万華鏡
(児玉さんの横田弁川柳)
あなたも出雲弁川柳を作ってみませんか
寄稿をお待ちしております
あ行 か行 さ行 た行 な行 は行 ま行 や行 ら行 わ行
☆2004年6月6日
〇 ばあいがええ 気品も身なりも 逸品だ |
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場合がええ というのは どっしりとして気品がある様。「気品も身なりも どこへ出しても恥ずかしくない 立派な人だ」と 尊敬し 頼りにしている人のことなのです。
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○ はがいいねー ケータイを持たにゃー えけんだねえ |
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はがいい は はがゆい ですね。高校生が数人たむろして 携帯電話で何かやっています。それを側で見ていて はがゆがっているのです。世の中 変わってきましたね。
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〇 はしかいい 浴衣の糊が こわ過ぎて |
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はしかいい というのは 衣服に何か付着しているために 痒いこと。お祭りなのでしょうか 折角 浴衣を着てみたのに はしかいいのです。洗濯糊のせいなのですね。
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〇 はしじかじゃー 来たもん皆 困ります |
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はしじか というのは 座敷の下手のこと。会合で リーダー的な人が 入ってくるなり下手に座られた 「それじゃーいけません 移ってください」と 言っているのです。
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〇 はったはっただ もうこれ以上は 無理かもね |
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はったはった とは 液体が満ちているようす。何かを入れ物に注いでいるのですね どうやらいっぱいになったようです。もうこれ以上は無理なのでしょうね。
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☆2004年6月13日
〇 はっとーかべ 今更したてて 手遅れだ |
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はっとーかべ というのは 通行禁止の標しのこと。「事故があり 問題になった地点に今になって通行禁止の札を掲げたところで 遅いですね」と 言っているのです。
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〇 はでみせが すーねえどこに あったかね |
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はでみせがする とは 見かけが派手 見栄えがいいこと。「えらい派手な 若げなものですね いいと思うけど どこで買い求めなさったのですか」と 聞いているのです。
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〇 はながこげた 片づけちょいて ええけんね |
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はながこげる というのは やる気をなくす ということ。やる気満々で 仕事の準備を始めていたのですが 何かの拍子に 何故か やる気をなくしてしまったのですね。
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〇 はなが向き 支度を急に 整える |
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はなが向く というのは 気がその方へ向く ということ。何となく出かけてみたくなったので 急に外出の支度を始めました。思い立ったが吉日 というところなのでしょう。
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〇 はなただじ のぞくと危ない 気ーつけにゃー |
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はなた とは はしっこ のこと。観光で 岬のとっぱなの 崖のようなところに来て乗り出して眺めようとしたのですね。「危ない」と 注意されたのでした。
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☆2004年6月20日
〇 はばしいのー 今日のお前は なしてかね |
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はばしい とは 荒々しい 烈しいこと。何があったのか いつになく なげやりで 荒っぽく 周りに当たり散らしています。一体どうしたことなのかと 心配なのです。
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〇 はまいかで 楽にさっしゃい 腰かけて |
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はまいか というのは 家の上がり口の縁側のこと 外で働いて貰っていた人が 戻って来られました。「はまいかへ腰を下ろして 休んで下さい」と 言っているのです。
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〇 はらふたげに そこにあーもん 食べーだわ |
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はらふたげ とは 空腹時に腹を満たすこと。帰ってきたけど どうもおなかがすいているようだ。「腹がないちょーやーなけん 何なとそこにあーもんを 食べーだわ」
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〇 はりばなら 関係者の方 頼んます |
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張り場 は 葬儀の時の受付。葬儀は 近隣の者が役割を分担して執行にあたります。張り場で受付をされるのは 故人の関係者だった人の方が 都合がいいですね。
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〇 はんめどまー あーかもしれん あすこまで |
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はんめ は 半里 どまー は どもは 位は ということ。「目的地までは 二キロぐらいはあるかもしれん」と 言っているのです。
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☆2004年6月26日
〇 ひがおがさし ひぐらしまでも 眼をさまし |
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日顔がさす というのは 天気が急によくなって 陽がさして来た ということ。気分も晴れ晴れしますが ひぐらしまでも 賑やかに 鳴き始めたのでした。
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○ ひとあせも またふたあせも かくだかね |
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一汗をかく というのは 一仕事をやりとげる ということ。「ぎばんでやってごいて一仕事すんだだものー もちーとやってもらわにゃーいけんやーなわ」 だそうです。
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〇 ひとかえしの あのにぎやかさ うそみたい |
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ひとかえし とは ついさっきの ということ。お祭りのイベントか何かで 一時 雑踏し 興奮状態だった それが終わって 引き潮のように収まり 気抜けしているのです。
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〇 ひとよさで まげに大きに なったのー |
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ひとよさ は ひと晩 のこと。夏の盛りの 畑の野菜の成長には驚かされます。茄子でも胡瓜でも 一夜のうちにびっくりする程 でっかくなっていますね。
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〇 ひにちぐすりで おおかたええよ せわーない |
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日にち薬 というのは 日がたっていくのが薬 ということ。「何にもしなくても 日が経てば直ってくる程のことだ 大丈夫だよ」と 言っているのです。
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☆2004年7月3日
〇 ふたかまど やっぱり多い デメリット |
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ふたかまど とは この場合 一家族が二か所に別れて暮らすこと。いろいろな事情から家族が離れて暮らしていますが やはり問題がありますね 難しいもんです。
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〇 ふつごうな 雲行きだども わしゃー知らん |
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ふつごう とは 具合が悪い おかしい ということ。会合の雰囲気が 何やら険悪なのですが 「私には関わりはないよ」と その中の一人が 言っているのです。
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〇 ふてたんだ お前の顔に 書いてある |
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ふてる とは 不平に思い腹をたてること。気にいらないことが生じ 不腹なのですが 顔 態度にそれが表われているらしく 指摘されたのです。
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〇 ふねがついて あばかんのーとは 罰あたり |
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船が着く というのは 同じ品物をあちこちから頂くこと。時季なのですね あそこにはどうかしらと 気遣って頂いているのです。持て余すなどしては 罰が当たりますよ。
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〇 ぶりもよし 明るく気だても よいけれど |
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ぶり とは 顔形 容貌のこと。お嫁さんの評判です。「器量もいいし 明るくて気だてもいいのだけれど」 と この上に何を望むのでしょうか うるさいですねえ。
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☆2004年7月10日
〇 べったーべったー お世話になーこと ばっかしで |
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べったーべったー とは 毎度 度々 ということ。「いつもいつも お世話になることばかりで まことに申し訳ありません」と 丁重にお礼を申し上げているのです。
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〇 へのかっぱ わしに任せて おきなはい |
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へのかっぱ とは 造作ない たやすい ということ。「そんなことは 訳はない たやすいことだ 私に任せてくれませんか」と たいへんな自信なのです。
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〇 へんがえを しに行くだかや わしひとり |
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へんがえをする とは 一度決まったことを取り止めて 相手に知らせる 契約を取り消すこと。相手に そのことを伝えに行くのです。一人でなど 気が重いですね。
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〇 へんじょーこんごー いわっしゃーだも さっしゃらん |
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へんじょうこんごー言う とは 訳のわからぬことを くどくど言うこと。何故出来ないのかなどと 批判ばかりされるけれども それかといって 自分はされないのです。
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〇 へんぜーわ みやげにもらーた もんだども |
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へんぜる とは 進呈する あげる ということ。「土産だよと もらったものだけれど 珍しいものだから あなたにも すそわけだわ」と 言っているのです。
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☆2004年7月17日
〇 ぼいたくっても うろつきまわる 捨て子猫 |
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ぼいたくる とは 追っ払うこと。のら猫がうろつき歩いて 誰も迷惑している。見かけたので追っ払ったけれど 舞い戻って来てまたうろついている しようのない猫です。
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〇 ほがほがと 運動会の 帰り道 |
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ほがほが は ぼんやり ぐずぐず している様子。運動会が終わり 一人の子どもがぼんやりと家路を辿っています。負けたんだね お母ちゃんの顔も見たくないんだね。
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〇 ほこをふって えんでしまーた もんだげな |
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ほこをふる とは 腹を立てること。何があったのでしょうか お嫁さんが腹を立ててさっさと実家へ帰ってしまいました。近頃のお嫁さんは 昔とは違うんですねえ。
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〇 ほじくって まで悪口を 言わんでよ |
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ほじくる とは 小さい穴などを掘りおこすこと。これはと思うことを 洗いざらい取り上げて 攻撃の材料にするもんだから 「そこまで言わんでも」と 言っているのです。
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〇 ぼでーだわ イーシャンテンまでは えくだども |
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ぼでー は 少しも 全然 ですね。麻雀です イーシャンテン(一向聴)までは作れても 聴牌上りと なかなかいきません。麻雀の醍醐味 正念場は ここからなのですがね。
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☆2004年7月24日
〇 ほどがわりー 何と察しの 悪いこと |
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程が悪い は 程度がひくい 期待はずれ などということになりましょうか。「どうも こっちの考えがのみ込めていない あんな人だったのか」と 思われているのです。
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〇 ほらみっさい ちーたーやって みーもんだ |
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ほらみっさい は それみなさい ということ。自信がなくて躊躇していたことに思い切って取り組み 出来たのです。「それみなさい 出来ますがね」と 言われたのでした。
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〇 ぼろかくし かえって人目に つくかしら |
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ぼろかくし は 汚いものを隠して見えないようにすること。人が来られるので あわてて汚れた所を取り繕ったのですが 「かえって目につくかしら」と 気になったのです。
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〇 本気顔に やーやこなった みたいだね |
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本気顔 は 共通語といえるかもしれません 文字通り 本気な顔つきをしている ということです。「ようやくやる気になったもんだねー 顔つきでわかーよ」 だそうです。
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〇 ほんならのー これを届けて 来てごっさい |
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ほんなら は それなら ごっさい は 下さい です。荷造りが終わったところで 「それなら今から これを届けて来て下さい」と お願いをしているのです。
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作者:児玉敏郎
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