桐香は、父親に連れられて離れていった。
母は来ていないらしい。
もともと、こういうパーティとかが嫌いだと言っていた。
「台風一過だなぁ。 桐香ちゃん、お前そっくり」
シズカが笑った。
「へ? 似てねぇだろ?」
「似てるよ」
シズカはうんうん、と一人で納得している。
こいつの頭ん中は宇宙人だからワケ判んないんだよなー。
「あ、ほら、主役の登場だ」
由希が言うと、入口に人が集まっているのが見えた。
お、ジジイは やっと来たか。
「悪の親玉 登場〜♪」
そう言ってシズカは、孫の役目をこなそうかなと前髪を掻き上げた。
すると、誰に声を掛けたわけでもないのに、人垣が開いて道が出来ていく。
・・・シズカの凄い所はここだよ。
いつもは只の変人のクセに、佇まいを少し直すだけで、自分の存在を周りに知らしめる。
子供のころ試合で組み合ったときもそうだった。
礼をした後の一瞬で、その空気を変える。
「・・・?」
ピリッと刺すような気配を感じた。
俺は二人の後を歩きながら見渡したが、感じた気配は一瞬のもので既に鳴りを潜めている。
夜の街を歩いていたときには、慣れた感覚だったもの。
オカシイ。
もちろん、このパーティでも権力や家柄やらが絡んで、嫌な空気を纏った人間はたくさん居る。
しかし、今のは、もっと直線的なものだった。
もっと破壊的なもの。
伊集院とシズカは気づかなかったらしい。
ってことは、俺の勘違いか?
「じーさま、おめでと」
「おめでとうございます、おじい様」
伊集院はジジイの頬にキスをする。
うへ〜。
俺が別世界を感じて後退ると、ジジイに呼ばれた。
「竜」
ちっ、仕方ない。
「・・・おめでとうございます、師匠」
一応 頭を下げた。
長生きしろよ。 俺が倒すまでな 。
そして次々に祝いの言葉が述べられていく。
なんか、すげぇ、この量。
覚え切れてんのかなー?
伊集院が離れて、何やら男に話し掛けた。
あ、プレゼントか。
男は頭を下げ、後ろに下がった後、大きなものを抱えた。
ビ リイッ!
今度は、ハッキリ感じた殺気。
………………いつもの警備が、決して……………
「 ッ !! 」
とっさに、身体が動いていた。
伊集院の驚愕した顔が間近に見える。
その小さな身体を覆った。
響く銃音。
横腹に衝撃が走った。
あちこちから、悲鳴、悲鳴、悲鳴。
眼を上げる。
二階のバルコニーへ通じる階段。
そこから銃弾は放たれた。
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