「?」
竜くんは何も判っていない様子で、私を見た。
払われてしまった その手を繋いで、近づけてもらえない位置に その女の子を置きながら、
それが特別なことだとは気付いていない。
「りゅう と けっこん するのは、きりか だもん 」
竜くんのスーツの裾を掴んで私を睨む顔は、自分が愛されていることを知っていた。
私は、泣きそうだったかもしれない。
「お前らなぁ…」
竜くんはそう呟いて、面倒臭そうに溜息をついた。
「…兄妹で 結婚できるか、アホ!」
「………………………兄妹?」
「い・も・う・と! 父親の違う 異父妹 ! 」
「・・・似てませんね・・・」
そういえば調査書に書いてあった…。
「言うことは それだけか・・・」
だって…。
「桐香っつーの」
竜くんが言うと、桐香ちゃんは、
「りゅう、だっこ!だっこ!!」
と ねだった。
竜くんはヒョイと抱き上げて、特に気にした様子もない。
桐香ちゃんは、『 妹 』で……、でも、確かに『 特別 』なんだ。
私は、彼女との距離を思った。
その後、桐香ちゃんのお父様が来て、嫌がる桐香ちゃんを連れて行った。
「また会いに行くから。な?」
「ぜったいだよ!」
竜くんの中で、その約束はとても重くて、…そして軽い。
「アイツが、変なこと言い出さなくなるまでは、ちょっと距離置くつもりなんだけどな」
桐香ちゃんの後姿を見送りながら竜くんは言った。
「兄貴が居なくて少し淋しいだけだろ。小さいし すぐ忘れる」
竜くんは、自分への好意を軽く見る。
信じていない。
だから、すぐに会いに行けるようになると思ってる。
約束は竜くんの中では真実だ。
違うよ、竜くん。
私も あのくらいだった。
貴方に出会ったとき、あのくらいの歳だったよ。
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