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LOVELY、LOVELY、HAPPY !

 体育祭編






その後、大縄、百足競争とあり、女子リレー、男子リレーで午前中の部は終了した。
この時点で、レッドは二位。

「あれ? 真琴ちゃん、竜 知らねえ?」
眞乃と里佳と昼食を食べていた私は、川原先輩の声に振り返った。
「いいえ?」
「おっかしーなぁ」
川原先輩によると、腹減ったと言ってサッサと お昼を食べてしまった竜くんは、 そのまま ふらりと どこかへ消えてしまったらしい。
「応援の前に話し合いたいことがあったんだけど」
困ったように頭をかく。
「見かけたら俺ンとこに来るよう言っておいて」
じゃ、と川原先輩は行ってしまった。
昼休憩の後は、各カラーの応援合戦になっていて、 その総括である川原先輩は忙しそうにアチコチに指示を出していた。

竜くんの行くところ…。

「ちょっと探してくるね」
思い当たるところがある私は、立ち上がってそう言った。
「「いってらっしゃ〜い」」
二人は同時にそう言うと、手を振った。

「どうなの、あれは、もう付き合ってるの?」
「うーん、微妙!」
「やっぱ竜先輩に訊いてみないと…」
「カケって期限いつだっけ?」
「体育祭が終わるまで…だから、まだじゃない?」
「うー、訊きたい〜〜」
「バレちゃうからダメだって…」

あちこちで そんな会話がされているとは露知らず、私は竜くんの昼寝場所パート3 に向かった。
竜くんと由希先輩は隠れ場所というか秘密の場所をいくつも持っていて、私が 未だに知らない所も沢山ある。
旧制中学の頃から存在する陵湘高校は土地が広く、 クラブ棟(部室がある建物)を抜けると、裏には旧校舎の名残がある。 そこまでは知られているのだが、実は中に入ると広い中庭があることを 知る人は少ない。

梔子(クチナシ)の甘い香りがして、白い花々が見えた。
竜くんは木陰になった場所に忍び込んで、気持ち良さそうに眠っていた。

自然に笑みが零れて、私は竜くんを起こさないように隣に座った。

初めて会った あの日、やっぱり彼は樹の下に居て。

こんなふうに、花の下。

(疲れてるのかな…)
午前中の最後の競技、男子リレーで竜くんはアンカーだった。
バトンを受け取ったときには前に三人もいて、私はハラハラと見守っていた。 しかし竜くんは次々と抜いて、最後には並び、テープを切った。
勝利者インタビューにも応えられないくらい息切れはひどく、 やっと呟いた言葉は、
・・・バイク ・・・
だった。

「ん…」
竜くんが身動ぎをして、思い出す。
川原先輩が呼んでるから、起こさなきゃ…。
「竜くん…?」
そっと肩を揺らす。
「……ん…」
「竜くん」
「うー…?」
ぼんやりと目を覚ました竜くんは眩しそうに手をかざす。
肩に置いていた手を竜くんの手首に移動させた。
「良かった、あのね、かわ…」

「 ……… さ  ん な !!! 」

バシッ!! と手を払われた。

勢いよく身を起こした竜くんの、開かれた眼。


嫌悪の目。







              既視感(デジャ・ヴ)。





「…んだ…、伊集院か」
逆光になった私の顔を確認して、ホッと呟く。
ちらりと嫌そうに赤い爪に目をやり、 寝起きでハッキリしない頭を振り払うよう目を擦る。
「いま何時?」
    
話そうとするものの、……声が出ない。

身体が、震える。





 『 こわいの? 』


竜くんの声。


    ………こわい?


    なにが?


    ………なに が ?




「伊集院?」




          ま た 、 拒絶される こ と が 。










つづく




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