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瀬田興産化工株式会社
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 DPH(IHヒータ) 開発ストーリ
      「日本発」のモノづくりを実現する

インバータ編
積層規則充填物を加熱する
 最初のきっかけは社長の川村である。今ではどの時点でDPHのアイデアが閃いたのか本人も忘れていて判らないが、恐らく風呂の中、食事中のいずれかであろう。
 当時、瀬田興産化工は化学プラントで使用される「積層規則充填物/デュアルパックス」を製作販売していたが、いずれ来る次期製品投入を考えて色々模索していたようである。その一つに積層規則充填物を加熱して熱源として扱うプランがあった。始めは直接電極を繋ぐアイデアであったようだが、川村は何かの勉強中に誘導加熱と誘電加熱の技術を知ったようである。
 当時学生だった内堀がひょんな縁で川村から相談を受け、このような金属物を暖めるのには誘導加熱がベストであると言うレポートが残っている。
インバータ回路の自作
 内堀は学生らしく教科書に載っているような発振回路を作り、誘導加熱を行ってみたがとうてい加熱できるものでは無かった。そのうちに科学雑誌に載っていた回路を見つけ試作してみたところ、M10のネジが少しは加熱できるようになった。しかしとても大電力が投入できるような代物ではなかった。
 あるきっかけで某家電メーカの技術屋さんと縁ができ、家庭用のIHが利用できることを教えてもらった。共振コンデンサとコイルの組み合わせも理解でき、一段階レベルが上がった時期でもある。
 DPHを動作させるためには電圧と電流と周波数の組み合わせが大事であり、それぞれを自在に扱えるインバータが必要である。第一高周波(株)、高周波熱錬(株)、富士電機(株)など日本各メーカのインバータを検討してみたが、自在に扱えるインバータはまだ存在せず、結局自作するしかなかった。
 社長宅にあった三洋製、松下製の家庭用IHヒータを分解し、基盤から回路図を起こした。社長宅では代わりにシャープ製のIHヒータを購入したが此もすぐに分解される羽目に。ついでと言うことで日立製、東芝製のIHヒータも購入したがこれも同じ運命を辿った。結果、この中の一社の回路が一番理解しやすく、回路動作の勉強になった。
 特にこの基盤では各所にテストピンを立て波形を測定した。この時に使用した回路が今でも残っており、ネームを貼り付けたテストピンがそこら中に立っている。
原理を理解する
 ちょうどこの時期にCQ出版社の「トランジスタ技術」と言う雑誌にPSpiceと言う回路シミュレータが付録で付き、これが大変役に立った。と言うのも、それまでは実際に基盤に付いているコンデンサとコイルを変えるため、組み合わせを誤るとパワートランジスタが「爆発」してしまい、実験の度にビクビクしていたのである。
 シミュレータのお陰で例えば1mH+0.01μFと言うようなとんでもない組み合わせでの回路動作が実現でき、コンデンサとコイルの関係の理解が進んだ。
 実際、後に一緒に研究する学生達もこのシミュレータを使って様々な回路に取り組んでおり、パワーエレクロトニクスの発展に寄与している。
 ちなみにこのころの回路シミュレータは今のようなマイクロソフトの「ウインドウズ」でなく、「MS-DOS」で動く時代であり、回路図は「10番接続と20番接続の間に10オームの抵抗を入れる」と言うようなルールでテキストで書いて計算させていた。
 そしてこのころに当時神戸大学の門をたたいた。家庭用IHの回路は一石型プッシュプル回路で動作している。当時この回路は論文でも発表されている時期でもあり、内堀が母校の研究室で借りてきた電気学会誌に同じ回路の論文を見つけ、当時神戸大学・中岡教授(現:慶南大学)の門をたたくきっかけになった。
 そして、土曜日に研究室に「遊びに」行き、学生たちにも色々と教えて貰うことになる。
 

テキストで書いた回路
(クリックすると拡大できます)

ドットプリンタによる出力波形
(クリックすると拡大出来ます)
一石型共振回路ではダメだ
 回路シミュレータで一石型の研究を進めていたが、どうしても電源は200Vに対応できないことが判りかけてきた。コイルにたまる跳ね返りの電圧が当時のパワートランジスタの耐圧を超えてしまうのである。
 200Vの電源電圧でないと、1KW以上のパワーが用意に得られない。当時は50KWぐらいのDPHを試作しようと目論んでいたのである。その為に他の回路に方向転換をすることに。
 ハーフブリッジもしくはフルブリッジ回路で検討を進めることにした。当時はソフトスイッチングと言う言葉が学会で通用しはじめ、補助スイッチを用いた回路も著に就いた時代であり、回路研究としては大変好都合な時期であった。
 そしてこれも「トランジスタ技術」に掲載されていたフルブリッジ回路駆動用のICチップ(ML4818)が目に留まり、早速試してみることに。
10A流れた!
検討した回路方式は「位相シフト方式フルブリッジインバータ」である。
これは電源電圧と駆動周波数とインバータ出力を別々に操作出来る回路で、DPHの研究にぴったりであった。
大阪・日本橋(東京で言う秋葉原)で基盤を起こすためのエッチング道具を購入し、機械製図用のCADで無理矢理に回路図のマスクを書き、発振回路を作り、中岡教授から貰ったMOS-FETを回路に組み込んだ。負荷はガラス容器にはめ込んだ試作DPH。赤熱しないように水を入れておく。
先に、発振回路の動作は確認しており、シミュレータで動作波形も検討を済ませていたが、やはり可変電圧器で徐々に電圧を上げていくことにした。
5V・・・10V・・・
位相シフトを試す。シミュレータと同じ動きをオシロスコープは表示している。
さらに電圧を上げる・・・15V・・・20V・・・ 位相制御はOKである。

一旦ここで電圧を落とす。緊張の糸を解いた。とりあえず回路は動いている。MOS-FETは爆発しない。
異音も焼けるニオイもしない。
電流計は・・・とりあえず針は動いていたから電流は流れている。

ではもう一度・・・10V・・・15V・・・ 電流計の指示が増える・・・20V・・・ 1Aを越えていた。

さらに電圧を上げる。40V・・・50V・・・位相シフト・・・OK・・・一旦電圧を落とす。
気持ちを落ち着かせてからもう一度電圧を上げる。今度は一気に50Vまで昇圧。そこから徐々に電圧を上げる。
60V・・・70V・・・電流も増える。10Aを・・・越・え・た。

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(クリックすると拡大出来ます)
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実験で使用した電流計と変圧器     
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