ジメッとした6月には珍しい晴れた日。
俺は近くにある試験のために必死に お勉強をしていた。
試験が終わったら、ウチの学校はいよいよ体育祭一色になる。
退院は試験前ギリギリになりそうだ。
ま、俺の超人的な回復をもってしての話だが。わはは。
「兄ちゃん、よく勉強するねぇ」
隣のベッドのオッサンが感心したように言った。
ずっと個室だったのだが、至れり尽せりの高級個室が どうにもこうにも
居心地が悪いので移してもらったのだ。
男ばかりの六人部屋だが、こっちの方がマシだ。
なんか嫌だったんだよなあ。
責任感じてるんだかなんだか知らねぇけど、伊集院はマメに見舞いに来るし、
そのわりに様子が変だし。
ったく、なんだっつうの。
「ウチの息子にも見習ってほしいよ」
「いや、俺は一応 受験生っすからね〜」
俺はそう応える。
本当は ただヒマなだけなんだけど。
本もテレビも興味ねぇしなー。
あーあ…
俺は柄にもなく お空とかを眺めてしまった。
と、そんなとき。
「 Ryuya Ichimiya !! 」
やたらとデカい声で名前を呼ばれた。
入口に、金髪サングラスの ド迫力外人が立っている。
「 YOU ?! 」
俺の正面の青年に話し掛ける。
← 女に振られて追い掛けて階段から落ちた大学生
「の、のー!」
金髪ヤロウはチッと舌打ちをして また部屋を見渡す。
「 YOU !? 」
今度は隣のオッサン。
…おい、コラ。
「 YOU !? 」
俺をなんだと思って 呼んでんだよ。
俺が ハゲ だとでも聞いたのか!?
それとも 腹が出てる とでも !!?
「一宮く〜ん…、その言い方は酷いよー」
「俺がハゲたらハゲでもツルツルでも好きなように呼べばいいだろう! 許す!」
とりあえず 今は ハゲてねぇ!
じいちゃん は ハゲてた!
俺が名乗りを上げると、金髪ヤロウはべらべらと英語で騒ぎ始めた。
「べらべら、べ〜ら、べら〜」
「べーらべら、べらべら 」
「べら、べーらべ〜ら、べら」
「べ〜ら、べら、べ〜ら〜べ〜」
「べーらべら、べらーべら 」
「べらべーらべ〜ら、べ」
……………プチ。
「 ジャパンの公用語は ジャパニーズ だ!」
日本語しゃべれ!
俺が言うと、金髪ヤロウは大袈裟にどうしようもないって顔をして首を振った。
オ〜、ノー、とか言ったら殴るぞ。
郷に入っては郷に従いやがれ。
そんな俺の考えを読んだのか読まないのか。
そいつは流暢な日本語で、
「マコトの相手を名乗るくせに、英語もロクに話せないワケ?」
と言った。
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