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LOVELY、LOVELY、HAPPY !

 体育祭編






「…集院」
優しく肩を揺らされ、私はキッチンで目を覚ました。
「夏前ってったって、こんなとこで寝てると風邪引くぞ」
お風呂上りの竜くんは片手で髪を拭きながら、冷蔵庫を覗き込んだ。
「飲む?」
オレンジジュースを手に竜くんが訊く。
私は未だに寝惚けた頭を横に振った。

「弁当、大変だったら無理しなくていい」
私が枕にしていたレシピを見て、竜くんが言った。
「体育祭の練習で疲れてるだろ?」

それは、以前のような冷たい響きはなくて。

「学食とかで適当に食べるし」
な? と言って、ヨシヨシと頭を撫でられた。
「……」
そんな他愛もない仕草にドキマギしながら、頭を押さえた。
「…私、子供じゃないんですけど…」
「あ、わりわり」
笑って言う。
(…やっぱり…)
最近になって判ってきた。
この態度は、『 妹 』に対する態度だ。
桐香ちゃんと同じ。

確かに、おじい様の誕生パーティのとき、私は彼女を羨ましく思った。
あんな風に笑いかけてもらいたいと思った。
でも本当は。
全く満足できない自分が居て。

私は特別になりたいのだ。
竜くんの特別に。

ゴクゴクと飲み干し、さっとコップを洗う。
竜くんは亡くなった おじい様の教えと言って、そういう所がきちんとしている。
食事の仕方や お箸の持ち方も綺麗で、字も乱暴だけれど整っていた。

ふぁ、と一つ欠伸をする。
こんなに近くで、体温が感じられそうに傍に居ても、高鳴るのは私の心臓ばかり。
「風呂入ってきちゃえば?」
こんなセリフも何でもない顔で。
私は竜くんの照れた顔も赤くなった顔も見たことは ない。
キスしたときも、しまった、やられた、といった表情で、今は違うのか、試す勇気さえない。

近くに居れなければ苦しくて、近くに居すぎても苦しい。

顔が熱い。
泣きそうになる。

「お風呂 行く…」
台所を出ようとした私の肩に、竜くんの手が掛かる。
身体がビクリと震えて、転びそうになった。
「本忘れ…、っと!」
竜くんの腕が、私の身体に回っている。
「…っぶねーな」
耳元で声がする。
喉を鳴らす、よく通る声。
「ホンット、変なトコで鈍くさいよなー」

は、 と笑う息が、耳に触れた。


       もうヤダ、 もうヤダ!!


「もぉ、や…」
赤くなった顔を両手で隠す。
「伊集院、なに…」
不思議に思った竜くんが、私の手に触れて。

「…、……」
「なに?」
覗き込んでくる。



「 ッ 竜くんの馬鹿ぁ!!! 」



チーーン!




顔を平手打ちをして。





逃げて来てしまった……





             最 悪 。






つづく







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