羅生門
(児玉さんの横田弁川柳)
作者より一言
あなたも出雲弁川柳を作ってみませんか
寄稿をお待ちしております
あ行 か行 さ行 た行 な行 は行 ま行 や行 ら行 わ行
☆2002年10月13日
| ○ あーなーの 話はこれこれ この通り |
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あーなー は ありなり ありのままのことです。「あのねえ 実をいうと これこれ この通りだったんだよ」と更に得意げに語っているところです。
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| ○ あいたいで ようやく本気に 取り組める |
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相対は 商売などの時の 双方の相手のこと。二人にとって邪魔だと思う人達が ようやくいないようになったので よし これから と 本腰を入れかけているのです。
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| ○ あげーだよ こげーせにゃーで 日が暮れて |
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あげー こげー そげー は 指示代名詞ですね。当事者 同志は こういうだけで通じる 便利のいい言葉です。仕事の段取りでも相談しているでしょうね。なかなか決まらないようですね。
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| ○ あばかんのー 柿の豊作に 困り顔 |
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あばかん は 多過ぎて処理に困る ということ。老人所帯です。今年も柿がたくさんなりました。喜んでいいのですがとても食べ切れません。子どもに送ってやっても あまり喜びませんしね。
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| ○ あんぴょうで 頼りなさげな 子の返事 |
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あんぴょう は 危なっかしい です。大事なことの相談をと 子どもに手紙を出したのですが その返事を読んで 何だまだわが子は こんな考えしか持たないのか と 嘆いている親なのです。 |
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☆2002年10月19日
| ○ いけずごが 元気にほっつき 歩いちょる |
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いけずご は いたずらっこのこと こうした子は 大体元気ですね。羽目をはずさない程度のいたずらならいいですけど。今日も 何か やりそうですね。
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| ○ いつなんどき 地震がく−やら わからんじ |
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まさかと思っていたのに 地震には こりごりでしたね。地震に備えて 大切なものはいつでも持ち出せるように またその際に あわてないための心構えは 大丈夫ですか。
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| ○ いとしなげな ことでしたねと ご挨拶 |
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いとしなげな は いとしい かわいそうな 気の毒な ということです。故人をしのんで 挨拶を交わしています。亡くなられたのは どんなお方だったのでしょう。
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| ○ いとんどり かあさんはように 忘れたわ |
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いとんどり は あやとりのこと。子どもにせがまれて お母さんが 相手をしているのですが やり方を教えてもらいながらやっている。微笑ましい情景です。
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| ○ いもひきが いくつになっても なおらんね |
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いもひき とは 恥ずかしがって愚図愚図する態度のことをいいます。子どもが いつまでもこんなだと 親はいらいらします。親にも責任があるのですけれど。
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☆2002年10月26日
| ○ うけはんを しぶしぶ押してる お人よし |
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うけはん は 保証印ですね。情にもろいのでほだされて またまた保証印を押すことになってしまった 相も変わらぬお人よし。ひとごとではありませんよ。
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| ○ うしのわを きれいに掃いて お出迎え |
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玄関の土間 内庭のことを うしのわ といいます。お客さんをお迎えするために あらためて 内庭を掃いている。お迎えしようという心構えが伺えますね。
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| ○ うっとうしい 梅雨空いつまで 続くやら |
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うっとうしい は 共通語かもしれません。ぐずついてうっとうしく 気分までめいって
しまう梅雨の頃は 本当にいやですね。でも からっとした夏空はもうすぐです。
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| ○ うつろいの ええ服だどもと 値踏みをし |
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うつろい とは つり合い 調和 のこと。「えらいお前にはよー似合う服だどもなあ
でもちょっと 値がはーやーなのー」と 思案しているところです。
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| ○ うんとだーすんとだー 便りもないが 返事もない |
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うんとだーすんとだー は 何とも答えがない様子。期待して送り出し ちょくちょく便りもくれていたわが子だったのに 最近は様子がわからない おかしいな。
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☆2002年11月2日
| ○ えがーごえ ばっかししたてて 聞きゃーせん |
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えがーごえ は 怒りどなる声 ついつい やりようの悪いのや 言うことを聞かないのに腹を立てて 怒り声を出すのですが 近頃の者は その割りに聞いてくれませんね。
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| ○ えけんわの お前がしゃんと しちょらんけん |
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いけない いけん が えけん となりますね。典型的な説諭の言葉です。「いけませんよ あなたがしっかりしていないからですよ」と言っているのです。
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| ○ えたしいわ まんだ元気の はずだねのー |
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えたしい は いたしい 苦しい 難儀な です。こんな筈ではなかったのに と 年寄りの悲哀です。気分はまだまだできるつもりでした。ところが だったのです。
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| ○ えんばとねー 留守のようだよ お隣りは |
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えんばと は 折悪しく です。お隣りへ誰かが訪ねて来られたのですね。様子を聞かれたので このように答えたのです。折角だったのに お気の毒でした。
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| ○ えんまかた 来たばっかしだね えのーかね |
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えんまかた は 今さっき です。つい 今さっき おいでになったばかりなのに もう お帰りになるのですか。驚きと 多少 うらめしげな意味合いが こもっていますね。
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☆2002年11月10日
| ○ おおぎょーな ものいいだねと 見すかされ |
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おおぎょーな は おおげさな です。おおげさに誇示するわりに 中身のない人がありますが またおおげさだね と その発言は 人に見すかされるのです。
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| ○ おかっつあん ようこそおいでと 案内し |
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おかっつあん といえば 上流夫人の呼び方でした。おかっつあんを招いたら こんなあばら家でもよく来て頂いたものだ と 感激して 案内しているのです。
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| ○ おじないい 窮屈だよね この服は |
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おじないい は 窮屈な 難儀な です。洋品店で 服をあれこれ物色し 似合うかどうか 身につけて検討中なのです。なかなか 気にいったのがないようですね。
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| ○ おらどんちゃー 今までこげーで 来たもんだ |
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自分達 のことを おらどんちゃー といっていました。自分達は 今まで こうしてやってきたもんだ と 過去を肯定し 若者達に気合いを入れている一駒です。
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| ○ おんがらせて まいとこ乗せられ 使われる |
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おんがらせる は 恩に着せること。恩に着せられれば仕方ないし その上に おだてられているなとわかっていても 口車に乗せられて 利用されたのでした。
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作者より一言
ふるさと横田町で使われている方言をまとめ 「暮らしの中の方言」と題して ようやく上梓することが出来て ほっと一息ついているところである。
暮らしとの関わりを ということが頭にあったので 日常会話の中での使われ方を提示しながら説明していった。苦心を要したのはその点であったが 皆さんにおわかりいただけたかどうか また それでよかったのだろうか などなど 反省することはたくさんあったし つきつめていけばいく程深く広いものなのだ これはとても手に合わないぞ とも実感したのだった。
「仁多弁ぐらし」という冊子などでも 川柳によって仁多弁を楽しく面白く紹介してあるが これもひとつの方法だ 私も 川柳という形を通して「暮らしの中の方言」を見つめ直してみよう 方言の使われ方 暮らしとの関わり合いなどを探ってみよう と考えたのである。
私自身の更なるチャレンジとしながら 皆さんに 面白く楽しく味わってもらって共感を得たいものだが と思っているのである。
平成十四年十月十五日
作者:児玉敏郎
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