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「おじいさま なんて、大ッ嫌いーー!!!」

伊集院はそう叫んでジジイを吹っ飛ばした。
な、なんだあ??
弟子入りしようと道場に正座した俺は、思わず腰を浮かせた。 ジジイはストッと綺麗に着地する。
「全く仕方のないヤツじゃな」
と、首を横に振って呟いた。
一宮 龍弥は俺の隣りに座って目をパチクリと見開いている。
コイツは伊集院より強くならないと結婚を許してもらえない、と一緒に弟子入りする気になったらしい。
『僕は頑張るよ!!』
そうかい。頑張ってくれ。
ま、こういう真っ直ぐなヤツは嫌いじゃねぇ。(寒いけどな)

「何をしておる」
「へ?」
「真琴を追いかけんか」
「なんで俺が…」
俺が眉間にシワを寄せると、ジジイ…じゃない、師匠が手にした杖を俺の頭に振り下ろした。
真剣白刃取り!

ふ〜。

「馬鹿もん!!」
「いてて!いてェって!!」
ジジイが空いている方の手で俺の頬をウニュ〜〜っと横に伸ばした。
「早く行かんと弟子入りは なし じゃ」
人の弱みに付け込みやがって。
「へーへー、行きますよ」
俺が道場を出る後ろで、坊ちゃんは追いかけようとするのをジジイに止められていた。


「伊集院」
「……」
おいおいおい何を泣いてんだよ。
「なんだよ?さっきのことか?」
弟子になる条件として、ジジイは俺がジジイに勝つまで 結婚を認めない、と言い、そんなコトはどうでもいいので適当に返事をした。
「なるほど、俺が勝てないと思ってんだな」
「違います!」
伊集院はぶんぶん!と頭を振って答える。
「そんなことじゃありません!!」
そんなコトって、俺には今一番の優先事項なんだが。
「…例えば、いま、私かおじいさまが崖から落ちそうになっています。 竜くんはどちらか一人しか助けることが出来ません。どちらを選ばれます?」
ジジイ
「わはは!即答だし!!」
お、シズカ。
「兄さまは黙ってて!!」
どんっと兄を張り飛ばす妹。 シズカ、なさけねぇ…。
伊集院はギュッと握り拳を固めて、
私、おじいさまには負けません!!
と宣言をした。
なんの勝負だよ…。

「そういえば、シズカ学校は?」
「こんな面白いこと家でやってんのに行けるわけないだろ」
見世物かよ。
「竜だって人のこと言えないじゃん」
「帰してくれないのに どうやって学校へ行けっていうんだ」
起きたら、知らないトコロに連れ込まれてたんだぞ?

伊集院は、俺を落とせなかったので元の学校へまた戻る予定だったらしいのだが、 もう少し猶予をもらったらしい。 明日にはまた同じ高校へ通うわけだ。

「また明日 学校で」
俺を送ってきた車から俺と一緒に降りて、伊集院が言った。
伊集院の家から(家というより山の頂上にある城だったが)、俺の家まではそんなには遠くはなかった。
これならバイクで通えるだろう。
「んじゃ」
軽く手を振って俺が家に入ろうとすると、後ろから腕を引かれた。


・・・・・・


・・・・・・・・・・・・


俺の神聖なる唇に・・・ ! ! !





「もう一度、宣戦布告です」


伊集院は にっこりと大きく笑って そう言った。





続き







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