倒れた竜くんが、ギッと眼を上げる。
その視線を追った私は、一人の男と目が合った。
あ あ 、
あ な た が 竜 く ん を
傷 付 け た の ね ?
何も耳に入らなかった。
身体が動いていた。
護身のための銃。
私 が 、 竜 く ん を 護 る た め の 。
命中すると思った。
判るのだ、撃つときには、もう。
それを 破壊 する と 。
「 ・・・・・・ !! 」
「 ・・・だ め だ!! 」
「・・・い・・・ ん !!! ・・・」
「・・・っ」
「 ま こ と !! 」
気がつくと私は竜くんの腕の中に居て、仕方がないなぁって顔で竜くんは苦笑いしていた。
「大丈夫だよ」
それは、
さっき桐香ちゃんに見せた表情と同じで、
ふと腕を上げ、その手に血がついていることに
驚いた顔をした。
「わり」
赤く染まった私のドレスに、高級ドレスが、と場違いなことを唸っている。
「自分の怪我のことを心配して」
すぐに担架が来るから。
「あーうー、まあなぁ~」
舌っ足らずに竜くんは意味のないことを呟いて、ずるり、と身体を沈み込ませた。
「竜くん!」
「だいじょーぶ だいじょー…」
そのまま、瞼を閉じる。
「竜くん!!」
もう、反応は無かった。
「真琴」
「にいさま…」
「竜は、大丈夫だよ」
「うん」
竜くんは命に別状は無かった。
でも、だいぶ出血していた竜くんの顔色は青白い。
いつでも元気な竜くんには考えられない姿だった。
竜くんが、目を覚ますまで。
そう思って、ついていた。
風邪なんて ほとんど引いたことがないと言っていた。
それで、兄さまが馬鹿だからな、と言って、竜くんを怒らせたんだった…。
竜くん。
竜くん、竜くん。
私は もう、貴方が居ないとだめです。
世界が霞んで、色が無くなってしまう。
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