目を覚ますと、夜だった。
暗い部屋。
ぼんやりとして頭が回らない。
ぼーっと天井を眺めていると、段々目が慣れてきた。
白いカーテンからは、夜の青い光が柔らかに入ってきていた。
その光を背にして、伊集院がいた。
逆光で表情は判らない。
声が出なかった。
なんだろう。 ひどく身体が重い。
泥沼に沈み込んだようで、力が入らなかった。
伊集院が近づいてきて、ぽろぽろと泣いているのが判った。
変……だなぁ…
伊集院は こんな手放しで泣いたりしたことはなかったはずだ。
本当は涙脆いんだろう、でも、いつも我慢して歯を食い縛っている。
泣いてしまう、涙が浮かんでくる自分が悔しくて堪らないって顔をする。
なのに、青い薄明かりの中で、伊集院は無防備に泣いていた。
ただ泣いていた。
俺は、泣く女が吐き気がするほど嫌いだ。
軽蔑さえしていた。
していた、けど。
……ふわふわの髪が、揺れる。
思わず手を伸ばして掴んだ。
なんか、いっつも柔らかそうだなって思ってたんだよな。
さわったら、どんなかな、って。
伊集院は何故かひどく驚いた顔をしていた。
? なに驚いてんだ?
そして、涙を浮かべたまま、ゆっくりと微笑んだ。
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