万華鏡
(児玉さんの横田弁川柳)
あなたも出雲弁川柳を作ってみませんか
寄稿をお待ちしております
あ行 か行 さ行 た行 な行 は行 ま行 や行 ら行 わ行
☆2003年11月8日
〇 がいなもんだ 痛がらんがね まくれても |
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がいなもん とは 大きい または 強い者のことをさします。小さい子どもが転びました。「強い強い 痛がらんねー」と 機嫌をうまいとこ取って 立たせたのでした。
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〇 かがしなしに 車が通るよ 要注意 |
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かがしなしに は 絶えることなく ひっきりなしに ですね。道路での交通指導でもやっているのでしょうか。近頃の 道路の交通事情は 全く油断できませんからね。
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〇 かどの広さ あの葬式の 派手なこと |
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かどが広い は 親戚が多い かどが多い は 交際が多い ことなのですね。親戚の多い家の葬儀が終わったところで 「やっぱり派手だったね」と 話しているのです。
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〇 がわめぎだ 小言を言わにゃー いけんかのー |
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がわめぎ とは 近所に迷惑をかけること。若者たちが 近所の迷惑も考えないで騒いでいる。「はた迷惑だ 小言を言わにゃーいけんかのー」と 困っているのです。
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〇 かんべんで つつましやかは いけんのか |
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かんべんな とは 倹約することです。贅沢になり切った世の中 無駄を省き倹約してつつましく生きるのを けちくさいとけなすのです。どこか 間違っていますわね。
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☆2003年11月15日
〇 きこーばっても どだいあなたに 無理だよね |
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きこーばる は 頑固 強情な様子 どだい とは 到底 ということ。年に似合わない力仕事をやるといって聞きません。「とても無理だよ」と 側は心配なのですけど。
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〇 きこえたやーな 言い分ですねと 念を押し |
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きこえたやーな とは 成程と思われるような ということ。分かるような気がするけど何か偉そうで 「本当に自分の意見なのかしら」と 改めて念を押しているのです。
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〇 きちゃないね 捨てても損に ならんじね |
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きちゃない は 汚い のなまり。お年寄りが古着を大事に持っておられるのですが 古く薄汚れています。見兼ねた身内の人が「あっさり捨てなさい」と 言っているのです。
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〇 きょーびはのー 物がたかーて やれんのー |
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きょーび というのは 昨今 近頃のこと お年寄りの言葉です。お年寄りにとっては近頃の物価の変動 高騰には それこそ ついていけない気がしているのでしょう。
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〇 ぎんだめて みたてて今更 はじまらん |
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ぎんだめる とは こらしめること。非行少年の更生について話し合っています。ただ懲罰一点張りではなくて もっといい方法を と 討議がなされているのです。
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☆2003年11月29日
〇 食うたが賃 はよー坐って 食べなはい |
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食うたが賃 とは 食べるのが賃金 賄い付きの無賃仕事 ということ。ですから 賃は出さないが せめて腹一杯食べて下さい と言って サービスをしているのです。
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〇 くそみそに なまじ言われて すっきりし |
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くそみそに とは 完膚なき程に とでもいえますね。仕事の上で過失をしでかし とことん叱られたのでしたが 非を認めているので なまじ言われてすっきりしたのです。
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〇 くちまえの 程でもないね この出来は |
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くちまえ とは 口の利き方のことをいいます。この場合 いいものが 上手に出来たように 口先では言っておられるが それ程でもないようだ と 批判しているのです。
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〇 くびもつり して出なはいよ この寒さ |
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首もつり とは 襟巻 マフラーのたぐいのこと。こんな言葉を知っている人も少ないでしょう。まさに 言葉通りのものですね。寒いので 気遣っているのです。
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〇 食ゎせ飲ませは あっちの方が ええかもね |
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雇われて働く人には 賃金もですが 食べることの待遇も 条件・要素のひとつです。どっちへ行ったがいいのか いろいろ話し合っているところなのです。
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☆2003年11月23日
〇 けさがたは あんまり冷えも せんじゃった |
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けさがた というのは 今朝 のこと。冷え込む朝が続いたのですが 「けさは あまり 冷えもしなかったね」と 時候の挨拶を交わしているのです。
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〇 げたつきへ 履物をまわいて ごしなはい |
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げたつき というのは 靴脱ぎ石のこと 客間の縁側の外に設けてあります。法事が終わって 和尚さんがお帰りになるので 履物をそこへ持ってくるように頼んだのです。
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〇 けっしてみなはえ お前のとこへは 来られんじ |
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けっしてみなはえ とは おおかた見なさいよ ということ 変わった方言ですね。「あの方の予定では お前の所へは 多分来られんだろうよ」と 言っているのです。
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〇 けったくそ わりーことだも こらえーか |
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けったくそ悪い とは 胸糞が悪い 気分を損ねた ということです。何か余程のことが あったらしいのですが 腹の立つのを 一歩踏み止まって 我慢しているのです。
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〇 げどーばなれ したやーな顔だよ よかったね |
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外道離れ とは 悪事や悪人との関わりが切れることです。しつこく付き纏われていた嫌な人が何処かへ去っていかれた。ほっとしたのが 顔つきに表われているのですね。
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☆2003年12月20日
〇 ごーぎなもん 持ってきたねと びっくりし |
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ごーぎな は 豪勢な 派手な きつい ひどい などに当たります。頼んだものを持ってきてくれたけど 思いのほか豪勢なものなので驚いています。値段もはるでしょうね。
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〇 こくれ子ちゃん ふくれっ面だね なしてかね |
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こくれる は 怒って機嫌が悪いこと。子どもさんの機嫌が悪いので どうしてだろうかと あやしているのです。気にしなくても じきに直りますよ。
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〇 こげなもん つまらんもんだも 取っちょいて |
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こげな は こんな ですね。こんなものは まことにお粗末でつまらないものですがどうぞ取っておいてください という意味の 親しい人への飾らない言い方です。
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〇 ここーそどが ないけん止めて 帰らーや |
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ここーそどがない は 心ここにあらず 落ち着きのないことです。楽しそうな催しなので出かけてみたけど あまりの雑踏に嫌気がさして 人を誘って帰るのですね。
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〇 こそばいい ことかもしれん あなたには |
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こそばいい は くすぐったいこと。ちょっとやましい 弱点を持っている人に対して それを忠告する人の第一声ですね。こそばいい よりも 耳が痛いでしょうね。
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☆2003年12月6日
〇 こーばえを もちーとまいとこ 利かせたら |
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勾配を利かせる とは 要領よく事を処理すること。頼んだ人の仕事ぶりが どうも気にいらんのか 「もちーと要領よくできんかね」と ついつい こぼしてしまったのです。
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〇 こがないも たまにゃーええわの こげな時 |
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小家内とは 小人数の家族のこと。ふだんは 活気もなく 静かです。たまたまあった負担すべき金額の割当が 人数割だったのですね。こんな時だけは成程よろしいです。
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〇 こじゃんとした なりしていつも お出かけよ |
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こじゃんとした とは この場合 きちんとした でしょうか。「あの人は お出かけの時に いつもきちんとしたなりですよ」と 感心しながら せけこんでいるのです。
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〇 こだらつけな ことだったねと 振り返り |
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こだらつけな とは 馬鹿げた ということ。大勢で真剣に取り組んだ結果が 担当者の企画ミスで たいした役にも立たないことだった まことに馬鹿らしいことでした。
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〇 こっさくに やったもんだね 知らん間に |
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こっさくに とは 自分勝手に独り決めしてすること。当然 皆にはかってされるものと思っていたことを 誰かさんが 知らぬ間に 勝手にやってしまわれたのですね。
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☆2003年12月13日
〇 こっとーとだえ 文句を言わん ようになり |
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こっとーとだえ は こっとりとも ですね。「ずいぶんやかまし屋だったのに 近頃はすっかりおとなしくなられた。それはいいけど また何でだろう」 とも思いますね。
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〇 こなまいさん ふさしぶーだね まめなかね |
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こなまいさん とは あの お前さん という 問いかけの言葉です。どうもお年寄りが久しぶりにお会いした方へご挨拶していらっしゃるようです。お互いに 元気にね。
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〇 こばなしを ひそひそきょろきょろ 何だかね |
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こばなし とは ちょっとした話 ということ。あたりを見回しながらのちょっとした ひそひそ話 感じが悪いので 思わず 「何だかね」 とも言いたくなりますよね。
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〇 ごめたにして こっちへまとめて 置いたらね |
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ごめたにする は 何にもいっしょにすること。何かの整理中です。要るものも要らないものもみんなまとめて それをここへ置くようにと 指示しているのです。
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〇 ごんぜつが また始まったと そっぽ向き |
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ごんぜつ は 理屈 または 説教を述べること。とかく そういう人は敬遠されます。「またいつものようなことだろう」と 本気で聞いていただけないのですね。
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作者:児玉敏郎
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