パーティ前日、やはり屋敷を警備するに当たって会議があった。
普段ジジイを護衛(必要なのかって感じだが…)しているメンバーが中心だ。
俺も末席ながら参加させてもらうと、顔見知りになった人たちがチラホラと見えた。
「・・・は?」
会議は順調に進んでいたが、俺は知らされた自分の役目に絶句した。
「ん? 丁度いいだろ?」
山谷のオッサンが俺を見ながら笑う。
「『真琴お嬢様のエスコート』!? なんじゃそりゃ!?」
「何って、ゴツいオジサン達がパーティ中ぴったりくっついているわけにもいかないだろ? その点、お前が護衛、兼エスコート役をやれば全然 問題ないわけだ」
っつーか、それってもう婚約発表同然じゃねえ・・・?
パーティ中ずっと伊集院についてるわけだろ?
んでもって、なんて紹介されるんだ?
「っ冗談!!」
ハメられた!!と思ってももう遅い。
「なに? 他に役に立つことがあるとでも言うか?」
「う…」
山谷のオッサンがそう言うので、俺は答に詰まった。
確かに義理で参加させて貰っているようなもんだし。
ワガママが通せる立場でもない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とか言うほど、俺は愁傷な人間じゃないだな。
逃亡するぜ。
グッバイ、ベイベー。 さらばだ 伊集院家!
「竜くん」
「ぐぇっ」
伊集院に後ろからエリを掴まれて、俺は蛙の轢きつぶれた声を出し……
って、確かジジイにも前に やられた。 似たもの家族め。
「すぐに竜くんが逃げるからですよ」
はぁ~、と伊集院が溜息を吐きながら言った。
「竜くん、敵前逃亡って良くありませんよ?」
「無駄に命を捨てるよりマシだね」
っていうか、伊集院、 俺の敵って認めてるぞ、それ。
「おじい様に逃げたら破門って言われていませんでしたか?」
「ふっ。 水戸黄門のモンロウのように脅されたがな! こんな所で俺の華麗なる人生を駄目にされてたまるか」
「・・・甘い、甘いです、竜くん・・・」
「へ?」
伊集院がチッチッチと指を振るので、俺は思わず足を止めてしまった。
「華麗なる人生なら、もうちょっと 計算 しなくちゃ。
いいですか。
ここで逃げたら、竜くんは 一生 おじい様には勝てません よ?
とりあえず、おじい様の技を
盗んでから 逃げればいいんです。」
「逃げるにも、タイミングってものを考えないと♪」
「・・・・・・」
・・・・・・・・・・と、いうワケで、俺は完全に逃げるタイミングを逸してしまったのだった・・・
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