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HAPPY、HAPPY、LOVELY ! − hospital −





マコト…?
ああ、また伊集院 関連の 変態 か…。
俺が はぁーっと溜息をつくと、馬鹿にされたと思ったのかムッとした顔をした。
「マコトはどこだ?」
「あーん? 伊集院? 学校だろ」
態度でかいぞ。
ま、そろそろ来るだろうけどな。
 教えてやる義理はねえ

「ここだと言われたから日本に着いてすぐに来たのに…」
「そりゃ残念だったな」
帰れ。

しかしヤロウは、キザったらしく後ろで結んだ長い金髪を払って、ジロジロと俺の観察を始めた。
「変な顔。」
「俺がどんな顔をしてようがテメーにゃ関係ねぇ」
ハンと鼻で笑ってやると、不満そうに口をひん曲げた。
嫌味にもなんねぇっての。

「お前のせいでマコトは撃たれたんだ」
「…は?」
俺が聞き返したのと同時に、伊集院が病室に入ってきた。

「マコトー!」
「…アリー?」
伊集院は驚いた顔をして抱きつかれたままになっている。
「どうしてここに?」
「君がここだと聞いたからさ!」
頬にキスをする。
伊集院はしばらく呆然としていたが、俺を見て慌てて離れた。
「竜くん、この人は…」
「伊集院…」

一体 コイツに どーゆー説明をしたんだ !!?

オッサンたちと間違えられたんだぞ!?

「え…、それは、好きな人って」

ああ……なんて曖昧な。

というか、オッサンの方が好きな相手に見えたのか?

「伊集院ってオッサン趣味?」
「どうして そうなるんですか!?」
それはアイツに訊け。

「ああ、こんな男のどこがイイんだ? 可愛いマコト…」
うげっ…。
これってよくいう my sweet とかと同じ感覚で言ってんのかな。
とんでもねー人種だ。

「英語もロクに聞き取れなかったんだぞ?」
「竜くん、ホント英語苦手ですね〜」
「嫌いなんだよ」
入試にはリスニングもあるからマズイなーとは思ってるんだけど。
「また数学や化学ばっかり勉強していたんでしょう」
「う…」
「得意な科目ばかりしていても…」
国語や社会もやろうとはしてるんだけど つまんねぇんだよー。
センターだけだからいいや〜って気もしちゃってさ〜…。

「マコト!」
あ、忘れてた。
「紹介してくれる? 」
ニッコリ笑って言う。
日本語を話せと言いつつ国語が苦手な、英語も学校で何年もやりながら聞き取りも出来ない馬鹿な男を

しょーがねぇだろ、嫌いなんだよ。

「しかも ふてぶてしい」
お前に言われたくない。

「言葉なんて心意気だよ、心意気! 伝わればいいんだよ」
さっきのは明らかに試そうっていう早口だったぞ?
正直に話せるか?って訊けば、話せねぇ! とキッパリ答えてやったのに。
伝えようって意志がない。
俺は試されるのが でっ嫌いなんだよ。

「まぁまぁ、竜くんはもうちょっと英語 勉強しましょうね?」
「ういーっす…」
わかってはいるんだけどな〜。 やる気が…  どうすっかなー

「伊集院は英語 話せるんだ?」
英才教育受けてるんだから当たり前か。
「ええ、アメリカに短期留学して…、アリーは そのときのホストファミリーです。 親同士が元々知り合いなのでホームステイをさせて頂いて…」
伊集院は困ったようにアリーを見た。
「そのときからプロポーズしていたのに、マコトは婚約者がいるって断るんだ」
どんな男かと思えばこんな…と肩をすくめる。
はーん、なるほど。
「で、婚約解消の話を聞いて日本に来たわけだ」
「まあね」
「アンタもいいとこの坊ちゃんなんだな?」
「君よりは」
なるほど、なるほど。
段々判ってきたぜ。
だから伊集院は様子がおかしかったわけだ。

「伊集院、コイツ以外にも婚約者候補はたくさん居るんだろ」
「……」
「この間のパーティは御披露目だったんだもんな。 んで? 伊集院と どっかの誰かが 結婚するとヤバイって考えた奴が殺そうとしたわけだ?」
俺は婚約者だとは言ってないし。
    
伊集院が黙る。

肯定、と。

そうだ!
アリーが俺から伊集院を庇うようにして前に出て言った。
「伊集院に生まれたからには 沢山のことが付き纏う。お前はマコトを守る力さえ持ってな…」

「はーい、アリー、そこまでよ〜ん♪」
シズカだ。
「あんま真琴をいじめないでね〜」
伊集院を俺とアリーから見えないように抱きかかえてシズカが言う。
「それに ここは病室よ? 静かにしようね v
ウインク。
「…シズカ……気持ち悪いぞ」
「まぁ! 失礼ね」
「や〜め〜ろ〜」
俺はシズカの気色悪い声に唸った。

「ジジイは知ってたんだな」
「ん?」
「わざわざホテルでパーティをしたくらいだからな」
「……そ〜ね〜。あぶり出そうと思ったらしいよー」
「俺が個室じゃなくなったってことは…」
「問題は解決いたしました♪」
なるほどね。
ちっ。
俺のことも試しやがったな。

「あんくらいで死ぬようなのは弟子にいらないってさ」
「そーだろーよ」
ジジイめ。
「へっへっへ、悔しいんだろ」
「ちくしょー」
怪我ナシでクリアしたかった〜〜!!

「次は ぜってぇ負かす!」

俺は新たな決心をした。

「竜くん!」
「あ?」
伊集院がシズカを押しのけて俺の前に来る。

「命が危なかったんですよ!? そんな…」

あー?

「真琴…、お前 少し出てろ、な?」
「ちょっと! 兄さま!」
シズカが伊集院の背を押して病室の外に出そうとする。
「…そーだな」
「竜くん?」

「そのまま、もう見舞いに来るなよ」

俺が言うと、シズカは あちゃーと額に手を当てた。

「……竜くん……?」

「もう来んな」


一語一句、はっきり言った。



「ついでにソイツと結婚してアメリカにでも行けば?」






つづく












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