「無敵のRED 炎のアタック、全てを蹴散らせ!」
「R!」
「R!」
「E!」
「E!」
「D!」
「D!」
「 アール・イー・ディー 」
「 R E D! 」
「一宮ぁ〜〜!」
ガンガンガンッ!!!とペットボトルやメガホンを叩く音が響き、
入場してきた竜くんは『REDアタック』の応援歌に応えて片手を上げた。
二年生の小山くんは自分を呼ぶ声に元気よく両手を振る。
恥ずかしがり屋の一年生が戸惑っていると、竜くんはその後ろに回り
両手首を掴み万歳させ、大きく手を振らせた。
わぁと歓声が上がる。
真っ赤になる一年生に竜くんは笑って、
気合を入れるように背中をバンと叩いた。
一年生、二年生と 400m を走る。
400m は短距離と呼ばれる競技の中では最長になる。
人間が全力疾走できるのは一般的に300m ほどだと言われ、
残り100m が勝負となる。
竜くんはリレーと同じ距離の400m なら まとめて練習が出来て一石二鳥だと思ったらしい。
本気で勝ちを狙う(バイクを狙う)竜くんは、
陸上部の坂井先輩や浜先輩に聞いて対策していて、
基本的に身体を動かすことが好きなので楽しそうだった。
軽く準備体操をしながら観戦していた竜くんが段々と集中力を高めていくの判った。
道場で精神統一しているときと同じ静かな空気が確かに竜くんの周囲に作り出されている。
本能のままに動くことの多い竜くんは、臨戦態勢になると それこそ
獲物を視界に捕らえた肉食獣のようで、鋭い眼が一点だけを見据えていた。
冷たい炎が身体から立ち上る。
スタート地点に入ると応援も他の競技者も関係なくゴールだけが彼の全てだ。
合図と共に身体が飛び出した。
目を奪われる。
しなやかな動き。
繰り出される手足。
風のよう。
………わぁああああぁ!!!
「すごーい!!」
「ダントツ一位じゃん!」
「ちょっと真琴なにボーっとしてんの」
「竜センパーーイ!!」
「カッコイイーーー!!!」
女の子たちの黄色い声も応援も、竜くんがゴールして やっと耳に入ってきた。
しばらく膝に手を当てて息を整えていた竜くんだったが、コロリと仰向けに転がった。
寝た体勢から拳を上げる。
わぁ! と またレッドの陣は沸いた。
私はもうすっかり魅せられてしまって、その後の女子1000m 、男子1000m 、と記憶にない。
竜くんが戻ってきてニカリと笑い、やっと現実に戻ったような気がした。
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