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HAPPY、HAPPY、LOVELY ! − hospital −





「竜くん、酷い……」
いやいや、どう考えても酷いのはソッチだと思うヨ。  病み上がり なんですが ・・・
俺は廊下に座り込んだまま、悔しそうに泣く伊集院を見上げた。

「諦めなきゃって…」
「私の方が、一方的に好きで、」
「そ、そんな、自分勝手で巻き込んじゃいけないっ、て」

しゃっくりを上げながら伊集院が言った。
伊集院家に関わると、多くの問題を抱えることになる。 自分はそこに生まれたのだから いいけれど、自分を好きでもない俺を巻き込んでは いけない、 と、そう思ったらしい。

「わかっていたけど…、片思いだって、充分…でも、だからって、 そんな平気そうに笑わなくても いいじゃない!!

わぁん、と子供のように泣く。

…病院の廊下で。

「伊集院、とりあえず車に」
俺は溜息をついて立ち上がった。
これ以上ここで泣かれたら堪らない。

「やだ!」

伊集院は握り締めた拳で ドンと俺の胸を叩いた。

「…もお やだぁ…」

「竜くんがいないと何もかも駄目で…、」

「でも、諦めなきゃって、…苦しくて…っ、」



  ド ン …


「 好きなの、傍にいたいの、

   それだけなの……!! 」






















    ・・・・・・・・・ ぶひゃ





「………………ぶひゃ?」

伊集院が怪訝そうに顔を上げる。



ゲラゲラゲラゲラ



「竜くん!?」

「ぶぁはははは!」

「 ぎゃはははははは!!!」

だはははははは!!!



「 ひどい!! 笑うなんて!」

バン、と胸を叩く。

「 い、いや、すげえよ、直撃…、」

ゲラゲラゲラゲラ


心臓、直撃。


「…もう知らない! 竜くんなんか嫌い!」
ゲラゲラゲラゲラ。
「大っキライ!!」
「俺は好きだけど」
げらげらげら。
「キ ラ………………………………………………え?」

「いや、なんつーか、」


人間として好き って感じ」



「 …………………………… 」      ← どう反応していいか わからないらしい


げらげらげら。


「…それって、…兄さま、や由希様と同じように…ってことじゃ…」

うん、そう

「……もーやだ!」
「まぁまぁ」
俺は笑いながら逃げる伊集院を頭から抱えた。
「やっぱ ちっこいなー」
ぐしゃぐしゃと髪を混ぜる。
「……」
「ん? なんだ?」
真下にある伊集院の顔を覗き込む。
「二回目…」
「?」
「竜くんから、ふれてきたの…」
「ああ、うん」
真っ赤な顔を うにょん、と引き伸ばしながら応える。
「俺、女 触りたくなったことないもん」
「…え?」
「や、マジ」
「…竜くんって ホ…」
「いや、別に男相手に たたないし」
「なんで そう下品なの!」
うるさいなー。
正直に答えたんだろー。
「え、と、じゃあ…」
「好きな奴じゃないと触るのも気持ち悪い」
伊集院の顔がパァっと明るくなる。
「それじゃ…!」
「あ、でも、ヤりたくは ないから」
「え…」
「人間として好きだってば」
「 ……… 」
     ↑ やはり どう反応していいか わからない


「んじゃー帰るか〜」
俺が歩き出すと、伊集院がシャツを引いた。
「…もう、しないで下さい」
「? 何を?」
「私を、守らないで下さい」
「…は?」
伊集院が俺の胸倉を掴む。
竜くんは私が守るの !!!
はぁ?!
「ずっと竜くんは私が守ると思っていたのに… 守るどころか私のせいで怪我を…」
いや、別に守ってくれなくても……
「おじい様は伊集院と関わる現実を知れ、と」
…なるほど。
ジジイ、 俺だけじゃなくて伊集院も試したのか。
「こんなことで守れるつもりかと笑われました」
「…あー…」
俺は頭が痛くなって眉間に指をやった。
「伊集院…、俺が守れなかったのがショックだったのネ」
そう言うと、伊集院は悔しそうに俺を見上げた。

うーむ。

「俺は、守ってほしいなんて思ってない」

伊集院を見下ろして、言った。

「でも、」

「必要ない」


伊集院は不服そうだ。

「 じゃあ何か? 伊集院は 俺が弱っちい から、 守らなきゃいけない

情けない男だと思ってるわけだな?」

「竜くんは弱くありません!」
「ほら、じゃあ必要ないだろ?」
「ソレとコレとでは話が別です! 」

なぜ。

「竜くんは私が守るの!」

「……ふーん 」
あっそ、そういう態度に出るワケね。
俺は見下ろしてデコがくっつきそうになるまで顔を近づけた。

「 じゃあ 俺も 伊集院 守る
「ッ駄目!!」
「関係ないね」
「私守るの!」
「あっそ。 でも俺も守るもんね」
「駄目! そんなの意味ないじゃない!!」
「知ーらね」
俺がそう言うと、伊集院はムゥと口を閉じて睨みつけてきた。
怖くねえって。
俺はビシッと伊集院にデコピンをして歩き出した。

「………くない……」
伊集院は自分の額に手をやり俯きながら呟いた。
「諦めたくないの…竜くんと一緒に いたい」
俺は軽く溜息をついて、伊集院の手を引いた。
いつまでも病院の廊下で見世物してるのもなぁ。

「居ればいいじゃん」
エレベーターの中で俺は向き合いながら言った。
「でも竜くんが傷付くのは絶対に嫌なの!!」
俺がまるで傷つけた張本人であるかのように伊集院は悔しそうに睨んだ。
「あのさー、嫌とか嫌じゃないとかは本人である俺が決めることなの」
「……」
「伊集院も、自分の気持ちで決めろよ」
「……一緒に居てもいいの…?」
「俺は、嫌だったら嫌だって言うし、逃げる」
知ってんだろ? と言うと はじめの頃を思い浮かべたのか、 伊集院は複雑な顔をした。
「…諦めなくてもいい…?」
「自分で決めろよ」
「それなら、もう絶対 諦めない!!」
「…絶対?」
俺は首を傾げて伊集院を見た。
それを俺の挑発と受け取ったのか、伊集院は強く 「 絶対 」 と繰り返した。
「何があっても?」
「何があっても。」
伊集院の強い眼が見返してくる。
「ふーん…」
俺はボンヤリと伊集院の真剣な顔を眺めた。
「んじゃまぁ頑張って俺を本気にさせて下サイ」
反応しないココロを動かしてやって下さい。  ヨロシク
「頑張ります!」
ニコニコと伊集院は返事をした。
期待してマス。


車に乗り込むと、シズカが不貞腐れて待っていた。
「遅いよー。そういう面白いことは兄ちゃんの前でやってよー」
伊集院は何を言われてもニコニコと笑っている。
「いちおー決着はついたのネ?」
シズカが訊く。
「はい! 竜くんは私が守るということで」
「ハイ !?」
それはナシになっただろ!
「竜くんは私が絶対 守ります」
「いらねーって」
「いらなくても決めました」
ぬぅ…
「そーいうこと言ってると俺もやるぞ」
「駄目。」
「守ってやる」
「いりません」
矛盾してるぞ!!
「俺が」
「私が」
伊集院と言い合っていると、シズカが笑い出した。
「アホ二人〜」
「お前に」
「兄さまに」
言われたくない!
それを聞いて、シズカは益々大きく笑った。








病院 編  了


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