クロム欠乏症
静脈栄養時にみられたクロム欠乏症としては、Jeejeebhoyらの報告が最初である。
腸間膜血栓症で、大量腸切除後5年以上静脈栄養を行っている患者で、輸液開始後3年半目に抹消神経障害と体重減少が起こり、耐糖能の低下、遊離脂肪酸の増加と呼吸商の低下、窒素平衡の異常がみられた。
血中クロム値は0.55ng/ml（正常4.9〜9.5）と低値を示し、毛髪中のクロム値は154〜175ng/g（正常500以上）と少なかった。この患者にインスリン４5単位/日を投与すると体重減少は回復したが耐糖能と呼吸商の異常は改善されなかった。
そこでインスリン投与の代わりに250μｇ/日のクロム(塩化クロムの形で)2週間投与たところ、耐糖能、呼吸商、遊離脂肪酸は正常に回復し、窒素平衡、クロムバランスも負から正になった。
そして抹消神経障害も治癒し、その後18ヶ月間良好な状態を保っている。
その後、FreundやBrownらの報告がある。
わが国ではクロム欠乏症の報告はみられていない。
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