竜くんは、一人 黙々と朝稽古の片付けをしている。
道場の床が、きゅっきゅ、と鳴った。
「竜くんっ!」
思い切って声を掛けた。
顔を見れないまま、お弁当を差し出す。
「昨日はゴメンなさい」
「……」
「………?」
ちらっと顔を上げると、竜くんはジッと私を見下ろしていた。
え、な、なに…、なに?!
「……」
「………」
ジーっと段々 顔が近付いてくる。
竜くんの目は、私の目から離れない。
うそ……!!
「……」
「………」
「シズカーー ! すげーホントだ !!! 」
へ?
「真っ赤、 タコ! 茹でダコ!!」
「だろー?」
遠くから、兄さまの返事が聞こえる。
「ああ、面白かった」
そのまま、竜くんはシャワー室へ向う。
「……ッ ちょっと待って!」
ガシッと裾を掴む。
「なに、今の…」
竜くんに訊く。
「へ? ああ、昨日のことシズカに意味わからんって話したら、やってみろって」
本当にタコになるんだもんな〜。
わはは、と言って、竜くんはシャワー室に引っ込んでしまった。
……… 最っっ低 。
「あースッキリすっきり。」
「…竜くん」
「ん? なに?」
にっこり。
……惚れた弱みって、惚れた弱みって……ッ!!
もうヤダ、その笑顔ーーー!!
「さーて、朝メシ、朝メシ♪」
……そんな可愛く笑わないでよーーー!!!
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