「やっぱ嫌になったんだろ? 態度 変だったもんな」
俺が笑って言うと、伊集院は声にならない様子で首を振って否定した。
「いいって、いいって。 別に怪我に責任なんか感じなくって」
「ちが…!」
…ったく仕方ねぇなー。
「守ってくれるヤツんとこ行けよ」
怖くなったんだろ?
俺が死にそうになって。
自分がいかに伊集院家に守られてるかを知って。
俺に『 力 』が ないコトに気がついて。
認めたくねぇかもしれないけどさ、明らかに様子おかしかったぜ?
いくら『 好き 』だとか『 愛 』だとか言ったって、そんなの一時の熱病と同じ。
いいじゃねぇか、早い時期に気づけて。
それこそ結婚してから気づいたら、目も当てらんねーよ?
結婚してたって、子供が居たって。
関係なくドロドロと腐らせていくんだ。
端から端から。
「何度も言ってんじゃん? 俺は別にアンタを守ろうとか思ったワケじゃないって」
「勝手に身体が動いただけ」
「怪我の責任とか、ウザイ」
俺が出す言葉に、伊集院はただ首を振っていた。
目に涙をためて。
我慢して。
「ソイツとか、守ってくれるヤツにしとけよ」
認めろよ。
ソレが必要だって気づいたんだろ?
だから変だったんだろ?
いい加減にしろよ。
もう充分じゃねぇかよ。
お嬢さまのお遊びには充分 付き合ってやっただろ。
「出てけ」
シズカが、溜息をついた。
「アリー、いいから真琴を連れ出せ」
顎でドアをさす。
伊集院は ただ首を振っていたが、アリーに抱えられるようにして出て行った。
シズカが俺を見る。
「…ウチの妹、あんまり泣かせないでくれよ」
「事実を言ったまでだろーが」
いい機会だったんじゃねーの?
もう判ったろ。
やっぱり伊集院も同じだった。
あのヒトたち と同じ。
『 好き 』なんて、そんなもの。
口で なんて言っても、結局。
「お前のキズ、 やっぱり 深かったな」
「あ?」
なに言ってんだ。
銃で撃たれりゃ当たり前だろ。
「そのことじゃない。バーカ」
バカって なんだよ。 アホシズカ。
「お前さ、自分は試されるの嫌だとか言っておきながら、真琴のことは試してたんだな」
「試してねーよ。 初めから言ってたじゃねぇか、」
「近付くなって」
こうなることは判ってたんだ。
……… も し か し た ら 、
もしかしたら、違うかもしれないと思った
伊集院は違うのかもしれないと思った
そばに いる だけで いい と
一 緒 に い た い と
言った
信 じ た か っ た
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