言い出しても合意するか・しないかは、交渉次第です。
それも1つの選択です。

でも、こういうことも言えると思います。
派遣先のためになる約束事があるということは、派遣先にとって、利用しやすい派遣会社である、ということ。

さて、どちらを選択するか。
それは、これらあげた項目を1つ1つ検討してみてください。

ところで・・・
このページは、派遣会社の派遣業経営を支援することを目的としています。
そういうページであっても、インターネットという特性上、いろんな立場の人が見ることができてしまいます。
そう。派遣先となる企業も見ることができます。

こんな環境の中、「派遣先として決めておきたいこと」を公開してしまっては、派遣会社の相手先となる企業に余計な知恵をつけてしまうことにもなりかねません。
それが、派遣会社にとって「良いこと」なのか。
当事務所では、正直判断に迷うところです。

そこで・・・
この項目「派遣の基本契約」、この情報は、ホームページ上で無条件公開することを控えることとしました。
情報を知りたいという、派遣業を経営している経営者の方に限定して、提供せさせていただきます。
そのための資料を作成しました。

入手方法は簡単に行えます。
下のメールフォームに必要事項を入力して、送信してください。
この資料を読んで、契約事項の1つ1つを検討することができると思います。

なお、これは派遣契約書のひな形を提供するものではございません

「派遣契約書のひな形はもらえますか?」というご質問をよくいただきます。
契約事項は、契約当事者間で決めるものであり、ひな形の安易な使用は、それが原因で不利益を被るリスクがあります。
資料提供のみというかかわり方である以上、当事務所では、その不利益やリスクに対し責任をとれる立場でないことをわきまえおります。

したがいまして、当事務所では、契約書ひな形の提供は一切おこなっておりません
ご理解のほど、よろしくお願いします。

それでは、「派遣契約」資料の料金と、資料請求から資料がお手元に届くまでの流れです。

● 派遣「契約」資料の料金は、[10,000円+消費税]です。

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を記載のうえ、メール返信いただければ、資料の料金は返金いたします。
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派遣「契約」資料が到着後、小俣事務所または数事と人事株式会社に業務のご依頼があった場合、その業務料金から、この資料の金額分を値引きします。
つまり、資料料金はその時点で無料になります。
ご依頼の業務は、顧問契約・スポット契約のいずれにかかわらず適用いたします。

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