たくさんの人間から挨拶されたが、覚える気もなかったので右から左に聞き流した。
興味なし!
「真琴さん」
耳慣れた声がして、一宮 龍弥が近付いてきた。
「一宮さま」
「よ〜、タツミ」
シズカが手を振る・・・が、無視され、
「真琴さん、美しい・・・」
と、タツミは伊集院の手の甲にキスをした。
公の場では投げ飛ばすことも出来ない伊集院は、
「相変わらず お世辞がお上手ですのね」
ホホホと やたら気合の入った微笑みを返した。(←怖い)
「真実を述べたまでですよ」
険悪な空気に気付かずニコニコ言うタツミも なかなか凄い。
会場は立食パーティになっていて、俺は、生まれて初めてフォアグラというものを食べた。
うーむ、これが噂の・・・。
その場でシェフがステーキを焼いてくれ、それが あまりに美味かったので絶賛したら、また焼いてくれた。
あ! あれはキャビアとかいう・・・
「いい食べっぷり」
「んぁ?」
口にモノが入っていたので、間抜けな声が出たが、振り返ると同じくらいの年頃の女の子が立っていた。
「ふうん・・・」
ジロジロと遠慮のない視線を送ってくる。
なんだコイツ。
可愛い、というよりは美人の部類に入るだろう。
日本人形みたいだ。
「花!」
「真琴、久しぶり!」
伊集院が嬉しそうに呼ぶと、無表情だった顔がほころんで、笑顔を見せた。
「真琴も薄情よね。 もっと頻繁に連絡ちょうだいよ」
「花こそ! テニスの大会近いんでしょう? 悪いかなぁと思って遠慮したの」
仲の良さそうに話す二人を横目に、俺は好物のチキンを取った。
「あ、花、こちらが・・・」
「『 竜くん 』でしょ」
伊集院が俺を紹介しようとしたのを遮って、ニッコリと笑った。
「初めまして。 伊崎 花です。 真琴から噂は かねがね」
「初めまして」
差し出された手を一応 取ったが、俺は嫌な予感がしてちょっと後退った。
いうなれば、俺の妖怪アンテナが反応したってヤツ。
・・・・・・・・・由希とかシズカと同じニオイがするよーな・・・
「花は私の前の学校の同級生で、・・・」
伊集院は紹介を続けていたが、俺はもう聞いてはいなかった。
「・・・」
「・・・・・・」
にこ。
うっ・・・!
俺の警戒心を感じてか、伊崎 花は微笑んだが、それは益々予感を確信させた。
やはり妖怪・・・
「竜くん?」
「あー、いや・・・」
俺は問い掛ける様子の伊集院に、握手をした方の手でヒラヒラと何でもないと示した。
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