セレン欠乏症
セレンはglutathione peroxidase(GSH-Px)の構成成分であり、ビタミンEとともに組織における酸化防止剤の役割を果たしている。
ヒト欠乏症は中国の土壌中の少ない地区でみられる克山病(Keshan disease)[慢性の心筋症で15歳以下の小児や妊婦に起こる突然死]がセレン欠乏による可能性が高いといわれている。
静脈栄養時のセレン欠乏症は、1979年にRij が最初の報告を行っている。腸瘻患者で輸液開始後1ヶ月で下肢の筋肉痛を訴え、歩行困難となった。
この時点で、血漿セレン値は9ng/ml(正常43±1.1)、赤血球セレン値は50ng/ml(正常66±3)と低値を示し、また尿中セレン排泄量、赤血球GSH-Px活性も5.8±0.3μg/日、7.8u/gHbと低値を示した。
治療としてセレン100μg/日(セレノメチオニンの形で)投与にて、下肢筋肉痛は軽減し、歩行可能となり、血漿セレン値も有意に上昇を示したという。
その後Flemingらは、家庭静脈栄養施行中に心筋変性により死亡した症例で、心筋中のセレン濃度が極度に低値を示し、心筋組織像でもセレン欠乏の動物でみられる像に酷似し、セレン欠乏症として報告している。
またKienらは静脈栄養時にみられた爪床部の白色変化がセレン投与により治療したと述べている。
その他、Kwashiorkorなど低栄養状態のときに、セレン欠乏状態にあることがいわれている。
静脈栄養法や経腸栄養法で栄養管理を行っているクローン病患者で低セレン血症をみとめている。
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